Love's contagious -3-




ファリアは彼と歩き出して気づく。

「ね… リチャード。
制服のままじゃ目立つわ。」

「あ。」

「ロンドン市内はともかく、そのまま列車じゃ…
ねぇ…服買いましょ。」

彼女の言葉に納得した。

「確かにそうだね。」

「私が選んであげる♪」

「任せるよ。」


リチャードはスーツケースを引いて、ファリアと手をつないだまま歩く。


ウォータールー駅まで移動してから一旦、駅の外へ。
周辺にあったショップで彼に服一式を買う。
ついでにと彼の身の回りのものをいそいそと嬉しげに買い込む少女の姿。


黒のジャケットとパンツに白のシャツというシンプルさが
かえって男前に見える気がした。



夜8時過ぎ、二人の姿がパリ行きのユーロスターの中にあった。


「ね、ホテルは取ってるの?」
「まだ。」
「それじゃ、これからだね。
僕が予約するよ。」
「え?」


彼の手には携帯電話。


電話で手早く予約を入れる。

「リチャード=ウェントワースと申します。よろしく。」

傍らで聞いていた彼女は驚く。
通話を切った彼に問いかける。

「なんで"ウェントワース"?  …偽名??」

「本名だと… 探された時、すぐばれるだろう?
だから。」

「ID提示しなくて大丈夫なの?」
「多分、大丈夫。
老舗のホテルだし、台帳記入だけのはずだから。」
「ホント?」

「あぁ。だから… 年も20歳にして… 君は僕の新妻って事で。
このカッコだし…20歳に見えるだろ?」

「リチャード…あなた…」

感心した瞳で彼を見つめると笑顔が返ってくる。

「一応、コレでも将来は情報部部長職だけどね…
諜報部員としての基礎は知ってるよ。」

「…あなたのほうが一枚上手ね…」

「だろう?」

悪戯っぽい少年の瞳で微笑む顔を少女に向ける。





逃避行――― というにはあまりにも明るいふたり




   *


パリに到着すると時間も時間なのですぐにホテルにチェックインする。
何の疑いもなく受け付けられ部屋に。


一応、新婚夫婦ということでダブルの部屋。



しかし彼は枕と上掛けをソファに持っていく。


「え…?」

「君がベッドを使ってくれ。
僕はソファで寝るから。」

「でも…」

「一応、新婚夫婦だってことにしたけど…
ホントはそうじゃないからね。」



少女は彼のその心遣いが嬉しかったが、少し切なさも感じていた。


「ね、リチャード、お願い。
ベッドで休んで。」

「え?」

「だって…」

「…僕さ、理性が保てないかもしれない。
いや…正直いうと、もう半分やばいんだ。
だから…」

「いいの…」

「いいの…って、意味解ってる?」

「…えぇ…」

少女は彼の手を引いてベッドに向かう。



「…リチャードだから…」

「…ファリア…?」

「あなただから…初めてを…」

「あ…」


頬を、耳を真っ赤に染めて彼女は告げる。


「万が一… 連れ戻されたら、二度と逢えないかもしれない。
だから…お願い…」

「…そんな事させない。 そんな未来、要らない…」

「リチャード…」

潤んだサファイアの瞳が彼を見上げる。

「ファリアだけがいればいいよ。」

「…リチャード!!」



今までずっと紳士的に、プラトニックにと彼は徹してきた。
けれど抱きついてきた恋人の想いの熱さとやわらかなぬくもりが
彼の理性の鎧を溶かしてく。


「…愛してる…」
「リチャード…私も…」



彼は軽々と抱き上げてベッドに下ろす。


「…ファリア…」




彼女の細い指先が彼の頬を撫でる。
白いその手を掴み、そのまま覆いかぶさり抱きしめる。


「ずっと… ずっとホントは君を… 思い切り抱きしめたかったんだ…」

「あぁ…  リチャード…」

少女のワンピースの上から柔らかな胸に触れる。

「はぁあ…ん…」


甘い吐息を耳元で感じた彼の理性は弾け飛ぶ。


「もっと…聞きたい…ファリアの可愛い声…」

服の上から触れられただけで、身悶える身体。


「あっ … あぁ… リチャード…」

みるみる間に頬は紅潮し、潤む瞳で見つめてくる。
切なく胸が締め付けられ、もどかしく感じたリチャード。

「ん…んッ!!」


激しく求め合うくちびる。

彼が身を離すと上着とシャツを脱いで、靴も靴下も放り投げる。
身を起こしていた少女を抱きしめると、背のファスナーをゆっくりと降ろしていく。
