#3 luscious
(注) 「夜の妖精」の続きとして…
地球とデスキュラとの間に起こった戦争はやっと終結を迎えることが出来た。
和平と見せかけ攻撃を仕掛けてきたデスキュラを完膚なきまでに叩きのめしたから…
あのヘルペリデス爆破から1週間後、地球の連邦軍本部で戦争終結宣言。
その日の夕方、再結成されたビスマルクチームは正式に解散。
夜には記念パーティが開催される。
連邦軍の戦死者のための黙祷のあと、にぎやかなパーティが。
もちろん僕たち4人も招待される。
そして、ビルの婚約者ジョーンと僕の許婚者ファリアも。
僕たち3人は黒のタキシード。
そして女性陣… マリアンはピンクのフレアのドレス。
ジョーンはラベンダー色のカクテルドレス。
ファリアは淡いブルーのイブニングドレス。
彼女たちを見ているとそれぞれの美しさが違うのがよくわかる。
可愛らしいマリアン、セクシーなジョーン、清廉なファリア。
それぞれのカラーがよく出ている。
まるで3色の花を見ているようだ。
それぞれに相手をエスコートしてパーティ会場に入ると拍手が起こる。
僕たちビスマルクチームを称えてくれていた。
ジョーンとファリアは僕たちから離れて壁際に置かれていた椅子に向かっていた。
彼女の居場所を確認して僕たち4人は人の輪に入っていく。
皆が感謝と祝福を僕たちにくれていた。
僕は招待されていた英国首相に声をかけられる。
「ランスロット少尉… いや今度は大尉になるか…。
それにしても良くやってくれた!」
50代半ばの首相は満面の笑顔では僕の肩を叩く。
「ありがとうございます。」
「君が立派になって、君の父上のランスロット公爵も祖父のモーティマー卿も大喜びだろう。」
「そうだと嬉しいですね。」
「うむ、きっとそのはずだ。
君は英国の英雄だよ!」
大げさな首相の言葉に僕は驚く。
「…そ、それはどうですか…」
はははと笑って英国首相は上機嫌だった。
ビルと進児も出身国の首相と大統領に声をかけられていた。
「ここまで君が立派になると、将来の花嫁選びが大変だね。」
「もう決まっています。」
「ん?…決まってるって…!?」
驚きを隠せない首相。
「君の相手となると… どのようなお嬢さんだね?」
「あそこにいますって… あれ?」
僕が彼女のいる方に振り返るといるはずのところに姿はなかった。
周りを探すとなんとルヴェール博士とワルツを踊っていた。
何を話しているのか解らないが彼女も博士も笑顔だ。
「首相、実は今ルヴェール博士と踊っている彼女がそうです。」
「ほお! 美しいお嬢さんだが、一体何処のご令嬢かね?」
首相は目を細めて彼女を遠目に見つめる。
「…5年半ほど前の「アテナU号事件」を覚えておいでですか?」
何を言い出すんだという顔をする。
「覚えているが…一体なんだね?」
「その時の行方不明者のひとり… パーシヴァル公爵家令嬢ファリアです。」
みるみる首相の顔色が変わる。
「何だと!?生きていたのか?」
「えぇ、僕が見つけ出しました。」
「間違いなく本人なのかね?」
「はい。」
「そうか… おや?
確か…君の元・婚約者だったはずでは?」
「そうです。でも、"元"ではなく、今もです。」
僕の目の前でルヴェール博士とのワルツが終わった途端、
他の男性数人が彼女にダンスを申し込んでいた。
彼女は笑顔で次の男性と踊る。
亜麻色の髪の優男だった。
それを見ていた僕は自分の中に生まれた感情に戸惑いを覚えた。
相手の男に嫉妬しているとわかるのに少し時間を要した。
その間も首相と話しをしているが上の空だ。
僕は3人目が終わったときに、彼女の異変に気づいた。
突然、首相に「失礼。」とだけ言ってその場を離れる。
彼女と男の間に割ってはいる。
「失礼。彼女とのダンスを遠慮してもらいたいのだが…」
「何です?!藪から棒に!いくら元ビスマルクチームでもそんな無体は…」
「大丈夫よ、リチャード。」
男は彼女の言葉に驚く。
言葉尻から僕と彼女が親しい間柄だということにやっと気付く。
男はふいとその場を離れる。
彼女の顔色に気遣うことなく僕は姫抱っこする。
「きゃっ!」
周りの人たちが何事かと見てる。
「リチャード、恥ずかしいわ。降ろして。」
「ダメだ。」
周りの空気に構わず僕は彼女を抱き上げて控えの間へと向かった。
彼女をソファに降ろし、僕はひざまずく。彼女のハイヒールを脱がせる。
「やっぱり…」
僕はわかっていた。彼女の足が限界に近いことに。
靴擦れで彼女の白い足首の皮膚は剥けかけていた。
僕の顔色を伺うファリア。
「どうして解ったの?」
長いドレスで足首が見えるか見えないかというのに僕は気付いた。
「当たり前だ… 君のことなら。
二人目が終わった時点で痛かったんだろう?
…まったく、無茶するから…」
申し訳なさそうに彼女は謝る。
「ごめんなさい。」
「君が謝る必要はない。悪いのは男たちなんだから。」
そんなやり取りの中、マリアンと進児が様子を見に来た。
「どうしたんだ、リチャード?」
「あぁ、すまないが僕たちは引き上げる。」
「はぁ?」
マリアンも進児もファリアも驚く。
「彼女の足の状態が心配なんでね。
…周りには適当に言って誤魔化しておいてくれ。」
僕の心配をよそにファリアは言う。
「リチャード。私は大丈夫だからあなたは残って。
みんなの英雄なんだから。会場からいなくなるなんてダメよ。」
「…僕は君だけの騎士になりたいんだよ。」
3人はやっとその言葉で僕の気持ちに気付いてくれたようだった。
「わかったよ、リチャード。ファリアさん、お大事に。」
進児とマリアンは控えの間から会場へと戻った。
僕は軽々と彼女を抱き上げて、部屋へと運ぶ。
その間も降ろして欲しいと訴えてくるが僕は絶対に応えない。
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「それにしても…少しうらやましいな…」
控えの間から会場に戻る途中、マリアンが呟く。
「何が?」
「だって、リチャードってすっごくファリアさんにぞっこんなのね〜。」
「そりゃ、5年以上も行方不明でやっと見つけた好きな人だろ?
そうだろうさ。」
「でも… 本当に大切なのね。リチャードにとって。」
「あぁ、そのようだね。」
マリアンは自然と進児の腕に抱きつく。
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彼女の部屋に着き、ベッドへと運ぶ。
そっと彼女を降ろし、囁く。
「まったく、君はいつになっても目が離せないな。」
「ごめんなさい…」
両方のハイヒールを手に彼女は謝る。
僕はその可愛らしさについ微笑んでしまっていた。
「少し感謝しなければ…」
「え…?」
「こうして君と二人でいられるからさ…」
「… そうね。」
頬を染める彼女を愛おしく思う。
どちらからともなく唇をそっと重ねる。
ずっとこうしていたいと僕は願う。
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あとがき(2004/12/19 加筆改稿2016/07/18)
ははは〜。甘〜♪
彼視点で書いても甘めです。
つーかこの3本はスイートなラブラブを目指してみました。
(っていつもか????)
ある意味綺麗に3組になったので描き易いです〜♪
そのうち6人で行くスキーツアーとかも書いてみたいぞ〜!
#1/#2
Bismark Novel