Gone With The Wind -5-




リチャードは落ち着きを取り戻したベスをビスマルクマシンへと連れて行った。


彼女から話を聞くために。

ダイニングルームに通し、紅茶を勧める。


リチャードと少女の雰囲気に興味津々の3人はドアの外に張り付いていた。

しばらくの沈黙の後、リチャードが問いかける。


「記憶が戻ったという話はどういうことなんだい?
出来れば話して欲しい。
力になれるかもしれない。」

ドアの外の気配がざわめく。

ふうとため息をついて彼がドアを開けると3人が倒れこんできた。

笑顔でごまかすビルたち。


「こんなにギャラリーがいたんじゃ、話しづらいかい?」

ベスは首を横に振って答えた。

「いいえ、皆さんにも聞いていただきたいです。」

3人は顔を付き合わせる。






*************




「私はあの家の本当の娘ではないんです。」

話し出したベスは落ち着いた口調だった。

「私は5年半ほど前に宇宙空間で事故にあったんです。
その時、カプセルで漂流していた私を助けてくれたのがトニー兄様でした。
トニー兄様は事故のショックで記憶を失った私を妹として迎えてくれました。
村長であるお父様とお母様。そしてロバート兄様。
みんな私を本当の娘、本当の妹のようにしてくれました。

…今から1年ほど前に村に火事が起こったんです。
3件の家に類焼した大きな火事でした。
私はそのときの炎と爆音で記憶が戻ったのです。」


「!」

ビスマルクチームの4人は同じようなことを経験していたので彼女の言葉を信じることが出来た。



「記憶が戻った直後はパニックでしたが、私の本当の家族もみな死んでしまっていると思うと、
ここにいることが幸せなのではないかと考え、私はこのことを誰にも話しませんでした。
まさか…  ロバート兄様が気付いていたなんて知りませんでした…。」



真珠のような涙がひとすじ、頬を伝う。


「君の… 君の本当の名は?」


リチャードが優しく問う。

5年半ぶりにその名を名乗る。

「…ファリア。   ファリア=パーシヴァル…です。」

その名を聞いて彼は仰天した。

「君が…君が、ファリアだって!?」


彼の驚きように4人は目を丸くした。

「どうしてそんなに…?」

彼の顔を覗き込む少女の顔に確かに面影があった。

「まだ解らないのか?
僕だ、リチャード=ランスロットだよ。」

「本当に…   リチャード?!」

「あぁ。」

確かに声変わりはして、背も大きくなっているけれど彼だと解るのに時間はかからなかった。


二人の空気がひとつになた瞬間、少女は青年の胸に飛び込んでいった。


「リチャード!」






抱き合う二人に三人は呆然としていた。


「どーゆーことなんだ????」




***********


照れ臭そうに二人は寄り添いながら三人の質問に答える羽目になった。

リチャードが事情を話す。

        5年半前、彼女が乗った宇宙客船がデスキュラに襲われた事。
        そして彼女の家族の中で彼女だけが行方不明になっていたこと。
        二人が6年近く前に婚約していたという事。

このことに三人は唖然とした。


「ま、そういう事情だ。」

彼女に振り返りリチャードは言葉を続ける。

「ところで、ファリア。」

「はい?」

「君の家族は英国で無事に暮らしているよ。だから安心して国に帰るといい。」

「本当に?」

「あぁ。」

その言葉を聞いた彼女は涙を流して喜んだ。





ベスことファリアは養父と養母、義兄を丁重に葬った。
5年間、育ててくれた感謝とともに。

葬儀にはビスマルクチームの面々も参加してくれた。




喪服のファリアにリチャードは告げる。

「本当は僕が君を英国の家まで連れて帰りたいんだけど、
任務があるから…  すまない。」

「ううん、いいの。まだしばらくはこの村にいるから。
まだ村長の娘・ベスとしてやらなければならないことがあるし…」

家族の元に返りたい気持ちを抑えて少女は微笑む。

壊滅した村の住人たちはセントラルシティに移ることになった。
男手がなくなった村にとってはそれは仕方がなかった。

「そうか。わかった。無理をしないでくれ。」
「えぇ、ありがとう、リチャード。」



リチャードは優しく彼女の頬にキスした。


「じゃ、僕は行かなければ。仲間が待ってる。」

「えぇ、気をつけて。」



名残惜しそうに彼は目を細める。
手帳の中から四つ葉のクローバーを出してきた彼はそれを指輪にして
彼女の指にはめる。


「今度会うときは英国で!」

「はい。」

はにかんだ笑顔で彼を見送る。







夕日の中、ビスマルクマシンが飛び去ってゆく。

少女はいつまでもいつまでも見つめていた。

風が黒髪をなで上げる…








コクピットの4人は笑顔でいた。

「おい、リチャード。良かったのか?
こんなところに彼女を置いておいて?」

ビルがリチャードの顔を覗き込んで言う。

「仕方がないだろう、任務があるんだから。」

「おーおー、強がっちゃって!」

進児までもが彼をからかう。





リチャードは胸に焼き付けた彼女の面影を想いながら
ガニメデに沈みこむ夕日を見つめていた…








Fin


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あとがき(2004/12/12)
さすがに一気に書くと疲れたわ〜(汗)

これ実は書いたのが2002年の4月。2年半も前の原稿です。
当時はイラストが先にあってそれを元に浮かんだ話
ネタは村娘スタイルの姫でした。
そう、キャラクター紹介(?)のとこの姫です。
昔の原稿の表紙でした〜。
これの再現服がちょっと前のTOP画像〜♪
Gallaryにありますv


(2015/03/27 加筆改稿)


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