その身体は震えていた。

「…怖いなら…しないよ?」

小さく首を横に振る。

「リチャードなら…怖くない。
あなたの…ものにして…」

恥ずかしさを感じながらも心から彼を望んでいる。

その言葉で舞い上がり、一気に幸福感に包まれたリチャード。


「優しくする…頑張るよ…」

こくりと小さくうなずく少女。



彼は優しくゆっくりと彼女を横たえさせていく。


まだ16歳の彼女は華奢で筋肉もほとんどない。
彼が力を入れれば折れそうなほどに。



少し小ぶりな胸だけれど、触れる感触はたまらなく心地いい。
優しく揉みしだき、撫で上げるだけで身をよじり、甘い溜息がくちびるから漏れ出る。
彼のくちびるは耳元に囁く。

「好きだ… あの… 君と目が合った瞬間から…」
「リチャード…私も…」



彼の手が滑り降り、女の子の部分に触れるとしっとりと熱を帯びていた。

「あ…ッッ!! はぁ… ぁ…恥ず…かしい…」


「ファリア…こんなに…」

彼の指先には蜜が絡みつく。

「やッ!! 言わないで…」

彼の身体の下できつく目を閉じ、愛撫で乱されていく。
甘く艶めいた嬌声に彼の男性も熱く昂ぶり、痛いほど張りつめていた。


「あッ…ぁああ…はぁ…ん…」

白いシーツの上で可憐に乱れる姿は今までにないほど彼を興奮させていく。

「あ…ぁ…ファ…リア…」



今まで何度も夢に見た…自分の素肌の腕に、胸に抱く瞬間。
激しく燃える様に自分自身の身体も熱い。

早く彼女を感じたくて、
けれど愛してるファリアに無理させたくないとせめぎあう心が切なさを加速させていた。


彼女をかき乱す指先は蜜壺の中で締め付けられ、蜜でふやけそうなほど―



「あぁっ…はぁ… あ…リチャード… 何か…来る…」

「ファリア…我慢しないで…」

朦朧としている彼女の耳元に囁く。

抽送を激しくした彼の指先が敏感な花芽に触れた瞬間、
びくびくと身体をわななかせ、瞳からは涙が溢れた。
視界は白く弾け飛んでいく―

「きゃ…ぁあぁッ!! はぁ…あぁーッ!!」


初めての絶頂で呆然としていた。

瞳は空を見つめ、頬には涙が溢れ、
はぁはぁと呼吸が乱れたままのくちびる。


   (ファリア… 奇麗だ…)



しばし見とれていた。


「 …ファリア…愛してる…」
「…リチャード…」



力の入らない少女はじっとエメラルドの瞳を見つめる。

そっと彼は己を彼女の花びらに押しあてる。


「ファリア…好きだ… もう…僕の…」

少しずつ腰を落としていく。

「あ…あぁッっ!!」


白い首を仰け反らせ、彼の背に回した指先が食い込んでいた。

「く…ふッ…」

彼は埋め込んでいくだけでもくらくらとめまいを憶える。


熱くてせまい、けれどやわらかな彼女のナカ…


「うぅ… ん…く…」

甘い悩ましい声が噛み締めた少女の唇の間から吐息と一緒に漏れ出る。
必死にこらえている様子を見つめぐい、、と腰を入れてみると
声は更に甘さを増していく。

「はぁ…ん…」

可憐ないじらしい少女を見て彼は情欲を駆り立てられる。
汗で光る肌に黒髪が張り付いていた。


「ファリア…大丈夫?」
「あ… ん… リ、チャード…大丈夫…よ…」

でも目の前の彼女の瞳からぽろぽろと涙が零れる。


「痛い?…苦しいのか?」

優しい翠の瞳が蒼の瞳を覗き込む。

「違う… 嬉しいの…リチャード…。 私…もう…」
「ファリア…」

「リチャードが好き… 愛してる… 忘れ…ないで…」

「…そんな事、言うな… 
僕だけが…こうして君を抱くんだ…」

「あぁ…ッ!!」

「僕の…ファリア…」


素肌で抱き合い、ひとつになってる、その事実が至上の幸福に感じていた。



ゆっくりと激しさを増していく水音…

「リ、リチャード… !! あ…愛してる…!!」

「僕も…愛してるよ…!!」

「はっ…あぁ…アあっ!!」



彼の熱い想いと灼熱のほとばしりを受けて少女は再び真っ白に弾けた視界の中、叫んでいた―


   もう…リチャードしか…いらない…



彼もまた、めくるめく快楽の中、愛しい少女の中で爆ぜていた―










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(2005/10/12)

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