becouse  of  you    -12-






―一方、男子中等部

朝の女子部からの噂は昼休みには男子部に広がっていた。

昼休みのランチタイムを食堂で過ごすリチャードと親友エリック。

リチャードたちのそばを通る何人かがじろりと見たり、
ヒソヒソ話をしているのが時折見えた。

「ひゅーひゅー!色男!」

そんな声も聞こえる。

「一体なんだ?」

「さあ…」

まだ何もリチャードが自分のことを言っているのだと解らなかった。
そこへリチャードたちと同じクラスの情報通・スコット=フログリーが近づく。

「…やっといた。リチャード君。凄いことになってるよ。」

「え!?」

一体何のことか解らない。
走って来たせいなのか ずれた眼鏡を押し上げるスコットに言われ戸惑う。

「何なんだ? さっきから視線を感じるのは解っているけどさ…」

「はぁ〜、そりゃ仕方ないさ。ちょっと来てくれよ。」

「あ、あぁ。」

エリックと二人連れ出される。

食堂の建物の裏手に3人は行く。





「今、僕さ、新聞部のことで女子部の部長達と会ってたんだけど…」

ちろとリチャードの顔を見るスコット。

「一体何なんだよ?」

はあと溜息をつくスコットはリチャードの肩に手を乗せ切り出す。

「あのさ、土曜に図書館でファリア=パーシヴァル嬢と抱き合って濃厚なキスしてたって噂を聞いたんだ。
で、それがものすごい勢いで校内に広がってる。
大体、君、その土曜の馬術部の試合…最下位だったろう?」

「あ、あぁ。」

「…暴走した君が無理強いしたってことになってる。」

「「はぁ!?」」



エリックまでもが思わず叫ぶ。

「おまッ… まさか、あのあと…そんなことしてたのかッ!!」

エリックは勢い余ってリチャードの胸倉を掴む。

「違う!誤解だ!!」

「じゃ、なんで噂が?」


解放されたリチャードがはあと息を吐く。

「…正直に言うけどさ。」

「「うん。」」

「確かに土曜、彼女に謝罪するために図書館へ連れて行った。
あ…抱きしめてたのは事実だけど。
そんなキスなんてしてないって!! 本当に!!
神に誓って言えるよ。」

エリックは誰よりも彼の性格もどれくらい彼女に対しての想いを抱えているかも知っていた。

「まぁ… お前、そこまでまだ出来ないよな…
俺だったら、ファリアちゃんにならしちゃうけど…」

エリックがそう言うとお返しとばかり胸倉を掴む。

「おい!!」

「冗談は置いといて…」

その言葉を聞いて手を離す。

「で、、ソレを目撃した誰かが誤解して、キスしてたってことになってんだな?」

「そう言うことみたいだね…。」



先週と違いやっと元のリチャードに戻ったのに、またブルーが入る。

「運が悪かったな。あの場所を教えたの、俺だし。」

「仕方ないさ…でもまた彼女に迷惑かけてしまったな…また。」

リチャードの口からあと大きな溜息。



「女子部から来たってことは…相当広まってるな。」

「おそらくね。」

「それにしてもこれだけ噂が大きくなると職員室に呼ばれるっていうのがオチかな?」

「しゃれにならないよ、ソレ。」


エリックの呟きに突っ込むスコット。
二人の会話を聞いて告げる彼。

「どちらにしても運を天に任せるしかなさそうだ。」




勿論、昼休みの女子部も大騒ぎだった。

ファリアは食堂に姿を出すのが怖かったので部のピアノ室にいた。
リズが購買部で買ってきてくれたサンドイッチを二人で食べる。

「大丈夫?」

「…うん。」

「それにしてもさ、普段あれだけ静かなのにどうしてこんなキスぐらいでぴーちくぱーちくうるさいのよ。
校内でHしたわけじゃないんだから。
高等部のほうがもっと過激よ。」

リズがポロリと憤慨しながら本音を言う。

「…リズったら。」

傍らで顔を紅くするファリア。

「まあ、噂なんだからそのうち収まるわよ。」

「そうかしら…?」

「事実は私しか知らないんだよね♪」

少々嬉しそうに言うリズ。

「あ、でもリチャード君の場合、これだけ騒いでるし…
彼もエリックには話してるだろうね。。」

「あ、そうね…」

またまた顔が赤くなる。

テレまくる親友の顔を見て ほほえましく思う。




始業5分前の鐘が響く。

「…行くか。」

「うん。」




―放課後

リチャードは馬術部で前回の汚名を晴らすためにも一層リキを入れて練習に励む。

4月の陽光の中、汗を煌かせ馬を走らせる。

「はッ!!」

その姿を見ても、また噂が囁かれていた。





BACK/NEXT
___________________________________________________________
(2005/5/11)


Bismark Novel Top