lovin' you -7-




―夜

ビルはジョーンの部屋を訪ねる。


「ちょっと…話したいんだけど…いいかな?」

「えぇ…」

人間の生活スタイルを姉妹から聞いたので休む用意をしていた。

居間のソファに並んで腰を下ろす二人。


「ジョーン…いろいろごめんな。
俺、何にも知らなくて…気づかなくてさ…」

「いいえ、ビル様…そんなことは。」

「俺さ… 今だから言えるんだけど…初めて会った時、
すっごい奇麗な人魚だった君を見て…心奪われた。
でも…俺は人間で君は人魚。
無理だって最初から諦めていた。

そしたら…リチャードのヤツの妃が元人魚だってゆーじゃないか…

羨ましくてよ…それもあったんだ。
ファリアさんにキスしたの。」

申し訳なさそうにビルは話す。

「ビル様…」

「大体、俺が海の近くの国ばかり廻って旅してたの…
もう一度君に会えないかなって思ってさ…
馬鹿だよな、俺…」

指で鼻下を掻くビルは照れ臭そうに微笑む。

「いいえ…私、実はあなたのこと追いかけてたの。」

「え?」

「セレス国の沖の船… カトラス国の入り江でお見かけしたの。
他の人間もいたから…あなたの前には出られなかった。
怖かったの…」

「ホントに?!」

「えぇ…」

ジッとビルは目の前のジョーンを見つめる。
気づけばお互いの手に触れていた。


「俺の為にあの美しい髪を失って…
人間になってまで来てくれたなんて…男冥利に尽きるよ。」

「ビル様…」

ふたりの青い瞳が熱く見詰め合う。

「あぁ…"様"止めてくれよ。ビルでいい。」

「ビル…」

そっとくちびるを重ねるビル。

ゆっくりとくちびるを割り、舌を絡める。

「んッ…」

「ジョーン… 君を愛していいか??」

「え?」

   (ひょっとして…ファリアが言っていた"ベッドの上"ってコト??)


頬を染めてジョーンはうなずく。

「ジョーン…好きだよ…」

再びくちづけるビルはジョーンの手を引いてソファから立ち上がり、
寝室へと連れて行く。


初めてベッドに横たわるジョーンの傍らにはビル。
ゆっくりと二人の身体は重なっていく―――





ビルの手はそっとジョーンのナイトウェアを奪い取る。

すべらかな白い肌に豊満なふくらみ。
対照的に細い腕と首筋。
確かに肩上まで短くなってしまったがそれでも美しいブロンドの髪。

「ジョーン…奇麗だ…」

「あ…ビル…」


さっきからのキスの攻めですっかり思考はとろけていた。
初めての痺れるような甘い感覚で体中が熱いと感じる。

彼の手の動き一つで声が自然に上がる。

「あぁ…ビル…」

自分の身体の奥から湧き上がる熱い疼きに身悶える。




恥ずかしさと喜びが同時にやってくる感覚にジョーンは頭を振る。


「ジョーン…俺を信じて…」


少しかすれた声にぞくぞくする。

誰にも触れられたことのない… 自分でもまだ触れていない部分…
そこは初めてにもかかわらず、しっとりとしているのか解った。

「あ、あ…ダメ…」

「可愛いよ……」

喘ぐジョーンの耳たぶにくちびるを這わせ、囁く。

「好きだ…ジョーン!!」

「あぁ…ビル…」

熱いものがジョーンを貫く。


   (あぁ…確かに痛いけど… なんだか嬉しい…
    彼のものになれた気がするわ… ビル…   )


無意識にジョーンの両腕はビルの首に廻る。

ふれあい繋がったところすべてから…ビルの熱い思いが伝わってくる気がする。



ジョーンがくちびるを追い求めると重ねてくれた。

「ん…ビル…愛してる…」


そう言いたかったけれど重なるくちびるに飲まれていく。
その時… ジョーンの肌から…下半身から透明なうろこが剥がれ出していた。

彼女自身、ビルのことで頭がいっぱいで気づいてない。
しかし…そのうろこはきらきらと輝いて部屋の空気に溶けて消えてしまった…



ファリアが感じていた通り、既にビルの心はジョーンに囚われていた。
真実の愛のキスの正体は…ふたりの熱い熱を伴ったくちづけのこと―――――






   *


―朝

ビルが目覚めると腕の中で眠るジョーン。


   (あ、俺… ジョーンを抱いたんだよな…
   確かに…今までにないほど…

   元人魚の女性って…いい女ぞろいなのかな…??
   ジョーンだけじゃなくて…
   ファリアさんもマリアンも…?? 

   あいつら男として…こんな極上の幸せ感じてるんだな…

   どおりでリチャードのヤツが夢中なワケだ…   )





「ん…」

ジョーンが腕の中で目覚める。

煌めく青い瞳がビルを見上げた。

「…おはよ。ジョーン。」

「おはよう、ビル。」

ビルは思い切って口に出す。

「ジョーン…あの…俺と結婚してくれ!!」

「え?!」

「ダメか? 俺の国…海ないけど…」

切なそうな瞳でビルは問いかける。

「ううん…そんなの問題ないわ。
あなたがいるなら…」

「そうか…
俺さ、リチャードと進児の気持ち解った。」

「え?」

ジョーンは不思議そうな顔している。

「俺の為に… 人魚をやめて、人間になってまで…
俺のこと…好きになってくれた。
男として嬉しいよ。」

「…ビル。」

ジョーンの手がビルの頬に触れる。

「ジョーン、こんな俺だけど…よろしくな。」

「いいえ… ビル。こちらこそ…」

お互い優しい思いでくちびるを寄せた。







ふたりが起きて身だしなみを整え終わる頃、朝食だと呼ばれる。

食堂に行くと既に進児とマリアン、それにリチャード夫妻の姿。

リチャードたちの顔を見るなり言ってしまうビル。

「あーもーなんだかリチャードとファリアさんにしてやられた気がするよ。」

「は?」

リチャードは思わず声を上げる。

「でも…いいや。 俺、幸せ掴んだから!!」

「おや…そうか…」

ビルの笑顔を見て進児とリチャードは解ってしまった。


「ま、これで女癖が悪いなんていう噂は消えるだろうさ。」

リチャードは笑いをかみ殺しながら言う。

「わーるかったな〜… 女癖悪くてよ〜…」

一同は笑い声に包まれる。



「ジョーンお姉さま…おめでとう。」

「良かったわね…」

姉妹が次々に笑顔を向ける。

「ありがとう… マリアン。そしてファリア…
色々とホントにありがとう。」



女王がいない6人だけの朝食。

賑やかな笑い声が食堂に響く。

「それじゃ…俺達、また親戚か…」

進児の呟きにリチャードが答える。

「そうだな。僕達、義兄弟に親戚がこいつか…」

「は?」

ビルは少々気の抜けた声。

「何とボケてるんだよ、ビル。
俺の妃はマリアン。その姉上がファリアさん。その夫がリチャードだから
俺とリチャードは義理の兄弟。
それに…妃ふたりの従姉がジョーンさんなんだから…
その夫のお前は親戚だってことだろう??」

「あ、そっか…」


幸せに包まれた6人の笑顔は輝いていた…






Fin


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(2005/9/18)


*あとがき*

人魚姫(笑)のビル×ジョーン編。
トラブルだらけ(?)のお話だけど…何とか収まりました☆


極力、前作に比べてH度を押さえ目にして見ました。
それでも…???




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