#14 THE HANGED MAN
姿が消えた次の瞬間には魔塔のふたりの部屋の宙に浮いていたペリオス―
「あ…ぁ…ん…リチャード…」
「愛してる…ファリア… はぁ…ッ…」
ふたりがベッドの上で合歓にひたっていた…
甘い悲鳴と呻き声まで溶け合う。
男はニッと微笑んで手をかざす。
一瞬で彼は彼女から引き離され、壁に押し付けられていた。
「なッ!!」
突然の出来事に目を白黒させる彼に微笑むペリオス。
「幸せそうで何よりだな… 王子。」
「貴様!! 一体ッ!!」
彼はもがくが手足が壁に拘束されていた。
「その戒めは解けんよ。
まぁとりあえず、見ていろ。」
「何?!」
彼を壁に貼り付けにしたまま、
ベッドでまだ快楽の余韻の中で漂っていた姫にのしかかる。
ふっと彼が黒い影に変わったので、視線を向けた瞬間に悲鳴。
「!? えッ!! きゃぁあッ!!」
「姫も幸せそうだな。くッ…くッ…」
「イヤ!! 来ないで!!」
何も身に纏ってない、しかも彼と愛し合った直後でまだ火照っている身体。
彼以外の男の目に晒され、羞恥と恐怖であとじさる。
「さ、姫に私の子を孕んでもらおうかな?」
「イヤ!! 来ないで!! いやぁッ!!」
「やめろ!! 僕のファリアに触るな!!」
逃げたくても先ほどまでの彼と睦み合っていた身体に
力が入らずにいたのであっさりと組み敷かれる。
「きゃぁああッ!! イヤぁああ!!」
男は何の愛撫もなしに、いきなり犯していく。
彼の白い蜜の名残も手伝って、痛みはなくても恐怖と屈辱…
そして何より彼以外の男のモノを受け入れているおぞましさと嫌悪感。
「やぁああッ!!」
男が腰を使い出すと、グロテスクに聞こえる粘着質な絡み合う音…
「きゃぁあああ…いやぁあ…うぅ…」
感じることなんてない。
ただ突き上げられる度、胃液が込み上げてくる。
「う…く…ん…いやぁ…」
「ファリア!! ファリアぁ!! 貴様!! 許さんぞ!!」
男はただひたすら笑顔で犯していく。
「ははは… 貴様の大切な女は…なかなか良いぞ!!」
「ペリオスッ!!」
戒められたリチャードの身体全体からゆらりと白い炎が立ち上がる。
男は横目でそれを満足げに見ていた。
「く…そうだ。 もっと怒れ!!」
男は笑い声を上げながら、更に激しく揺さぶり姫を陵辱していく。
「イャあ……リ、チャードぉ… 」
「ほら、私の子種をやるぞ!! んんッ!!」
「くうッ!! 貴様ぁッ!!」
男のほとばしりが流れ込むのを姫はこらえるしかなかった。
「ぅ…う…ッ…」
瞳からは涙が溢れ、
くちびるの端はきつく咬んでいた為に血が滲んでいる。
「貴様!! よくもぉッ!!」
激しく揺らぐ白い炎と共にかまいたちが生まれ、ペリオスに向かう。
「おっと…」
すぐに余裕でシールドを張ったペリオスに何も傷つけられない。
「…これでもダメかな…?」
ひとりごちる男はにやりといやらしい微笑を浮かべ、
懐から小瓶を出す。
姫から身を離し、彼を見上げる。
「!? 何をするつもりだ!」
「もっと…王子の怒る顔が見たいのでな、
姫には私のおもちゃになってもらおう。
くッ…くッ…」
彼の目に入ったのは男の手の中にあった瓶の中に。
薄い緑色した液体が入っていた。
それをとろりと姫の白い胸に落とす。
気を失っていたが、ぬらりとした生暖かい感触で目が覚める。
一目でそれの正体が解り、逃れようとする姫。
「ひッ!!」
「おっと…」
男が指をぱちんと鳴らすと
天蓋の4本の柱からしゅるしゅると生き物のような紐が這い出てきて姫の四肢を絡め取る。
「イヤぁ… イヤ…もう、やめて…」
「くッ…くッ…」
男は嬉しそうに笑顔で姫の状況を見詰める。
「ファリア!! ファリアぁ…!! 貴様だけは許さんぞ!!」
白い胸にいたソレは次第にピンク色に変わっていく。
「そいつはな…その辺にいるスライムだが…
私が改良して女の体液を好む。
さぁ、そいつの責めにどれだけ耐えられるかな??」
鋭い男の瞳は歪んだ愉悦に光っていた。
「あ…やぁ…ッ…はぁん…」
姫はそのぬるりとしたモノに胸を嬲られる。
