sweet pain -6-
―その夜
リチャード少年は自宅である城に帰ると父の帰宅を待った。
帰ってきた父に大書斎で告げる。
「父上…僕、大学に行きます。」
「そうか!!決心してくれたか!!」
満面の笑顔になる父を見てはにかむが居を正して彼は切り出す。
「でもいくつかお願いがあります。」
「何だ? 言ってみなさい。」
「まず一つ目は…大学は来年1月から。
二つ目は…来年春にはファリアとの婚約の正式発表を。
三つ目は…年末に父上と母上、それに僕とパーシヴァル一家4人と一緒にスイスにスキーに行く事。
…以上です。」
息子の目を見て言葉を聞いていた父・エドワード。
「…わがままといえばわがままな願いだが…大学に行く事になった…
まだ16のお前が…
望むのなら、聞いてやろう。
しかし二つ目と三つ目は私の独断では無理だ。
パーシヴァル伯と少し相談して見ないことにはな。」
「わかっています。」
「そうか…」
父と息子は黙ってしまう。
しばらくして少年が口を開く。
「父上が…彼女に頼んだのでしょう?
…僕に大学に行くように説得して欲しいと。」
息子の言葉に少し狼狽する。
「!? …そう言ったのか?あの娘は?」
「いいえ。僕の勝手な憶測です。」
「そうか… 解っていたのか…」
「…いくら父上でも彼女を泣かせる事は止めていただきたいのです。
僕の…未来の花嫁なんですから。」
「すまなかったな… これからは気をつけよう。」
「それではよろしくお願いします。」
「あぁ。わかった…」
書斎を出て行く息子の目は少年から一歩大人びて見えた。
ひとりになったエドワードは呟く。
「そこまで…あの娘を愛してるという事か…」
大人になっていく息子を見ていると嬉しくなるが少し淋しくもあった。
すぐに大学側に返事をする。
直後にパーシヴァル伯にお礼の電話を入れた。
「そうか…決心したか、リチャード君。」
「あぁ、君の娘がどう説得してくれたのか解らんが…感謝していたと伝えてくれないか?」
「…伝えておこう。そのウチの娘なんだがな…」
「ん?」
「王立音楽院に行きたいと言い出した。」
「なんだと?」
「リチャード君がいない学校に行きたくないんじゃないかと…思うんだがね。」
「そ…そうか…」
「ウチの娘は相当、君の息子に惚れとるようだな… はは…」
さっきの息子の発言からすると二人がかなりお互いを思いあっていると理解できた。
「アーサー…実はな、リチャードのヤツ、私にお願いと称して頼んできた事がある。」
「ほう?」
「君の娘との正式婚約発表を来年春にする事。
それと年末に君たち一家とスキー旅行に行く事…」
「こりゃまた具体的だな…リチャード君らしい…」
「で、君はどう判断してくれる?」
「ふむ…」
1分ほど黙ったあと、口を開く。
「…まぁ、婚約発表はそろそろしてもいいだろう。
今まで口約束だけだったし、正式な婚約ということを。
娘のデビューも済ませたことだし、来年春…4月ごろくらいに。
それとスキー旅行か… ここ数年行ってなかったからな…
久しぶりに行くか。」
「そう言ってくれると助かるよ。」
「じゃ、まずはスキー旅行だな…
年末年始で6日前後くらいの日程でいいか…?」
「そうだな。」
「ウチのアリステアが29日に誕生日だし、一緒に祝ってやってくれるか?」
「あぁ。もちろんさ。」
「じゃ、あとは…」
父たちの間で勝手にスキー旅行の日程は組まれる。
3日後には手配が済み、両方の家族に旅行のことを知らせる父親たちがいた。
***
部活で忙しく顔をあわせられなかった二人がやっと逢えたのは週末の図書館。
リチャードの馬術部での校内試合の日。
彼の成績はもちろん優勝。
彼女は馬場の外で笑顔を見せていた。
部のミーティングを終え、制服に着替えた彼は待ち合わせの場所へ急ぐ。
