frou-frou   -8-





廊下で待つ進児はあまりの静けさに不審を感じた。

5センチほど開いたドアに気づき覗き込む。
どうやらバーの主人と妻の部屋だとわかる。
白い脚が床に転がっているのが見えた。


ドアを開けると…床には胸に包丁を突き立てられた中年の女性。
目をカッと開けたまま絶命していた。

進児は驚いたが、眼を閉じさせ手を胸に乗せた。


「酷いことを…あの男か?」

逃げていったバーの主人とあの男。
警備隊に引き渡すと言った時の反応が気になる。




廊下から自分を呼ぶリチャードの声。

「リチャード、こっちだ。」

部屋に入ってきた二人は驚く。

「メリルおばさん!!??」

ファリアは駆け寄り、肩を揺らすがすでに死後硬直が始まっていた。

「おばさん!! メリルおばさん!!  どうして…こんな…こんな…」

泣き出す彼女を抱きしめるリチャード。

「進児…一体何が?」

「いや、俺が入ってきた時点でもう亡くなっていた。」



腕の中で泣きじゃくるファリア。

「どうして…どうして…?  まさか…おじさん??」

「それは解らないが…あの時の様子からしても…」

「あぁ、あの男と共謀した可能性は高いな。」

「後で警備隊に通報しよう。今は…」

「あぁ、解ってる。」


リチャードは彼女を抱きしめたまま、外へ出る。
進児も外へ出た。


「ファリアさん…辛いかもしれないけど…せめてホセって人の家を教えてくれないか?」

「あ…私…ごめんなさい。  行きましょう…。」

涙を無理やり振り払い、彼に支えられ歩き出す。

「こっちよ。」

二人の後を進児が歩く。



3ブロックほど先の普通より少し大きめの家。

進児がドアを叩くと中から中年の女性が出てきた。

「ホセさんて人の家ですよね? 少しお話を聞かせていただきたいんですが…?」

「だんな様に? あなた方は?」

少々訝しそうな顔を見せる女性に毅然と告げる。

「地球連邦のビスマルクチームです。」

「…少々お待ちを。」

それでも不信感を拭いきれない様子なのでファリアが一歩前に出る。
彼女の姿はリチャードの影で見えなかった。驚いた顔を見せた女性に告げる。


「あ…あのジーナ。…フェアリーが来たとMr.ホセに伝えて…」

「…!!  解ったわ!」


彼女の姿を認めた女…ジーナは慌てて階段を駆け上る。


「君…この村では有名人?」

「そう。知らない人はいないわ。」





すぐに階段を壊しかねない勢いで下りてきた男―ホセ。

「フェアリー?! こんな朝から…どうした?」

「Mr.ホセ。…こちらのビスマルクチームの方たちがあの裏の入り口について聞きたいって…」

ホセは彼女が連れてきたと見られる男…少年と青年を見やった。
最近、彼ら…ビスマルクチームのことはニュースなどで知っていた。


「あぁ、あそこ… 確かに何人かが気になるとか言って調べに入ったヤツがいたが…
誰一人戻ってこねえ。 俺は怖くて入れなかったからな…」

少々ブルっているホセの様子は店に来るときと全く違う。
いつも陽気で自分にオヤジギャグを飛ばすそんな男が。

その言葉で進児達はやはりといった顔になる。

「…!! じゃ、デスキュラの可能性は大いにあるってことだな?」

進児の呟きに同意するリチャード。

「そのようだな…」




傍らに立つ乙女の様子がいつもと違って見えることに気づいたホセ。

「ところでフェアリー? どうした?何か他にもあったのか?」

心配そうな顔を見せたホセに彼女は涙を流して応える。

「…メリルおばさんが…殺されたわ。 ピーターおじさんは…逃げたの。」

「何!!!?」

明らかに泣きはらした目元を見てホセはそれが真実だとすぐに解った。

「じゃ、店は?」

「もう…無理だわ。」

「フェアリーがいるじゃないか…それにリンダたちも…」

切なそうな顔を見せる男に彼女は言いにくそうにしていたが本当のことを話す。


「私…もう、あなた達のフェアリーじゃない。もう彼女はいないの…」

「じゃ…どうするんだ?」

「私…地球に帰るの。 家族が生きてるって解ったから。
それにもう…みんなに愛される資格はないわ。」

「え?」


