smile -4- #2 boy&girl 今度は何処で調べたのか、ロンドンの自宅にプリングルスからのプレゼントが届けられる。 しかも毎日のように… 乳母も使用人もその毎日のプレゼントに不信を感じ、少女に尋ねた。 「プリングルスって言う米国からの留学生に付きまとわれてるの…」 「ま。 それってストーカーじゃありませんか?」 乳母のメレデス夫人は心配を顔に出して言う。 「ね、荷物どうしてるの?」 「配送業者に返送して貰ってます。」 「そう…面倒かけるけど よろしくね。」 乳母もファリア付きのメイドも心配顔。。。。 *** ここ3,4日 プリングルスの姿を見ることもなく プレゼント攻撃もなくなってきたので やっと諦めてくれたと思った。。 音楽部での定期演奏会ではピアノもハープも使わない曲を演奏することになった為、 久々にフルートのレッスンをする。 透明感のある音色は少女に似合う音― 彼にも聴いてもらいたい少女はレッスンに取り組む。 ソロのパートも担当のため 音楽部のレッスン室ではなく、棟外のベンチで… ファリアが音楽部で忙しくなったのを機にリズは同じテニス部のエリック経由で リチャードの耳に入れておこうとする。 彼からプリングルスのことを何とかして欲しくて… リチャードのほうも学内の馬術部選考会が近いこともあって 馬場で馬を走らせていた。 「どう、どどう。」 ずっと走りっぱなしだったから馬を休ませるために 少年は手綱を引き厩舎へと向かう。 「よお、リチャード。」 彼を呼び止める少年。 ふとリチャードの目線の先に現れたのは親友の姿。 「やぁ、エリック。」 「調子はどうだい?リチャード。」 にこやかに話しかけてくる。 わざわざこんなところに来た親友に訝しさを感じた。 「まあまあさ。 …そっちこそテニス部の方はいいのかい? もうすぐそっちも選考会だろう?」 彼の様子に気づいているがあえて態度には出さない。 「人の心配してんなよ。僕なら大丈夫さ。 …そんなことよりちょっと困った噂を耳にしたんで伝えに来たんだ。」 わざわざ学院の敷地の端にある馬場にまで来た理由がそこにあった。 「何だい?」 親友の言葉に耳を貸す気になる。 神妙な面持ちでエリックは話し出す。 「いや…。あのさ、部活に出たら変な噂を聞いて。 僕らと同じクラスのジョージィ=プリングルスのことだよ。」 嫌な予感がリチャードの脳裏をよぎった。 エリックは多少、言いにくそうに言葉を続ける。 「何でも、プリングルスが彼女を図書館で見かけて、モーションかけてるって話。」 名門貴族同士のふたりのその関係を学校関係者は知っている。 彼女は英国の現在の女王陛下の孫娘でもあるから 一般生徒から一目置かれる存在。 「なあ、エリック。その話、いつ頃から流れ出したんだ?」 「僕も詳しい事は知らないけど、1ヶ月ぐらい前かららしい。」 おとといの日曜日に家族ぐるみで彼女に会ったが、 そんな事は一言も聞いていなかった。 「ありがとうエリック。わざわざこんなところまで。」 「いいってことよ。」 少し肩の荷がおりたのかエリックに笑顔が戻った。 逆にリチャードは真顔で馬の手綱をひいて厩舎の中に馬を入れて乗馬服のまま歩き出す。 そんな彼を呼び止めるエリック。 「お…おい。何処に行くんだよ。」 「彼女に話を聞いてくる。」 最近は演奏会の為にフルートを練習していると聞いていた。 芸術棟の外にいるはずだとフルートの音を聞いて捜す。 外のベンチにひとり座って練習する彼女を見つける。 ぴたとフルートの音が止む。 「…リチャード?」 突然の来訪者に彼女は驚いたが、優しい微笑で彼を迎える。 「君に話があって来たんだ。 …いいかな?」 「えぇ。どうぞ。」 彼女は彼にベンチに座るよう勧める。 ベンチには楽譜を挟んだファイルと銀色に輝くフルートが置かれていた。。 「……。何か困っていることがないかな?悩んでいる事はない?」 彼の言葉に息が詰まった。 あの事だと一瞬にして分る少女。 ジョージィ=プリングルスは執拗なほど近づいてきた。 拒否しても何度もやってきていた。 ここ3,4日は姿を見せてないのもあって このことで彼に心配をかけたくなくて黙っていたのだ。 押し黙る彼女を見てリチャードは察した。 「 …分かった。君が何もないというなら構わない。」 本人が言いたがらないのに口を割らせるなんて事は彼には出来なかった。 to -5- ___________________________________________________ (2006/2/23) to -3- to Bismark Novel to Novel Top to home |