frou-frou   -7-



ビスマルクのコクピットでマリアンからリチャードの過去を聞いた2人はただ驚くしかなかった。


「そう…だったのか…あいつ…」


「リチャードのヤツ、俺たちにそんな事、一言も…」






彼が13歳の時に訪れた人生の転機―

   <アテナU号事件…機体の整備不良で爆発したと発表されたが
    実はデスキュラに襲撃された宇宙観光客船。
    乗客乗員の約半数が行方不明となった悲劇の事件。
    その行方不明者の中に彼と婚約が決まったばかりの貴族の令嬢がいた…>







「私だって本人から聞いたわけじゃないわ。
ビスマルクチームメンバー選出の時の彼のデータに目を通した時の事を覚えていただけ…」

マリアンもその事を目にした時、驚いたことを思い出していた。
ビルのデータを見たときも…




    ***



「ねぇ、進児君。」

「なんだいマリアン?」

「彼女…この村の住人なんでしょ? 何か知らないかしら、デスキュラの事…」

マリアンの言葉でやっと気づく。

「あ、それもそうだぜ。な、進児。聞いてみる価値はある。」

「そうだなって…   今、あの二人の邪魔するのかよ!?」

進児があわくっていた。

「仕方ないでしょ?」

「マリアン…付いてきてくんない?」

ちろりとマリアンを見る進児の視線。
そんな進児を見てビルが言う。

「…お前、リーダーだろーが? それくらい頼んでくれば?」


はあと溜息をついて進児はコクピットから出た。


ビスマルクマシンの巨大な車輪の横で二人は抱き合っていた。
少々気まずかったが進児は意を決して言葉を発した。


「あの… お二人さん…」


少々ばつが悪そうな顔の進児に気づくリチャード。



「進児…」
「あ…」

ファリアは恥ずかしさで彼の胸に顔を埋める。


「進児…すまんな。」


「こっちこそ…すまない。邪魔して。   ちょっと…その人に聞きたいことがあって…」

「…ファリアに?」

「あぁ、デスキュラの例の工場のことで。」

「…そうか、そうだな。」

任務の内容を思い出し、彼は抱きしめていた腕を少し緩める。


「…ファリア。すまない。少し協力してくれ。」

「…私に出来ることであれば…」



3人はビスマルクマシンへと入ってゆく。




     ***


コクピットの横のダイニングでリチャードの横に座るファリアの姿があった。

紅茶を出され口にすると少し安堵した顔を見せる。


  (それにしても… 明るいところで見てもやっぱり超美人!! リチャードの婚約者って…)

ビルはまじまじと彼女を見つめていた。

そんなビルの様子に気付くリチャードはじろりと睨む。

「…ビル? お前…いつものビョーキじゃないだろうな?
彼女は絶対ダメだぞ!! 」

本気で言い切っている彼を見てビルだけでなく3人とも驚く。
しかもためらいなく彼女を抱きしめている。

「…誰がお前の女に手ぇ出すかよ!  ってゆーか出来ねーよッ!!」

「本当だな?」

「そんな野暮しねえよ。」


そんなやり取りを聞いてファリアは照れながらも、彼らの仲の良さに何時しか微笑んでいた。


進児は本題に入りたくて2人をたしなめる。

「おい…ビル、リチャード…
 あの、えっとファリアさん。
ちょっと聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」


進児の真面目な顔でファリアも真剣な顔になる。

「えぇ、私で解ることであれば。」


その言葉を聞いてビルとリチャードは はたとなる。


「あの…デスキュラがこの村の周辺に秘密工場を建設中って情報があるんだけど…
何か知らないかな? 何でもいいんだ。」


「え、あ。…ちょっと待ってください。 今、思い出しますから…」

バーの客の雑多な会話の中で何か引っかかるモノを思い出す。


「あの…確か…1ヶ月くらい前に鉱山の反対側に今までになかった洞窟の入り口があるって…
いきなり出来るわけないからなんだろうって話が…」

壁の時計を見上げるるファリア。

「今の時間なら…ホセがまだ家にいるはずだから聞きに行けるわ。」

「ホセって?」

リチャードが問いかける。

「鉱山の責任者なの。 …バーの常連の一人。」

「家、分かるのかい?」

「えぇ。」



「じゃ、みんなで行くか?」

リチャードが進児に問いかけると即返事がある。

「マリアンとビル、残ってくれるか?」

「「OK。」」





    ***


3人が村の中のホセの家へ向かう途中、バーの前を通る。



「あの…リチャード、進児さん。お願いが…」

「なんだい?」

「私の部屋に寄りたいの… 持って帰りたいものがあるから。5分でいいんです。」

「…わかった。いいだろう?進児。」

「…あぁ、いいぜ。」



3人がバーに入ると人の気配がない。

2階の彼女の部屋へ向かう。


「あの…俺、廊下で待ってるよ。」

「すまんな。」

リチャードだけが彼女の部屋に入る。

質素な何もない部屋。


木のベッドにドレッサーにクローゼット。

部屋の壁に3台の身台があり、それぞれに夜用のステージ衣装。
少々セクシーな黒のドレスばかり。


ファリアはドレッサーの引き出しの中から小さな革の袋を取り出す。

「よかった、無事だわ。」


リチャードは彼女が立っているドレッサーの鏡の前に並ぶ化粧品の多さに驚く。
彼の視線の先が何を見ていたか気づく。

「これ… みんなお客様からのプレゼントなの。あまり使ってないわ。
飾りなのよ。 私にとって。」

「そうか…。ところで何を持って帰りたかったんだ?」

袋から出してきたのは…ネックレスとピアス、リング。

「…私の母の形見…」

「!! そうだったのか…。」






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(2005/5/16)




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