temptation -2-
「進児…一体どうしたんだ?」
応急処置を施したリチャードに問われる。
「多分…デスキュラ…」
「しかし…背中とは…何か油断したのか?」
ビルが静かに問いかける。
「…男に追われてた女の人を助けたんだ。
その女に…ナイフで刺された。」
「「「はぁ?!」」」
マリアン、ビル、リチャードは同時に叫んでしまった。
「進児…お前にしては珍しい、下心でもあったのか?」
リチャードの的確な言葉に言い返せない。
「下心…というか、凄い美人だったよ。」
「特徴は?」
冷静にリチャードは聞く。
「長い黒髪で…瞳は蒼だったな。」
「ふ〜ん、お目にかかってみたかったね〜。」
ビルは少々羨ましげに口にした。
隣でマリアンがビルを小突いていた。
「お前なら殺されてるぞ、ビル。」
「だはは。そうかもな〜」
***
結局、進児は3日間の入院を余儀なくされた。
その結果、ビスマルクチームはセレス星に留まることに。
―翌日
ビルは街の中を一人ぶらつく。
リチャードは調べ物、マリアンは進児に付き添っていた。
「ひとりってつまんねぇ〜」
公園で周りを見渡すと何人かの女の子。
その中に一人でいたのはブルネットの美しい乙女。
「うあ〜!! 美人〜♪」
誰かを待っている風の乙女に声を掛ける。
「ねぇ、彼女。ひとり?」
突然声を掛けられ戸惑っているのがよく解る。
「え?えぇ。」
「誰かと待ち合わせ?」
「いいえ…。」
沈む表情を見せる乙女に微笑みかけるビル。
「じゃ、ヒマ? 俺とちょっとデートしない?」
「…」
乙女は上から下へとビルを見る。
「…。いいわよ。」
「やったね♪ じゃ、行こ。」
二人はその場を離れる。
「俺、ビルって言うんだ。君は?」
「…フェアリー。」
何処か淋しげな笑顔を見せる乙女にときめきを覚えるビル。
「フェアリーって"妖精"ってこと?雰囲気にぴったりだね。」
「そう?」
少々反応が鈍いと思うが、ビルはその美貌に見とれていたのであまり深く考えなかった。
「ね、お茶でも飲もうか?」
「えぇ。」
二人は連れ立って公園内のカフェに入る。
オーダーはアイスティーを二つ。
「フェアリーって美人だね。…恋人いないの?」
ストレートに質問をぶつけるビル。
「…いたけど… 別れたの。」
「そうか…ごめん。やな事聞いて…」
「いいの。あなたに出会えたから…」
静かに微笑む乙女を見て照れるビル。
しばらくして二人はまた公園を歩き出す。
周りに人気のないところを歩く二人。
二人の前に立ちはだかる男が2人…
「おい、フェアリー。見つけたぞ!」
「何なんだ?お前達? 君の知り合い?」
後ろに隠れる乙女に問いかけるビル。
「私をずっと追いかけてる男なの…」
「!? しつこい男は嫌われるよ〜」
思わずビルは前の男たちに声を掛ける。
その時、背中に鈍痛を感じた。
ビルが首を回し見てみると、背中にナイフが突き刺さっていた。
「う…」
倒れるビルを冷ややかに見つめる乙女と男たち。
「行くぞ。」
男たちに手を引かれ乙女は立ち去る。
乙女の瞳の奥では…悲壮感が浮かんでいた。
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(2005/6/22)
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