絶妙な動きで 心が拒否しても、身体は熱く昂ぶっていくのが解る。
「いゃ…ああ…ッ…あぁん…」
男は笑顔で戒めた彼を見上げた。
「どうだ…王子?? こんなヤツで身悶える姫は?…ん??」
「私のこの手で叩ききってやるぞ!!」
部屋の空気が熱く揺らぐ―
エメラルドの瞳は…真っ赤なルビーに変わっていく―
直後、彼の右手の中に大振りの剣が出現―
その光景に男は満足げな顔―
「やっと出たか…ふふふ…」
「何だと!?」
「その姿では揮う事も出来ないさ。」
「き、貴様ぁ!ッ!」
手の中の剣は白い炎を上げた。
彼の感情にシンクロしているかのように激しく燃え上がる―
「さぁ、そいつを渡せ。 そうしたらお前を解放してやる。」
「何だと!?」
「私にはそれが必要なのだ。お前は姫を助けたいのだろう?」
「う…くッ…!!」
握っていた剣を放すとたちどころに白い炎は消え、
ガランと音を立てて床に落ちた。
男は剣を念動力で引き寄せる。
「ふむ…間違いない。
ありがとう…リチャード王子。
はははは…!!」
男は笑い声だけを残して、消えた。
直後、彼の戒めも解け、床に降り立つ。
ベッドに駆け寄り、彼女の肌にまとわりつくスライムを剥がし、投げ捨て、
紐を断ち切る。
「ファリア!! ファリア!! しっかりしてくれ!!」
「あぁ…あん…リチャード…ぉ…」
サファイアの瞳は虚ろで焦点が合ってない。
「ペリオスめ!! 次にあったら絶対に殺してくれよう!!
僕のファリアを…」
怒りで険しい顔の彼はぎゅっと姫を抱きしめる。
「リチャード…き、て…」
「ファリア…!?」
秘所にもへばりついていたスライムに気づき、あわてて剥がす。
「あ、ん…」
意識は朦朧としたままの姫は
スライムに与えられた激しすぎる快楽の中に狂い出す寸前。
カタリ… とテーブルの上にカードが一枚出てきた。
"Prince…"
(王子…)
「あ。カイ…何か…ファリアを助ける方法は?」
" Embracing…"
(抱いてやれ…)
「あ、あぁ…」
彼は優しく汚された肌を清めるようにキスしていく。
「あ…は…ぁん…」
「ファリア… 元に戻ってくれ… 僕の…ファリア…」
テーブルのカイは彼の優しいささやきをただ聞いていた―
***
一応、落ち着いたファリアをベッドに横たえ、彼はカイに問いかける。
彼女から離れるのがイヤで、テーブルをベッドサイドに運んできた。
「これでファリアは助かるか…?」
"This…"
(これを…)
テーブルの上に銀製のゴブレット。
中にはミルクのように白い液体。
「これは…?? 何だ?」
テーブルに手を突いた彼に直に告げる。
『一応、毒消しだ。
あの下等生物が姫に沁み込ませた強力な催淫薬を打ち消す事が出来る。』
「何! ペリオスめ…!!」
『もう5分剥がすのが遅れていたら、姫は色に狂っていた。』
「そう…か、絶対に許さん!!」
怒りで普段とは違う形相になる彼にカイは告げる。
『王子よ… 今は落ち着け。
姫を治療するのが先だ。』
「あ、あぁ…」
彼はやっと冷静さを取り戻した。
『まずそのゴブレットの中身を飲ませて… しばらく安静にな。』
「解った…」
彼が横たわる彼女に飲ませようとするがもちろん無理。
抱き起こしてから、彼は自分で半分ほど口に含み、口移しで飲ませる。
こくりとなんとか飲み下した。
「ぁ…」
「ファリア…」
目を開けた彼女に残りも口移しで飲ませた。
「ん…」
「休んでくれ…」
「はい…」
力なく返事した姫はそっと、目を閉じる。
彼は静かな寝息を立て始めた彼女に下着と寝間着を着せた。
「はぁ…」
彼は自分の力のなさに涙と溜息が出でいた―――
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(2005/12/9)
" THE HANGEDMAN">吊るし人 タロットカードの大アルカナのひとつ。No.12.
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