Kismet  -12-





ふたりが大広間に行くとラーン国軍兵士が約270名ほどと
エリエス国国王一家4人と貴族達の姿。

宴は大盛況。


みな食事と酒と会話で盛り上がる。。。

ファリア王女は皇太子の傍らで微笑んでいた。


面白くないのは振られたアリシア王女…



ファリア王女は宴会の中、人々の熱気に当てられ
頬が火照ると感じて彼に一言言って、中庭に出た。


空を見上げるとすっかり満天の星…


彼女が溜息をついていると…
こっぴどく振られた王女・アリシアが姿を見せる。


「あの…少しいい?」

「はい。」


アリシア王女はしおらしく彼女に声を掛け、隣に腰を下ろした。


父に教えられた…皇太子には既に婚約者がいるということを。
しかも アイリス国王女・ファリア姫。

噂で美姫と聞いていたが、
自分より小さな田舎の国の王女に激しい敵対心と嫉妬の炎を燃やしていた。

そんなことなど知らないファリア王女は声を掛ける。

「今宵は貴女のお父上にご招待いただきありがとうございます。
とても素敵な王宮ですわね。」

「そ。」


そっけないアリシア王女の返答だったが 
彼女はにっこりと微笑む。




アリシア王女は少々露出度の高いツーピースタイプのドレスを着ていた。
場所を間違えれば、踊り子に見えそうなほど…


「あなたがリチャード皇太子様の婚約者ですってね?」

「え?  …えぇ。」

ファリア王女は自分の想いを自覚し、
両想いだというのもあって頬を染めていた。

そんな様子を見て余計、むかっときたアリシア王女は告げる。

「辞退なさいな。」

「えッ!?」

「私が変わってあげるわ。」

「何をおっしゃてるの?」

アリシア王女の言葉に驚きながらも、問いかける。

少々、見下したようにアリシア王女が言葉を出してきた。

「あなた…アイリスなんて、弱小国の王女なんでしょ?
私のほうがあなたより ふさわしいはずよ。」

「!?」

「あの殿下には私の方がいいって言う事よ。」

「そんな…」

強気なアリシア王女の気迫に気圧される。

「今すぐ、城から出て行って。
あの方から去ればいいわ。
あなたなんかの何処がいいんだか…
胸は薄くて、色気もないようだし…
私のほうが全然いいわよ。」


「…わ、私を侮辱したのいのなら構わない。
けど…アイリス国を祖国を…
そしてリチャード様を侮辱する事は…許さないわ!!」

「何ですって?!」

目の前のおとなしそうな少女のファリア王女が食って掛かってくるとは
思わなかったアリシア王女は面食らう。

その前で少女ははっきりと告げる。


「私は彼を愛しています。
リチャード様も愛しているとおっしゃってくださっています。
私なんかを妃にと誓ってくださったの。
あなたに言われる筋合いはないわ。」

彼女は自分の指に嵌っている指輪を手ごと握り締める。
それは彼の誓いの印…


ふたりはお互い視線をぶつけていた。



「よく言った…ファリア。」

「「えッ!?」」

ふたりの王女が振り向くとそこには微笑を浮かべる彼…リチャード皇太子。


彼女が駆け寄ると、抱きとめる優しい彼の手。


「アリシア王女…
誰も私達を引き裂く事は出来ん。
よく解っただろう?」


「く…」


悔しそうにアリシア王女はその場を走り去る。。。


腕の中の彼女は彼を見上げた。
彼の手は優しく頬を撫でる。

「リチャード様、いつからここに?」

「ん? あの王女がそなたを弱小国の王女だと言った頃から…」

「じゃ、ほとんど最初から?」

「そのようだな。
嬉しいよ… ファリア。」

「え?」

「私とアイリス国を侮辱した事に立腹してくれただろう?」

「リチャード様…」

彼の手に力が入ることを感じた。。




「さ、そろそろ宴も終わる。
先に部屋に戻っていてくれ。」

「…はい。」




彼は皇太子としての挨拶を済ませると、彼女の待つ部屋に…






   ***


「リチャード様…」


彼が部屋に入ると王女は着替えてベッドで待っていた。

翡翠の瞳を細めて彼は告げる。


「すまない…ファリア。
今夜のところは そなたを抱こうとしていたが…
延期しよう。」

「え?」

「そなたと私を侮辱した者の城の一室で
抱くのは…ちと…な?」


彼の言いたい事が解って、微笑を浮かべる。


「えぇ…解りました。」


「そうして私の心の内を理解してくれる そなたが…いる。
嬉しいな…」

「リチャード様…」

王女は潤む瞳で彼を見つめる。
今日は抱かないと決めたのに少し揺らぐ皇太子…




「さ、休もう。
明日から4日ほどかけてラーンへ戻ることになる。」

「はい…」



ふたりは笑顔で抱き合いながら眠る…




    *


翌朝、エリエス国国王に挨拶を済ませ、一行はラーン王国へと向かう。。。






明らかに以前と違う二人に廻りは驚く。


王女がすっかり皇太子の腕の中で身を委ね、微笑を浮かべていたから。

彼の様子も少し変わっていた。
彼女を優しい瞳で見つめ、時折、髪や頬を撫でている。
くすくすと可愛い笑い声が近くで馬を走らせている兵の耳に届いていた。


最初の野営の夕食の時も首脳陣の見守る中、
ふたりは甘い雰囲気を出していた。

それは周りが照れ臭さを感じる位に…




ドメス将軍、進児大佐、ビル大佐、そしてチャーリー軍医。。
経緯をよく知るものは彼の想いが通じたのだと理解した。


それまで見たことない優しい瞳の皇太子。

王女の方もすっかり彼に馴染み
その腕の中にてらいもなくいる。



はたから見ると紛れもなく恋人同士…



野営の天幕の中では
ベッドでただ王女を抱きしめて眠る…





道中、彼の腕の中で馬上だと言うのに眠るほど安心感を覚えてしまう王女…
そしてそんな彼女を愛おしげに見つめる皇太子がいた。



   *



―出発3日目の午後…

「もうすぐわが国だ。
国境が目の前だな。」

「景色が違ってきましたものね…」


街道になり、ぽつぽつと家が立っている。

「このあたりは牧畜をしている農家が主な地域だ。
宿の料理もけっこう美味だぞ。」

「まぁ…それじゃ楽しみですわね。」

「あぁ。よく視察と言って 食事に来たものだ。
今夜はこの村に泊まる事になる。」

「それでは、夕食が楽しみですわね。」

「あぁ。勿論だ。」

彼はまるで少年のような笑顔。。。










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(2006/1/27)

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