3.食事の時間
いつも寮のカフェテリアは賑やかだ。
ただでさえ年頃の女の子が集まる場に美味しい食事やお茶が出るともなれば当然。
私もいつもここでは饒舌。
6時半から8時半までが朝食タイム。
ランチは11時半から2時まで。
夜は6時から8時半までと結構時間は長めになっている。
例外は2時から4時までのティー・タイム。
たまにこれのために授業をサボる娘もいるけど、本当に英国式のお茶を飲ませてくれるので
私も楽しみにしていたり。
私・ローザはたいてい誰かと食事する。
最近はやたらマチルダがつるんでくるけど…
今日の朝食はいつもの。
コーンポタージュにフライドポテト、サラダにクロワッサン。
ミルクと紅茶。それにヨーグルトやチーズ。
乳製品は地元の農家から直でくるので本当に美味しい。
私にとっては実家な味だけど☆
いつものテーブルでいつものように朝食をとっていると何故か集まってくる。
「おはよ〜、ローザ。」
学生会書記のファと文化系総部長のべス。
トレイを手に私のいるテーブルに座る。
「ねぇ、今日の午後の定例会議のさ〜」
べスが朝からまじめな話。
この子はいつもそう。
「あぁ、あの議題のでしょ?」
「そうそう。ねぇ、ファはどう思う?」
「あの事でしょう?新しい規則の?」
「そうよ。」
「別に…いいんじゃない?私はそんな規則破りそうもないし。」
「そうよね〜。普通は破らないもんね。」
「あの話って大学部の方から来たんでしょ?」
べスが興味深々で私に聞いてくる。
「そうよ。」
口にポテトを放り込みながら言った。
「ふ〜ん。ってことは噂のイブ=ストーンが原因?」
べスが言ったイブ=ストーンと私・ローザは2ヶ月だけのルームメイト。
大学部へスキップで進学した私のルームメイトだった。
彼女は毎夜、寮を抜け出し男性の元へと通っていた。
私と同室になる前はばれてなかったらしい。
私も最初は気付かなかったというか…
騙されていた。
イブは黒髪のあでやかな美女で男性女性両方にモテる。
たまたま大学部の寮の部屋で空いていたのが彼女の部屋。
ある日、彼女の夜遊びに行く様に気付いた。
彼女を問い詰めた私は…
これ以上はファやべスともいえど言えない。
彼女と私の間にあった出来事は。
とりあえず私の様子がおかしいからと部屋の様子を伺っていたシスターがイブの夜遊びに気付いた。
直後、私とイブは学長室に呼ばれ、彼女の夜間外出がばれた。
私は中等部の寮に戻され、彼女は4人部屋へと移された。
おかげで私はこの広い学院の敷地内の中等部の寮から大学部まで通うことになった。
今はもう4月だし、だいぶ雪が融けてきたけど、雪深いこの地方ではかなりキツイ。
でもそれも仕方がなかった。
「で、そのイブの夜遊びのおかげで夜の点呼が厳しくなるってわけ?」
「そうよ。当番でチェックしたあと寮母のリエナさんが回るっていうことになりそうね。」
「厳しくなるのは仕方がないけど、当番が面倒ね〜。」
呟くファ。
「まあ、当分のことでしょ。」
私は率直に言う。
「なんで?」
べスが首をかしげる。
「多分、規則が厳しくなるのは中等部、高等部、大学部よ。
初等部や幼年部なんて問題外だし。」
「ふんふん。」
「特に高等部が厳しくなって次が大学部。まあ、中等部の私たちにはそんなに厳しくないって事。」
「はぁ〜ん。なるほど。」
「多分、学校側は中等部の私たちはまだまだ子供って思っているフシがあるから。」
「なるほどね〜。」
3人で語った午後の会議の話が落ち着いたとき、一段大きい声がカフェテリアに響く。
「おっはよ〜、みなさ〜ん!」
背も高くて、態度も大きい(?)マチルダだった。
「何々?朝から深刻な顔しちゃって〜☆
折角のいい朝なんだし、明るくいこうよ!」
私たちの話を知ってか知らずかマチルダの底抜けの明るさに私たちは吹きだした。
「朝から元気ね〜、マチルダ。」
「そうよ〜v」
トレイをテーブルに置き、私たちとともに食事する。
さっきまでのムードが吹き飛び、たわいもない話題で盛り上がる。
「ねぇ、ねぇ。今日のギリシャ語のスピーチってマチルダじゃなかった?」
「あ〜、言わないでよ〜。これから頭に叩き込むんだから!」
私たち3人だけじゃなく、周辺のテーブルにいた娘たちも笑っていた。
こんな朝が毎日、私を楽しくさせてくれていた。
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