smile -3-  #2 boy&girl



リズにああ言われたがなかなか想いを告げるきっかけを掴めなかった。

年が明け、リチャードが13歳になる直前、アメリカから編入してきた生徒が
二人の仲に変化をもたらすことになる。

その名はジョージィ=プリングルス。。。。



   ***

プリングルスは同じクラスのリチャードが学院一の頭脳の持ち主で
公爵家の跡取りとと知ると彼に擦り寄る。

実際はリチャードより1コ年上。
米国の学校を放校処分になったと噂で聞いたリチャードたち。

理由を聞いて驚く。

"クラスメイトの女子に猥褻行為を働いた"



プリングルスは親の多額の寄付金と知り合いの英国貴族に口ぞえしてもらって
この名門学院に入らせてもらったのだ。

一応、男子部女子部に分かれているので両親はここならと思ってのこと。





プリングルスは幼少の頃から、異性への好奇心が強く、
屋敷に勤めるメイドのスカートをめくったり、父のライブラリでポルノなどを見ていた
少々(?)問題児…




   *


リチャードは嫌な予感を感じていた。

自分が相手にしなくてもプリングルスは妙に彼にまとわりつく。


プリングルスの思惑は…
少しでも名門貴族の友人を作っておきたいという下心。
自分の家はアメリカではかなり裕福だが
ここ英国では家柄というものに重きを置く事を知らされていたから。

それゆえに名門公爵家の跡取りであるリチャードと
どうしても親しくしておきたかった。

リチャードは本心が見えていたので相手にしなかったのだ。






ある日。
ファリアと図書館で会う約束をしていた。
いつもと違う様子のリチャードにプリングルスは気づく。

「何かあるのかい?ランスロットくん?」

「ちょっとね。」


リチャードは絶対にプリングルスに彼女を見せたくなかった。
十中八九、ヤツも彼女を好きになると見越してのこと。
その上、彼女の家柄、血筋を知ればなおのこと。。。。


授業が終り、教師との挨拶も済ませた少年達。
リチャードはカバンを手に教室を出るが、それを追いかけるプリングルスがいた。

あまりにしつこいので、学院の中庭の植え込みに身を隠し
ヤツをやり過ごす。

なんとか追跡を逃れた彼は慌てて図書館へと向かう。






図書館のいつもの席に少女は座っていた。
少年は駆け込んでいく。

「ごめん。…遅れて。」

「あ、リチャード。やっと来てくれた♪」


黒髪の少女は幼馴染の少年を見上げる。
彼はすぐに横の席につく。

「どうしたの?」

珍しく肩で呼吸している彼に心配げに問いかける。

「ちょっと…」

「ふーん…ね、じゃ、カフェテリアに行く?」

「いいよ。大丈夫だから。 じゃ、始めようか?」

「えぇ。」


少女は少し苦手な数学を教えてもらう。


「あ… この公式で、こうするのね?」

「そ。もう OK?」

「えぇ。ありがとう。」


二人は笑顔を見せあう。。。







リチャードを探して学院中を探して廻っていたプリングルスが
図書館へやってきた。

見つけたリチャードの横に黒髪の少女がいることに気づく。
本棚の陰から覗き見るとふたりは微笑み合っていた。


   (あいつの…彼女なのか??
    へぇ…美少女じゃねえの…)



プリングルスは自分がまかれた理由を察した。
彼女を自分に会わせたくなかった為だと…

そんなヤツはにやりと微笑んで見つめていた。
とりあえず、その場は去っていく…







   *

翌日
彼が教室にまだ姿を現さないのをいいことに、
プリングルスは隣の席のクラスメイトに尋ねる。

「昨日さ、ランスロットくんを図書館で見かけたんだけど
黒髪の女の子と一緒だったんだ。
あれ…彼の彼女?」

問われたマーティン=シモンズはつい応えてしまう。

「え…? リチャードとって…あぁ…
長い黒髪の美少女のことかい?」

「そうそう…小柄な感じの。」

「彼女は女子部のファリア=パーシヴァル。
この学院一の家柄の令嬢さ。」

「え?! そうなのかい?」

思いがけない言葉に本気で驚いたプリングルス。
シモンズは笑顔でまるで自分のことのように自慢げに話す。

「あぁ。なんたってMissパーシヴァルと言ったら
英国女王の孫娘だしね。
上流貴族パーシヴァル公爵家令嬢だけど…
ま。外孫でも孫は孫だよな。

リチャードの幼馴染でね…
中等部だけで振られた男子は12人だってよ。」

「へ〜え…」

シモンズの話に納得がいく。
彼が少女と自分を引き合わせたくなかったのだと。



そこにリチャードが教室に駆け込んでくる。

「間に合った〜!!」

「珍しいな… ぎりぎりじゃないか。」

親友エリックが肩で呼吸している彼に問いかける。

「あぁ… 馬がさ…ちょっと言うこと聞かなくて…」

珍しく慌ててきた様子の彼を見て、
クラスメイトの口からは笑い声が上る。



リチャードの周りにいる友人達もまた名門貴族の子息ばかり。
みな育ちのよさが顔ににじみ出ている。
それに対し、強欲そうなギラついた目とでっぷりと突き出た腹、
あばたの顔のプリングルス…




プリングルスは心の内で思案する。

   (男のダチも必要だけど… 名門貴族のお嬢様と親しくなりゃいいんじゃないか〜♪)


