Gone With The Wind -4-






エルミナ村の生存者を避難させることが出来た3人は一旦、
ビスマルクマシンに戻り、今後のことを話し合っていた。


「とりあえず、村の中のパトロールと避難所のガードだな…」

進児が提案する。

「そうだな。」

ビルもそれに賛同し、リチャードもうなずく。

「それじゃ、僕が避難所のガードにあたろう。」

「あ、リチャード、ずるいぜ〜。」

ビルが少々あせった様子で叫ぶ。

「ん?  何でだ?」

進児がビルを訝しく思う。

「お前も会っただろう?あのかわいこちゃんだよ。」

ビルのいつものビョーキが始まったと二人は思った。

「あの黒髪の女の子のことか?」

「そうだぜ。  街でもあんなに綺麗な子、見たことないよ。
っていうか なんてーかそう! スレてない初々しさがたまらないぜ〜。」

ため息をつくリチャード。

「ビル、僕はそういうつもりはない。」

「言い訳するなよ。守ってやりたくなるのは解るけどさ。」

突っ掛かるビルを無視して進児が言う。

「すねるなよビル。   …いいじゃないか、俺とお前でパトロールしようぜ。
マリアンはレーダーの監視を頼む。」

「了解、進児君。」




***************



リチャードは教会の壊れた扉から外の様子を伺う。

怪しい影は見えない。

もう深夜の12時をすぎていた。

「ふぅ。」

空を見上げると満天の星が広がっている。






彼の背後から風が流れてくる。

絵画の扉の向こうから少女が姿を現す。



「君は…    」


昼間助けた少女・ベス。

少女はおずおずと彼に近づいてきた。

「今日は色々とありがとうございます!」

開口一番、感謝を示す。

「え…?」

「あの、昼間も助けていただいたのに… 今は村まで守っていただいて…」

「あぁ、気にしないでください。困っている女性を助けるのは男の義務です。
それにこの村を守る事は僕たちの仕事です。」

少しそっけない返事にもかかわらず、少女は言葉を続ける。

「いえ、私、嬉しかったんです。まるで兄が帰ってきたみたいで。」

「お兄さん?」

「えぇ。私にはもうひとり兄がいたんです。」

「そうだったんですか…」

「兄は…  トニー兄様は2年前に出稼ぎ先の工場がデスキュラに襲われたときに亡くなりました。」

肩を震わせ そう告げる少女にリチャードは心が少し痛んだ。

静寂が二人を包む。





その静けさを破ったのは少女。

彼女は手に持っていたバスケットを彼に差し出す。

「あの、これ、お口に合うかどうか解りませんけど、召し上がってください!」


それだけ言うと少女は扉の向こうに消えていった。

彼がバスケットを開けると中にはサンドイッチとポットに入った紅茶があった。

夕食を食いっぱぐれていた彼はその紅茶の香りに誘われてつい食べてしまう。

久々に美味しい物をいただいた彼は扉の方に向かってごちそうさまを言う。





それから20分後くらいに今度は兄のロバートがやってきた。

リチャードに向き合うロバートは彼を見据えて話し出す。

「頼む!妹を…  ベスを惑わせないでくれ!」

思いがけない言葉に彼は驚く。

「妹や俺は田舎者だ。 しかも妹は世間知らずだ。
…だから 妹を惑わせないでくれ。お願いだ。」

昼間、強気だった男が彼に向かって頭を下げる。

「どういうことです?」

怪訝に思った彼は問いかける。

「あんたは死んだ兄貴に似ている。
妹は兄貴に憧れていた…
そんな兄貴に似たあんたがいれば、妹は…  妹は…   」

拳を震わせ立ちすくむロバート。

その時、外で爆発音が響く。


ロバートとリチャードが扉を開くと村は炎に包まれていた。

「な、なにぃ?」

「何ということだ!?」




異変に気付いた村人たちはそれぞれ猟銃を持ち出して、教会を飛び出していった。

そのみんなを追ってベスも出てきた。

「お願い!みんなを殺さないで!」

その叫びは虚しく響く。

飛び出していった村人たちは次々に倒れていく。

駆け出していくベスがミサイルの爆発に巻き込まれそうになる。
ロバートはベスを庇って爆風に巻かれ倒れた。


リチャードは迫り来るデスキュラ兵を倒しながらその光景を見ていた。

怒りが体中に駆け巡る。

「何故、罪もない村を襲う! 何故、抵抗できない人たちを!!!」





彼が気付くと周辺のデスキュラ兵を全滅させていた。

そこらじゅうにデスキュラ兵の鎧だけが残骸として転がっている。

その中で負傷した兄・ロバートにすがりつくベスがいた。

「兄様…    兄様…    」

虫の息のロバートがリチャードを手招く。

ヘルメットを外し、ロバートに近づく。

「あ… あんなことを言っっちまったが…  妹をベスを頼む。
こいつは俺の本当の妹じゃない。本当の家族に返してやってくれ… 」

兄の突然の言葉に驚きを隠せないベス。

「こいつは… こいつの記憶は戻っているはずだ。
こいつは優しいから…  おやじやおふくろに言えなかった。
…俺だけが守ってやるはずだった、兄貴の代わりに。
ベス…  守れなくなった俺を許してくれ…

愛していたよ… 妹としてではなく…  ううっ!」

事切れたロバートに叫ぶベス。

「いやぁ、兄様!お願い!ひとりにしないで!目を開けてぇ!   いやぁあああああっ!」



どうすることも出来ないリチャードはただ、瞳を閉じて彼の冥福を祈る。




村は避難していた女子供と老人の30数名が生き残っただけだった。






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(2004/12/12)
(2015/03/27 加筆改稿)



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