#21 STRENGTH
「進児が…大地の剣を手に入れたら、北を封印に行かねばな…」
リチャードが真剣な眼差しで彼女に告げる。
「…そうね。
ね、カイ。 再び封印すれば大丈夫??」
ホリディの船のキャビンに置かれたテーブル・カイに手を突いて尋ねる。
『…封印だけでは無理だろう。
以前より強い封印を施すか、滅ぼすか…だ。』
「「!?」」
手を突いて聞いていた3人は驚く。
『少なくとも風の聖剣がヤツの手の内にある以上、
封印してもまた解かれる。』
「…取り返さなければならないな…」
「そういうことね。」
「ねぇ、滅ぼすってどうやって??」
マリアンが素朴な疑問をぶつける。
『マリアン姫。あなたの力だよ。』
「え?私??」
『そう。 封印した上、あなたの太陽熱で灼けばいい。』
「そうなんだ。じゃ、南の封印もそうすればいいんじゃない?」
『確かにそうだが、風の聖剣を取り返すならば、
今はすべきではない。』
カイの言葉にリチャードも納得する。
「あぁ。
ヤツは南に来るはずだ。その時が取り返すチャンスだ。」
「えぇ…そうだわ。」
リチャードとファリア、マリアンは神妙な面持ち。
「お待たせ!!みんな!!」
陽気な笑顔で進児が戻ってきた。
「進児!!」
「やっと手に入れたぜ。
もう…なんてモンを俺の中に入れておくんだよなぁ…」
「お疲れ様…進児様。」
マリアンが笑顔で彼を迎える。
「あぁ。
ところで大変だったみたいだな。
ビルからさっき聞いた。」
「まぁな…
礼はファリアとマリアンに言ってくれ。」
「ありがとう。マリアン、それにファリア様。」
「いいのよ。ね、マリアン。」
「えぇ、お姉さま。」
4人は穏やかに微笑み合っていた。
「ところでこれからどうするんだ?」
「…どうすべきだと思う、カイ?
私は…北の封印に進児とマリアン姫が向かって、
私が南の封印に剣を取り戻しに向かうべきだと考えているが…?」
テーブルに手を突いてアドバイスを求める。
『…それでいいはずだ。』
「そうか。」
彼の決断に驚く姉姫。
「…私を連れて行っては下さらないの?」
「君は戦う必要がない。だから行かなくていいよ。」
「リチャード…」
姉姫は悲しい顔を彼に向ける。
進児もマリアンも兄王子の気持ちも姉姫の思いも解る。
「兄上、連れて行ってあげれば?」
「何を言う!?進児!!」
「そりゃ、巻き込みたくないっていうのは解るけど…
もうここまで来ているんだ。
今更…」
弟王子に言われ、彼女を見つめる。
「ファリア…」
「リチャード…私、足手まといにならないようにする…
だから一緒に…」
彼女と離れがたい。
それにもしかしたら死ぬかもしれない。
無様な死に様を見せたくないが、それでもやはり愛しているからそばにいて欲しい。
「…解った。
じゃ、明るいうちに南の封印の島に向かう。
それから北の暗黒の地の封印に向かってくれ。
頼むぞ、進児、マリアン姫。
それにビルとジョーンさんも、ホリディ殿も…」
「はい…」
「じゃ、まずは南の<テカニ島>だな。」
***
空飛ぶ魔法船は昼には<テカニ島>に着いた。
封印の洞窟に入るため、リチャード王子とファリア姫が残ることに。
直径わずか2キロ足らずの小さな島。
北に向かってぱっくり開いた洞窟の奥に古の魔物が封印されている。
「兄上、ファリア姫様。
北の封印をぶっ壊したら、戻ってきます。」
「あぁ。頼むよ進児。」
「マリアン、しっかり進児様をサポートするのよ。」
「うん。解ってる♪ お姉さまこそ、無理しないで。」
「えぇ。」
兄弟姉妹はしばしの別れを惜しむ。
リチャードとファリアだけを残して船は飛び立つ。
白い砂浜にふたりだけ―
「ファリア。またふたりきり…だな。」
「そうね、ふふ…」
「君も嬉しそうだな。」
「だって…」
「あぁ…」
ふたりはギュッと抱擁する。
しばらく昼の浜辺に腰を下ろす。
彼は彼女の腰を抱き寄せていた。
「ファリア…」
「なぁに?」
「…何があっても…君の命が最優先だ。
無茶をするな。」
「リチャード…」
真摯なエメラルドの瞳が胸を締め付ける。
「僕のせいで君を傷つけ苦しめられた。
すまない…」
「…違うわ。」
「違わないさ。」
「あの男のせいでしょ?!
