#20 THE SUN& THE MOON
6人がしんみりしているとぐらぐらと船が揺れ出した。
「おい!! 塔が揺れておる!! 離れるぞ!!」
突然ホリディが叫ぶ。
確かに船が激しく揺れている。
塔から離脱するとガラガラと崩れていく―
「な!! 何で?
どーすんだよ!? これから!!」
呆気に取られたビルが叫ぶ。
「…とりあえず、ラーン王国に戻ろう。」
「そうね。」
冷静な王子と姫の言葉で次の目的地が決まる。
南へと向かうと明るい空が広がっていた。
*
「ね、ジョーン様。
明日が新月よね?」
「えぇ。」
姉姫は占い師でもあるジョーンに尋ねる。
「…ペリオスが行動を起こすとすれば、明日の夜ね。
なんとかしないと…」
「あぁ。」
「おそらく"聖剣"で封印を解くつもりなんだわ。
北の暗黒の地の祠と南のテカニ島の祠ね。」
「恐らく北から解いていくだろうな。」
「えぇ。」
姉姫と兄王子が真剣な顔で話していると。
ビクリと彼が突然硬直した。
「!? どうしたの!?」
嫌な汗が噴出す。
肌がざらざらして気持ち悪い感じ。
吐き気もする。
途端に何が起こったのか解る。
「ヤツが… 聖剣で封印を…」
見る見るうちに彼の顔色が蒼白になっていく。
ファリアは思わず彼の肩を掴む。
「…そんな!? まだ明るいのよ?」
「北の暗黒の地だ。
日はあまり射さない。
意味がないよ。」
姉姫と彼の会話を聞いてマリアンが呟く。
「あっ…!? じゃ何処かに魔物が!?」
「…カイ、わかる?」
そばにおいておいたテーブルに手を乗せて問いかける姫。
『大地の神殿だろう。』
「どうして?」
『封印を解く剣は風の神殿に…
封印を施す剣は大地の神殿にあるはずだ。
おそらく… 夜になれば襲撃を受けるだろうな。』
「なんですって…!?
進児様!!」
同じ部屋にいた進児を呼ぶ姉姫。
「何です?」
「大地の神殿にあるとされている聖剣をご存知??」
「あ? あぁ 確か…地下に封印されていると。」
「…ファリア。 こいつも奉納試合で…」
「そう… ちょっとごめんなさい。」
いきなり姉姫は進児の耳元からあごにかけてを両手で包み込む。
その光景を見て面白くない妹姫は叫ぶ。
「ちょっと、お姉さま!!」
「マリアン、静かにして…。」
姉姫は真剣な顔で妹を制する。
意識を集中して、進児の意識の深遠へ…
「………あるわ。」
「え?」
「大地の剣の"力"。
彼と同じで…進児様の中に封印されている。
と いうことは、剣は神殿に"力"は進児様の中にある。
少なくとも剣を破壊すればもう2度と封印はできなくなるわ。」
「何!?」
「早く行かないと!!」
「あぁ。」
ホリディにラーン王国の西にある大地の神殿に向かうように告げる…
*
まだ大地の神殿は襲撃を受けていなかった。
「神官さま…司様は?」
「どうしました?? 進児王子?」
「大至急、司様にお取次ぎを!!」
いつもと変わらぬのん気な神官に進児は苛立ちを覚えながらも話す。
「なんですと!?」
「だから俺に剣を!!
解き放たれた魔物を封印しなければならないんです!!」
「…わかった。すぐに奥に参られよ。」
奥に行ってしまった進児以外の3人は大地の神殿の入り口にいた。
ビルとジョーン、ホリディは船に残っている。
「私も戦いたいが…ここは大地の神殿の領域。
力が半減するから…」
兄王子は悔しげに呟く。
「リチャード… 私達を守って下さい。」
「え?」
「シールドを張って守って下さい。
私達が戦うから…」
「ファリア…君が?? 」
「えぇ。」
彼女のサファイアの瞳にはゆるぎない決意が見えた。
「…解った。」
もうすぐ明け方…
空が少し白み始める。
ファリアは…肌で感じていた。
「来るわ。 補助お願いね、マリアン。
太陽が出たら攻守交代よ。」
「了解。」
姉姫は持っている錫杖を大地に突き立てる。
くちびるが術法を唱えると…
ぶぅんと音を立てて錫杖の先端に天の星の力が小さいながらも集まってくる。
魔物がいきなり飛び込んでくるが、
姉姫が光の集まった錫杖を振るうと悲鳴を上げてあとじさる。
「弱い… 本当なら完全に祓えるはずなのに…」
姉姫は気づく。
神殿の入り口にある小さな池。
走り出し、池に錫杖を突き立てた。
リチャードもマリアンも追いかける。
術法を唱えると水が鋭い槍となり、襲い来る魔物<デスキュラ>に向かっていく。
「ぐぎゃぁああ…!!」
瞬く間に灰と化し、消え去っていく。
まだ来る魔物に間髪入れずに、水の槍で退けていく。
「はぁあ…あと少し…
がんばりましょ。」
「え?」
そばにいて守ってくれている彼に声を掛ける。
「マリアンが力を揮えるようになれば…一瞬で片がつくわ。」
「…ホントに?」
「えぇ。」
あと30分ほどで…太陽が昇る。
デスキュラは大地の神殿目指して…襲い掛かってくる。
太陽が顔を覗かせるとマリアンは最大の攻撃魔法を唱え始める。
その間はファリアとリチャードふたりがかりのシールドで神殿とマリアンを守る。
ぶううぅ…ん…
マリアンの金の髪がふわりと舞い上がる。
両手の中には光球が生まれていた。
上空で待機していたホリディの船からビルは叫ぶ。
「おい!!めっちゃたくさん来るぜ!! やばいよ!!」
マリアンの耳に届いていた。
(大地の神殿で剣を受けるまで…進児様を守るわ!)
少女の想いが更なる力を呼んでいた―
上空に飛び交うデスキュラの魔物が一斉に3人に襲い掛かる―
マリアンの後方でファリアも術法を唱えていた。
手の中にあった光球はまるで太陽そのもののように強い光で渦巻く。
少女が両手をかざす。
「! ΛΛΝΗΠΠ!!」
カッとその場一帯が光に包まれた。
光が収まると周辺にいたデスキュラの魔物はすべて消え去っていた。
「す…凄いな…」
リチャードは初めて目にした"力"にただ驚くしかなかった。
「あ…ぁ…」
大地に手を突いた妹姫に姉姫は駆け寄り抱きとめる。
「大丈夫? マリアン…?
でも良く頑張ったわ。 凄かった…」
「姉さま…私、進児様を守れたのよね?」
「えぇ、立派よ。」
「マリアン…凄い力だ…」
傍らで兄王子が優しい目で見つめていた。
「リチャード様…」
少女の手を取り、優しくいたわる。
「…進児の事、よろしく頼むよ。
マリアン姫…」
「はッ…はい…」
空には太陽が全身を現していた。
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(2005/12/12)
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