Kismet  -7-





水浴びで身も心もすっきりした王女は上機嫌。

夕食の席でも、まわりはそのことに気づいている。

皇太子も嬉しそうに微笑んでいた。

   (この様子なら… もう少しすれば、私の想いに気づいてくれるだろうか??)




食事を終えると天幕で就寝する王女。



いつも天幕の周辺には3人の兵士とキリーが警備に。

それと王女のベッドの横にチルカが就く。








深夜… 黒装束の男8人が音もなく王女の天幕へ近づいてきた。

天幕周辺には4人の兵士が立っている。

キリーは中へ入り、少し休ませて貰っていた。


黒装束の男達は4人を声も立てさせずに殺していく。


天幕に入ると仮眠を取っていたキリーが最初に異変に気づくが
すでに時遅く、みぞおちに拳が入っていた。


ベッドに横たわる王女の横にチルカがいたが
彼女も軽く拳を入れられ、昏倒する。


すやすやと安心して休んでいたファリア王女は薬をかがされ
意識を失う。


ふたりの女兵士と王女を拉致していく男達……







30分ほどして…
リチャード皇太子はいつものように彼女の寝顔を見ようと天幕に向かう。
そこで兵士達の遺体を発見する。

「!?」


慌てて天幕に入ると王女はおろか、
キリー、チルカの姿もない。

「!? 姫?! 何処に行った?? いや…この気配… 連れさらわれたのか??」


彼は慌てて進児たちを叩き起こす。




調査の結果、やはり連れさらわれたと判明。



「早く…夜目の利くものを!!」


すぐに足跡が発見され、追跡をかける。



勿論、皇太子自身も隊に加わっていた。
18名の追跡隊が足跡を追いかける…


その中に、進児・ビル両大佐もいた。








   ***


連れさらわれた3人はある洞窟の奥にある隠れ家に連れ込まれていた。


「お頭… これが"王女"と言われていた娘です。」

「ほう…これは…確かに美しい娘だな。」


華奢なまだ少女のような彼女を冷徹な瞳で見つめる美貌の男―



盗賊の頭、ペリオスが舐めるように見つめる。


「それでは早速頂こうか。
あとのふたりは お前たちの好きにせよ。」

「はい! ありがとうございやす!!」


ペリオスは意識を失ったままの王女を抱き上げて、
奥の自分の部屋へと連れて行く。。。







ぎらついた好色の目で男達はキリーとチルカの服に手を掛け、奪っていく…


8人の男達はそれぞれ4人ずつになり、ふたりを陵辱していく。


「きゃぁああ!!」

「いやぁあ〜!!」

26歳のキリーと20歳のチルカを嬲るものたちは
ただ夢中で久々の若い女の身体に悦んでいた。。






奥の部屋でペリオスはまだ薬のせいで意識を失ったままの王女を視姦している…


「この娘、どこかの国の王女なのだな… くっくっ…楽しみだ。。。」


男はワインを口に運びながら、うら若き乙女の肌を撫でさする。


しばらくして、ぱちと彼女は目を覚ます。

目の前には見覚えのない男…
状況が理解できなかった。


「あなたは…誰? ここは何処なの?」

「私は…ペリオス。
さぁ、目覚めたばかりで悪いが…
私のおもちゃになってもらおうか?」

「えっ!?」


男は王女の両腕を掴んで、押し倒す。


「きゃぁあっ!!」

「これはこれは…間近で見るとなお美しいな…」


顔を近づけ、にやりと微笑む男にぞっとする。
必死に抵抗した王女のヒザが男の腹に当たった。

痛みのあまり、怒った男は手を上げる。

パンッ!!

男に平手打ちされ、目の中に星が飛んだ。
生まれて初めて頬をぶたれ、呆然とした彼女に強引にくちづける。

「ん… ぁ …いゃあ…」


全身が粟立ち、戦慄が身体を走る。


「いやぁ…ッ!! リチャードさまぁ!!」

「ふ…その男がお前の好きな男の名か…。」


男の言葉で自分の中に芽生えていた感情の名に気づく。


「あ… 私…」

「ふん。今更、暴れても無駄さ…」


鈍く光る刃を見せ、
男は彼女のドレスの胸元を切り裂く。


「!! きゃぁあッ!! 助けて!殿下ッ!!」




その頃…

皇太子達一行は洞窟に辿り着いていた。



奥に明かりが灯っているので 静かに忍び寄る。


木の扉を通り、更に奥へと進むと若い女のくぐもった悲鳴。

その声は明らかにキリーとチルカ。


彼らは中で何が起こっているのか、悟る。
彼女たちの身に何が起こっているのか…



皇太子は兵士達に告げる。

「皆よく聞け。
この中にいる男達はすべて斬り捨てろ!!いいな!!」


全員こくりとうなづく。

中へ突入すると壮絶な光景が繰り広げられていた。


キリーとチルカが無骨な男達に陵辱されている姿。


「「「「「!!」」」」


みな剣を抜き、丸腰の男たちを斬っていく。

あたりは血の海と化していった。


気丈にも意識を保っていたのはキリーだけ。



「姫は何処にいるか解るか?」

「おそらく…あの奥の扉の向こうに…
頭に連れて行かれたはずです。」



彼は慌てて、扉を開けて駆け込んでいく。


中では半裸の王女にのしかかる男の姿。。。。

「いやぁああッ!!助けて!殿下ぁ!!」

「!?」


彼は王女の悲鳴を聞いて、驚く。
瞬時に男の首元に剣を突きつけていた。


「私の姫を返して貰おう!!」

「何ッ!?」


突然の出来事に男は驚く。
首筋に当てられた剣先で、血が滲んでいた。

手にしていた小刀で、彼に立ち向かうが無駄だと解ると
扉から外へ逃げだす。


しかし…兵たちにあっという間に斬られ、絶命する…





「姫!!」

彼が王女を見ると、悲惨な姿。
髪はぐしゃぐしゃ、頬は真っ赤な手形に腫れ上がり、
ドレスは切り裂かれ、白い胸元には男がつけたらしきキスマークの痕…


彼は思わず抱きしめる。


「可哀相に…痛かっただろう?怖かっただろう…」

「あぁ… 殿下…」

「さ、もう大丈夫だ。 天幕に戻ろう。」

「はい…」

「おっと、その前に…」

彼は襟元のスカーフを外した。

「何なさるの?」

「そなたに見てほしくないものがある。
外に出たらすぐに外すよ。」


彼女の目元をスカーフで覆い、後ろでくくる。

「さ、行こう。」


彼女を抱き上げ歩き出す。




扉の向こうの光景は…
血の海と男達の裸の死体が転がっていた。

彼女の目には絶対に触れさせたくなかった。



「ビル、進児。
…ここの探索と後始末を頼む。」

「「はッ!!」」 


キリーとチルカはすでに救出され、天幕へと運ばれていた…






歩いて天幕に戻る途中、王女は必死に首に抱きついてきた。

か弱い乙女だと改めて感じる。

悲惨な姿だったが、処女を奪われてないのが唯一の救いだと彼は思う。

抱き上げていた腕に力が入る。。。


これからは自分の力で守ろうと改めて決意していた。




白み始めていた空に太陽が上り始める。

それはこれからの2人を暗示しているかのように………












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(2006/1/23+24)

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