「彼…がいるから。ごめんなさい。
みんなには…フェアリーは連れさらわれたとでも言っておいて…」

彼女の言葉に驚きを隠せない。

「!! そうか… って…彼って恋人なのか?」

「えぇ。」

少しはにかんだ表情を見せる彼女の後ろに立つ青年と少年を見た。

「どっちの男だ…って聞くまでもないか。 解るよ。」

リチャードの顔を見たホセ。
エメラルドの瞳が視線を返す。

「あんた…なんだろ?」

「あぁ。」

「…俺達はいい夢を見させてもらった…彼女にな。
大切にしてやってくれ。」

「あぁ。」

ホセはリチャードの手を握った。
握り返してきた青年の手の力強さに男は頼もしさを感じ、安心した。


「メリルのことは任せろ。ちゃんと弔ってやる。
さっさと行け…」

「…ありがとう、ホセ。そして…ごめんなさい。」



彼女の手を引くリチャードの姿があった。



    ***




3人はビスマルクマシンに戻って進児たち3人で例の穴を調査することにした。



マリアンとファリアがマシンに残る。



ダイニングでマリアンと二人、座っていた。


「なんだか…やっと解った。」

マリアンが微笑みを向ける。

「え?」

「リチャードが今まで…誰とも恋に落ちなかったのか。」

思わず問いかけるファリア。

「…どういうことです?」

「私達4人、もうすぐ10ヶ月… 一緒に旅して戦ってきた。
リチャードの前に女の人の影ってなかったし… 不思議だったの。

ずっとあなたを…想ってたのね…。」

マリアンは瞳を閉じて呟く。

その言葉で涙が溢れるファリアがいた。

「あ…。」

「あなたもそうなんでしょ??」

マリアンに指摘されたことは事実だった。

「えぇ…私も…」

笑顔を見せるマリアンはファリアの肩をさすった。

「お互い恋する乙女同士、仲良くしましょ♪」

その愛らしい笑顔に微笑を返す。

「よろしく…マリアン。」

「こちらこそ。」

やっと笑顔を見せるファリアにマリアンも微笑んでいた。





    ***


一方、進児ビルリチャードの3人は例の穴に入っていく。

真っ暗な洞窟を抜けると…そこはデスキュラの工場施設だった。

鉱山の真裏からエネルギー源となる鉱物を掘り起こし精製していた。



「どうする?破壊するのは簡単だけど鉱山もぶっ壊れるぜ?」

ビルの指摘は的を得ていた。

「…こうなったら、デスキュラを追い出すしかなさそうだな、進児?」

「そうするしかなさそうだな。行くか!!」

3人は果敢に飛び出していく。


銃と剣でデスキュラ兵を倒してゆく。

施設は一切破壊することなく兵士だけを。



形勢が不利と解ったデスキュラ兵たちは逃げ出してゆく…


3人が調べまわると、もうデスキュラの姿はなかった。




「これで終わり…か。」

進児が呟く。

「あぁ。」

応えたのはリチャード。

「で、お前さんはこれからか…?」

ビルがヘルメットを外して笑顔で彼に突っ込む。


ヘルメットをしているため、リチャードの顔が真っ赤になっていることが解らなかった二人。



「もう行くぞ!!」

歩き出した彼の口調で照れていることが解った進児とビル。

二人の笑い声が響いていた―――――






Fin
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(2005/5/16&17)


あとがきという名の言い訳


ははは〜。またクサイ話になっちゃいました。
出来るだけ他のエピソードも盛り込もうとしたら結構長編?

日記でも書いていますが…
今回「becouse〜」のエピソードに沿って書いてます。

なんだか…激的告白つうかなんつうか…
甘すぎて(?)こっちが照れ臭い。

ちなみにテーマ曲は相変わらずタッキーの「キ・セ・キ」。
すっかりオルゴール状態の私がいます。

タイトルになってる「frou-frou」…
はっきり言って意味なし。
というか、私の大好きなwinkのアルバム曲からいただきました。
この歌詞の内容もちょっと影響されているかな?



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