lovin' you -6-



すっかり6人は打ち解け、和やかにティータイムを過ごす。

そんな中、ビルは進児とリチャードに声を掛ける。


「聞きたいことがあるんだけど…ちょっといいか?」

「「あぁ…?」」

ビルは二人を廊下に連れ出す。



「あのさ…元人魚の妃って…フツーの女の人と同じか??」

「「は?」」

ビルの質問の意図が二人ともわからなかった。

「その… ベッドの上で…」

頬を染めてビルが再び問いかける。
そんなビルを見て進児とリチャードは声を上げて笑う。

「ソレ…笑うことか???」

少々、こっぱずかしさを感じてしまうビルがいた。
やっと笑いがおさまったふたり。
リチャードがまだ少し笑いながら言う。

「はは…普通の女性以上だよ。」

ビルがその笑顔を見て問いかける。

「へ?普通の女性以上って??」

「あ? マリアンはどうか知らないが…
少なくともファリアは僕にとって最高の女性だよ。
ハネムーンの1週間の間のほとんどはベッドの上だったしな。」

「「マジかよ!!」」

ビルだけでなく進児までもが叫んでいた。

「これ以上のことは…こんなトコで話す話題じゃないな…」

思いがけないリチャードの発言に二人は驚く。

「…そうか。
ガキの頃からお前のコト知ってるけどよ…
こんなにお前が惚れるんじゃ相当いい女なんだな。」

ビルがちょっと羨ましげに言うとあっけらかんとしたりチャードの返事。

「もちろん♪」

「あーもー勝手にのろけてろ!!」

また笑い声が上がっていた。






   *



一方、部屋の中の乙女達は…



「ね、ファリア…」

「はい?お姉さま?」

紅茶を口にしながら乙女な話題で盛り上がっていた。

「その…人間との男性との生活…大変? 楽しい?」

素朴な疑問をファリアにぶつけてみるジョーン。
その表情には少々不安が浮かんでいた。

「…色々と憶えることとか、身に着けなきゃならないのは大変だけど…
リチャードと一緒にいるの嬉しいし、楽しいし…幸せよ♪
マリアンもそうでしょ?」

可愛い妹に問いかける。

「うん、姉さま。勿論よ♪」

「国のしきたりとか歴史とか…そういうのはビルさんかその国の人に聞いてちょうだい。
そのほかのことなら… 相談には乗れるから…」

優しい光がサファイアの瞳の中に見えるジョーン。

「…ありがとう…ファリア…よろしくね。」

微笑みあう3人の乙女達。


「あ、そうだわ。
ね、ジョーンお姉さま、完全に人間になる方法を聞いてらっしゃる?」

「え? あの… 彼の心からのキスとそのハートを手に入れなければならないの…」

「あ、そうなんだ。ねえ、ファリア姉さま、私達とは違う意味で大変そうね。」

マリアンは奇麗な金の髪を揺らして問いかける。

「…でも、キスだけ? ちょっと羨ましいわ…」

「でも心って…」

マリアンが姉に問う。

「何言ってるの? マリアン… もうビルさんの心はジョーンお姉さまのものだわ。
目を見ればわかるもの…すぐに人間ね♪」

ファリアの言葉に嬉しくなるジョーンは頬を染める。

「…そうなの…
ねぇ、ファリアとマリアンの薬を飲んだ時の条件はなんだったの?」

「…"人間の男性のエキスを1週間以内に受けること" だったのだけど…」

ファリアは少し頬を染めて言った。

「何ソレ!?一体何なの??」

思いがけない条件に声が大きくなっていた。

「最初はね… その…ベッドの上で彼に抱かれることだと思ったけど違ったの。
口で受けなければならなかったの…」

耳まで赤く染めてファリアが答えるときょとんとしたジョーンがいた。

「…聞いていい?」

「えぇ。」

「"ベッドの上で抱かれる"って何??」

マリアンもファリアも思わず声が同時に上がっていた。

「「あ。」」




「知らなくて当然だわね…
あのね…私達人魚の世界で言う"マグリ"のことなんだけど…
人間のって甘美なのよ。」

再びファリアが説明すると目を丸くするジョーン。

「は? あの… 子を成す行為のこと?? それが甘美??」

「そう…初めてのときは…痛くて苦しかったけど… それ以降はね…」

恥ずかしげにファリアが告げると、ジョーンはなんとなく解った気がした。

「そうね…ファリア姉さま。 私…ものすごーく痛かった。
そんなに苦しくはなかったけど…」

「そうなの…? まぁ、そういうこと。」

ファリアは少し羨ましかった。

   (苦しくないってどういうこと??)








   ***


ランチの時にジョーンは進児の母である女王に紹介される。
ファリアとマリアンの従姉が祝いに駆けつけてくれたと説明した。



午後…
6人は乙女3人と王子3人に分かれて過ごす。

それぞれお互いのことを話したり相談していた。

得にジョーンは人間としての生活をファリアとマリアンに教えてもらっていた。

ファリアはジョーンを自分達の部屋に連れて行く。

下着の付け方から、靴のはき方、ドレスの着方…
それぞれの名称や、役割…

入浴の仕方やテーブルマナーに至るまで様々なことをジョーンに教えていた。


「思ったより憶えることって多いのね…」

溜息混じりに言うジョーンに姉妹は微笑んで言う。

「まだまだよ!!」

「ホントに?
…ね、ファリアもマリアンもどうやって憶えたの??」

姉妹は顔を見合わせる。

「…私は… 人間になってすぐに結婚したから…彼に教えてもらったわ。
あとは彼の乳母とか側近の方に…」

ファリアは正直に話すとマリアンの顔を見る。

「私の場合は…1ヶ月ほど時間もあったし…
このお城で先生についてもらってる。
勿論、私が元人魚だって知った上で教えてもらってるの。」

「そうなの…」

マリアンもファリアも一朝一夕で身に着けたのではないと解ると少し安心した。



「ねぇ…さっき言ってた"ベッド"って何?」

「あ、そうね…一応、身体を休める場所。
ここよ。」

ファリアは寝室へとジョーンの手を引く。

「へぇ…」

ふかふかで気持ちいい。

「一応、結婚した夫婦は一緒に休むの。ここで…」

「そうなの?」

「うん…」

「で、"抱かれる"って…??」

頬を染めてファリアは一瞬考える。


「…さっきも言ったけど…"マグリ"のこと…でもこれ以上のことはビルさんに聞いて…」

「え?」

「恥ずかしくて言えないわ…」

「恥ずかしい?? なんともないじゃない…"マグリ"なら。」

「…そのうち解るわ。もう聞かないで!!」

半ば叫ぶように告げてファリアは寝室を出る。
ソレを追いかけてジョーンも出た。









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(2005/9/18・2020/09/14加筆改稿)


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