すぐに担任が来て出欠を取る。

今日の1限目はラテン語。


真面目に聞いてるように見える中、プリングルスは企てを始めていた。


昼休みになると何人かのクラスメイトに聞いて廻るやつがいた。
勿論、リチャードとファリアの事…






翌日、リチャードはフェンシング部で図書館には行かない。
それを知っているプリングルスは音楽部に出向く。

芸術棟の1階のピアノルームでレッスンしている少女を見つけた。

  (へぇ… あん時はあんまりはっきり見えなかったけど…
   結構、俺の好みじゃん♪ 
   アイツの彼女とはねぇ… 
   しかも女王陛下の孫娘だって…
   この子と親しくなれば 親父も喜ぶだろうな…)



彼女をじっと見つめるその口元は微笑んでいた。。。




   ***

次の日
プリングルスは図書館へと向かう少女を見つける。
隣にはリズ。

そんなことに構わず、ヤツは少女に近づく。

「あの…Missパーシヴァル…」

一応、しおらしく声を掛ける。

親友を庇うようにリズは間に立つ。
また男子の告白タイムかと思うと少々うんざり気味。

「何の用なの…!?」

「俺…いや、僕、プリングルスといいます。
Missパーシヴァル… 絶対に退屈はさせないから、付き合ってください!!」

「はぁ!? 何言ってるの、あんた??」

リズがつい叫んでしまっていた。
背後にいるファリアを見ると明らかに困惑した顔。

「…無理だって。」

「え?!」

「悪いけど、君じゃ、この子とは付き合えないわよ。
彼女、困ってるもの。」

「誰もお前に聞いてない!!
Missパーシヴァル… な??
俺、アメリカ一の財閥の息子なんだ。
未来は総帥なんだ。
一生、贅沢させてあげるから!!」

絶叫に近い声で告げられ、少女達は目の前のブ男のセリフに目を丸くする。

「「は??」」



呆れた口調でリズが言葉にする。

「あのね〜…
いくら大金持ちでもファリアはYesって言わないわよ。
大体、この娘にはちゃんと好きな人がいるんだから。」

「…ランスロットのことか?」

「なんだ。知ってて言うとはよっぽど馬鹿ね。
あんたなんかと違って、頭イイし、顔もイイし、公爵家の御曹司だし…
何よりふたりは相思相愛であんたなんか割り込む余地なんか無いんだから!!」

プリングルスはリズにズバっと言われ、拳をわなわなと震わせていた。

「…もういいでしょ?リズ。言ってくれて…ありがと。
行きましょ。」


ふたりの少女は図書館へと向かい出す。

「あ…あの…Missパーシヴァル…」


去り行こうとする少女を呼び止める。

一瞬だけ、黒髪が揺れ振り返った。

「…ごめんなさい。」




小柄な少女はそれだけ告げて、去っていく。




ファリア本人ならともかく、そばにいたリズにポンポン言われたのが
腹立たしかった…





   *

図書館の扉の前で、リズは小柄な親友に問いかける。

「…大丈夫?
あーゆータイプは一度断ったくらいじゃ、引き下がらないかもよ。」

「気をつけるわ。
えっと…プリン、グルスだっけ…??」

「そんな名前だったわね。
それにしても…アメリカの財閥の息子だって言ってたけど
バッカじゃないの? 
公爵家であるパーシヴァル家もランスロット家も大金持ちだって言うのに…」

「もう…リズったら。そんな事無いわよ。」

「そんな事あるわよ。
あんな言葉で誘われて乗る程度の女じゃないっていうのに…」

「リズもでしょ?」

「そりゃ、うちは伯爵家ですからそれなりに…
って!! ファリアんちやリチャードくんちには負けるわよ。
て、いうか…いくら金持ちでもあんな ブ男、論外だわ。」

「…そうね。
私、一番苦手なタイプだわ。」


不安そうな顔をする親友を見て肩を抱く。

「私、極力ファリアのそばにいるからね!!」

「…いつもごめんね、リズ。」

「イイの。私は親友だし。」

「ホント? ありがとう…
ね、図書館じゃなくてカフェテリア行かない?
私、ケーキを奢っちゃう!!」

「いいの?」

「うん。」


美少女ふたりは笑顔で図書館脇のカフェテリアへと…





   *****

2日後…
またプリングルスが近づく。
今回はリズがそばにいない。
手にはラッピングされた箱を持って。


「Missパーシヴァル…ちょっとイイ?」

「え? あ…Mr.プリ…ングルス…」

思わぬ来訪者にたじろぐ少女。
そんな反応に構わず、はにかむ脂ぎった顔。。

「憶えてくれたんだ。嬉しいな。」

笑顔を見せられても、何か釈然としない。

「コレ、この間のお詫びに受け取ってくれないか?」

にっと脂ぎった顔で微笑まれ、何か下心があると感じぞっとした。


「…う、受け取れないわ。それじゃ。」

行こうとする少女の手を引く。

「そんなこと、言わないで!!」

「やッ!! 放して!!」

「コレ…受け取ってくれよ!!」

押し付けられても、迷惑なだけだと感じ、
つき返す。

勢いあまって、やつの手から落ちて床に叩きつけられる。

「要らないわ!!」

「あッ!!」

ヤツが箱に気を取られた時に
少女は何とか腕を振りほどいて、女子部の棟へと向かって逃げ出す。

ここなら無断で入ってこれないから…




この1件から後、ひとりで図書館へ向かうことが怖くなってしまう。。。






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(2006/2/23)
(2007/7/19加筆)

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