あなたのせいじゃない。
あなたは何も悪くない!! 」
「…ファリア!!」
思わず抱きついてきた彼女。
「私は…私のほうこそ…」
嗚咽を上げて泣いている彼女を抱きしめる腕に力が入る。
ただ 海は太陽の光で煌めいていた…
***
―一方、北の封印へと向かう進児たち
北の魔窟へ着くと入り口に3匹の竜と一人の男。
「「!??」」
「お前たちは…?!」
「貴様がペリオスだな!!兄上たちを苦しめた…」
進児は男の顔を見た瞬間、怒りが込み上げる。
「…こんなところまで、命を捨てに来るとはな。
殊勝な心がけだ。相手になってやる!!」
「何ッ!?」
3匹の竜とペリオスと戦う羽目になってしまった3人―
進児、マリアン、ビル…
マリアンの魔法も北の暗黒の地では少し弱まってしまっていた。
太陽の光もあまり射さない厚い黒雲。。。
しかし…ビルの放った魔法が雲を蹴散らした。
その時を狙ってマリアンは再び強烈な太陽光を解き放つ。
不利を見て取ったペリオスが逃げ去ってしまうが
3匹の竜が立ち向かってくる。
「くそぉッ!!」
大地の聖剣の力を解き放つ進児―
穏やかな瞳が真っ赤な炎の色に染まっていく―
「うぉおおおッ!!」
大地に突き刺さった剣から放たれた力は…
竜を石像と化していく。
「すっげ〜!!」
ふたりはその凄まじさに驚く。
「進児様!!凄い!!」
ビキビキッ…!!
完全に石化した竜を見上げる3人。
「やっと中には入れるな…」
「あぁ。マリアン、大丈夫かい?」
「えぇ。」
3人が中に入ると闇の中で蠢く<デスキュラ>たち…
「封印する!!アトを頼むぞ!!」
「「OK!!」」
聖剣を地面に着きたてると美しい鋼色の刀身から光が生まれ
魔物を取り巻いていく。
「グゲェー…」
「大地の神の名より、お前たちを封印する!!はぁあッ!!」
黒い半円状になっていく―
全てが閉じられると
洞窟の中に生まれた黒い丘。
「マリアン。この状況のヤツラを太陽熱で灼けるのかい?」
「たぶん。」
以前、母である太陽神殿の司に貰ったペンダントを握り締める。
手の中に 高温すぎて真っ白に渦巻く光が生まれた。
「悪しきモノ達よ!! 消え去るがいいわ!!」
マリアンが黒い丘に向かって解き放つと
一気に魔窟内は真っ白の光に包まれた。
それが収まると…
何もない…ただの暗い洞窟。
「終わった…」
「終わったわ。」
「じゃ、次は南の封印だな。」
「あぁ。」
3人がかつて魔窟と言われたところを出るともう夕方。
「進児様。ビル。
行きましょう。」
「「あぁ。」」
*
南へ向かう途中、マリアンはジョーンにお願いする。
「ね、ジョーンさん。
占って欲しいの。」
「何を? もう進児様との相性は最高で、ハッピーだって解ったでしょう?」
「何言ってるのよ〜。
姉さまとリチャード様のよ。ねッ!!」
「あぁ。あのお二方のね…いいわ。」
「代金は…はい。」
マリアンは自分の財布からお金を出す。
「いいわ。」
「え?」
「だって…私も興味あるのよ。
跡継ぎ同士のふたりの恋がどうなるのか…」
微妙な笑顔で言われ、マリアンもそうなっていた。
「そうなの…。
ね、問題はそこなのよ。」
「じゃ、占うわね。」
ジョーンは神経を集中して、タロットカードをを切る。
「過去は…FOOL。
現在は…THE LOVERS。」
「やった♪」
「そして未来は…!!」
カードをめくろうとしたが止まる。
「どうしたの…? ジョーンさん?」
占い師の顔色が悪くなった。
自分でもめくりたくない予感。
「何なの??ねぇ…?? 見せてよ!!」
マリアンがカードをめくってしまう。
手の中のカードの意味を察してしまう…
「え??そんな… なんで…??」
「おふたりのどちらかが…
もしくはおふたりとも…」
「そんな!!そんなっ!!」
部屋の片隅でくだらない話をしていた進児とビルが
マリアンとジョーンの様子に気付く。
「どうしたんだよ、マリアン。」
「何パニくってるんだ??」
進児に掴みかかるマリアン。
「船を急がせて!!」
「はぁ?!」
「早く行かないと…姉さま死んじゃう!!」
「落ち着け、マリアン!!」
「だって…だって…」
尋常でないマリアンを見て、進児とビルがジョーンに問いかける。
「ジョーン、何だよ、一体…??」
神妙な面持ちでジョーンは告げる。
「…リチャード様とファリア様を占ったの…
そうしたら…未来は…」
そっとカードを差し出すジョーン。
「「!?」」
カードの意味を悟った進児とビル。
「早く行こう!!」
「あぁ!!」
to #22
______________________________________________________________
(2005/12/12)
" STRENGTH">力 タロットカードの大アルカナのひとつ。No.8.
to #20
to Bismark Novel
to Novel top
to Home