特別閲覧室で彼女は待っていた。
ノックすると返事が返ってくる。
「はい…」
出てきた少女の顔は笑顔になる。
黙ったままの二人は部屋に入っていく。
「優勝おめでとう…リチャード。」
「ありがとう。ファリア…」
彼のくちびるに勝利を讃えるキスをする。
一瞬はなれた後、再び重なるくちびる。
逢えなかった日数分を埋めるくらい長いくちづけ。
「ん…ん…」
彼は抱きかかえて彼女を机に座らせた。
もう身長差は19センチ。
「んッ…」
頬をピンクに染めてキスに応えてくれる彼女が可愛いと感じる少年。
くちびるが離れると優しく抱き合う。
「ねぇ…ファリア…父上から聞いたよ。君たち一家と一緒に年末年始にスキーに行くって。
君は聞いた?」
「えぇ…久しぶりに行こうって。」
「僕は楽しみだよ。…家族と一緒だけど、君と旅行に行けるの。」
「そうね…。
でも私、スキーはちょっと怖いかも…」
「あ、そっか…」
数年前に両家でスキーに行ったとき、彼女が崖に滑落した。
一応助けようとしたが自分までおちてしまったときの事を思い出す。
「…嫌なら、ゲレンデに出なくていいよ。」
「え?」
「君は母上たちとスパにでも行っていればいいさ。」
「…リチャードは?」
「スキーしてるよ。」
「いいの?」
「半日もゲレンデにいないだろうし…少しでも君といたいから…」
彼の言葉が嬉しくて顔が火照るのがわかった少女。
「…うん。」
彼はそんな彼女が可愛くて再び抱きしめる。
少女のやわらかな身体とぬくもり。
自分に囁く可憐な声が心地いい。
手で黒髪を撫でるのも好きだった。
何もかも好きでしょうがない―
***
二人はごく親しい友人にしか学校を変わることを教えなかった。
同時に変わる事を知られれば詮索されるとわかっていてのこと…
リチャードはオックスフォードへ。ファリアは王立音楽院へ―――
クリスマスイベントが二人にとって最後の高等部…
学生会主催のクリスマスパーティの最中、二人はヤドリギの下へと行く。
この下ではキスは無礼講。
人前で二人はそっとキスを交わす。
周りにもカップルがいるので目立たない…
*
講堂の真ん中ではダンスタイムが始まる。
ツリーに明かりが灯るだけの薄明かりの中、カップルが何組か踊っていた。
「ファリア… ちょっと…出ないか?」
耳元で囁かれうなずくと、手を引かれ講堂を抜け出す。
「何処行くの?」
「図書館。」
彼はちゃっかりカードキーを持っていた。
図書館へ入ると3階の特別閲覧室へと向かう。
真っ暗ではない非常灯が灯った館内。
閲覧室に入ると彼は壁の照明だけを付けた。
シルエットが壁に浮かぶ。
何もお互い言葉を発しない。
この部屋で約束した… ランスロット家もパーシヴァル家もないただの二人になる場所―
少年は彼女を抱きしめくちびるを重ねる。
「ん…ん…ッ!!」
さっきとは違う熱く激しいキス。
時折、歯がぶつかる。
「ん…はぁ…リチャード…」
くちびるが離れると二人の間に銀の糸が光っていた。
紅潮した頬にトロけた艶っぽいサファイアの瞳。
「…ファリア…」
一気に彼の中に欲望が生まれた。
オークの重厚な机の上に彼女を押し倒す。
「あ…ッ…」
「嫌なら…言ってくれ。」
今まで見たこともないくらい切ない色のエメラルドの瞳に覗き込まれ身も心も震えた。
「嫌じゃない…」
消え入りそうなか細い声で返事する。
少年は自分のネクタイを緩め1つボタンを外し、彼女のネクタイを外す。
ゆっくりとひとつずつシャツのボタンを外してく彼の指先。
顔を真っ赤に染めて背けている様が可愛くてもっと見たくなる。
前のときより2個多く外した。
可愛いブラが見え、白い谷間も緩やかなカーブを描いていた。
「キレイだ…ファリア…」
「ん…」
彼がくちびるを白い雪のような肌に落とす。
舌先でそっと肌を滑るとびくりと震える華奢な身体。
(あぁ…熱い… 彼のくちびるが…吐息が…熱い…
…融けてしまいそう…)
無意識に声が出る。
「あ…ん、ぁ…」
少年は可愛く身を震わせる彼女がもっと見たくて大胆になっていく。
左手がひざを撫でてそっと太ももを撫で上げて、そおっとプリーツスカートの中まで入り込んでいく。
「あ…ッ…」
彼の手の動きに気づき、閉じていた目をそっと開けると初めて見る色っぽい目の彼を視線が合った。
身体から力が抜けていく―
「あ…あぁ…」
するすると上がっていく手が腰にまで来たと思ったら、ヒップの方へと回りこんできた。
(う…そ…ッ…)
「きゃ…」
思いがけないことに小さな悲鳴が上がる。
やわらかく丸いヒップを撫でられるだけで甘い電流がぴりぴりと走る。
「あ…あぁ…」
頭の中が朦朧とする。
何も考えられない―
ふっと撫でていた手が離れ、一瞬安堵したが再び触れられた。
しかももっと敏感なところに…
熱く潤み始めた秘唇に触れられる。
溢れ出した蜜でパンティが張り付いていた。
「きゃ…!! いゃあ…恥ずかしい…ヤダ…リチャード…」
生まれて初めてここまで潤まされ、その上触れられる事に抵抗しようとするが身体に力が入らない。
「…凄いね…女の子って…こんな風になるんだ…」
「あぁ…イヤ…ぁ…」
イヤと口にしていても、身体の奥が熱い疼きを覚えて切ない。
イヤイヤと首をゆするが彼の手は触れたまま。
指先でクレヴァスをなぞられる。
「ひ…ぁッ!!」
今まで以上に激しく乱れる彼女を見て男の性が完全に目覚めていた。
「イ…ゃ…あ…」
彼の指先が優しくゆっくりと撫で上げるとさらにあふれ出しシミは拡がっていく。
「イヤ…私…変…なの… 助けて…リチ…ャード…ッ!!」
目いっぱい彼にしがみつく。
彼のくちびるは触れていた白い胸の谷間を吸いたてた。
「あああんッ!!」
「…ファリ…ア…」
さらに彼は手のひら全体で撫で上げる。
「はぁああんッ!!」
激しい衝撃に身をのたうつかせ、白く弾ける視界の中で必死に彼にしがみつく。
何も解らないまま、熱い波に飲み込まれ意識を失ってしまう―――
少年も自分の身体が燃える様に熱い。
はぁはぁと乱れた呼吸の中、自分の身体の下で失神してしまっていることに気づく。
くったりとした彼女に呼びかける。
「ファリア…」
薄く開いた唇と涙の痕…
「ご、ごめん…」
心配になって慌てて水差しの水を飲ませようとしたが口に上手く入らない。
彼は自分の口に含み、それから彼女の口へと流し込む。
少し零れたがなんとか嚥下した。
「ん…?」
「あ…ファリア…大丈夫?」
「リチャード…私…??」
「ごめん…僕が悪かった。」
いきなり謝る彼に驚く。
「…え?」
「夢中で手加減できなかった…身体、大丈夫?痛いとかない?」
心配する彼の顔を見て、自分の身体に異変があるかと思うとそうでもない。
ただじんわりと満たされている気がする。
「大丈夫よ。心配しないで…
それよりも私…恥ずかしい。」
「…え?!」
「あなたに触れられただけで…あんなになって…恥ずかしい…」
顔を真っ赤にして背ける少女。
まともに彼の顔を見られない。
「…あ。でも…ファリア、君…めちゃくちゃ可愛いよ。
君は…恥ずかしいかもしれないけど…すッごく可愛い。
そりゃ…普段も可愛いけどさ…」
テレながらそう言ってくれる彼に嬉しくなり抱きつく。
「…リチャード、大好きよ。」
「…僕もだよ…」
ぎゅっと抱き返す少年。
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(2005/8/12)
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