becouse  of  you    -7-





ローレン城に見舞いに行くリズもまたファリアに会わせてはもらえなかった。


応接間で彼女の母親に会うリズ。

「そんなに悪いの…??」

「ずっと熱が37度から下がらないのよ。あの娘、平熱低いから…
もう3日目だし、もし今夜に下がらなければ病院に入院することになりそうね。」

「そんな…」

ショックを受けているリズに優しく話しかける伯爵夫人セーラ。

「ありがとう。こんなにあの娘を心配してくれて…、リズ。」

社交界でも美人と誉れ高い夫人にそう言われ照れ臭くなる。

「いえ、私たち親友ですから。」

「あの娘、友達が少ないでしょ? ありがとう、リズ。本当に…」

事実、セーラも子供時代の自分も友人が少なかった。
だからこそリズの存在を気持ちを嬉しく感じていた。
涙を思わず見せてしまいそうになる母。

「あ、あの…私、ファリアが羨ましいんです。」

「え?」

「だって…私にないもの全部持ってる。
綺麗な黒髪も、蒼く澄んだ瞳も…女の子らしさも。
私、全然女らしくないし…こんなだから。
もし…私が男の子だったら、リチャード君なんかに絶対譲らない!」

思いかけない言葉に驚く夫人。

「何言ってるの? あなたは十分女の子よ。
今はボーイッシュでも年頃になれば美人になるわ。
あなたのお母様・シルビア様もお綺麗な方ですもの。」

「でも私、父似ですから。」

思わぬ言葉に戸惑うリズに優しく話す。

「そんなこと…ありませんよ。その亜麻色の髪も黒曜石みたいな瞳も。
とても可愛いわ。」

「セーラ夫人…」




そこへメイドがやってくる。

「お嬢様がお目覚めになりました。少しお熱も下がっています。」

「そう…リズ。いらっしゃいな。」

「はい。」




ベッドの上でまだけだるそうに横たわるファリアの姿を見てリズは驚く。



「大丈夫!?…ファリア?」

「あ…リズ。どうして?」

「何言ってんの? 3日も学校に来ないから心配して見に来たの。」

「…ごめんね。ありがとう。」

「もういいよ。会えたんだし。」



傍らで体温計を見る母・セーラ。

「36度8分… よかった… 下がり始めたみたいね。」

その言葉を聞いてリズも喜ぶ。


「良かった…あなたがいないと私、淋しいよ。」

「リズ、ありがとう。来てくれて。」

思わず抱き合う親友の二人。






ファリアのベッドの横で出された紅茶とタルトを口に運ぶリズに問いかける。

「リズは…聞かないの?」

「うん? 何を?」

「こうなった理由。」

「聞かない。 話してくれる気になるまでは。」

「…そう。」


少し暗くなるファリアにリズは言う。


「…あのね、リチャード君さ、かなり落ち込んでいたよ。」

「…え?!」

思いもしなかった言葉に驚く。

「ファリアの顔見てちゃんと謝りたいって言ってた。」

「そう…なの。  私、嫌われたと思ってた。”大ッ嫌い!”って言っちゃたし…」

ファリアの言葉に構うことなくリズは言う。

「何言ってんの?」

「そうですよ、お嬢様。」

ベアトリス夫人がリズのティーカップにおかわりのお茶を注いで言う。

「リチャード様… 昨日もおとついもお見舞いにみえられてましたよ。
しょぼーんと落ち込んだお顔で。」

「そうよ。学校でもヤツの周りの空気、超ブルー入ってるし。」

目を丸くして驚く少女。

「本当に??」

「うん。今日は私が行くから行くなって言ったの。その時もへこんでた。」

「リチャードが?! あのいつも強気な彼が??」

「そうよ。」

紅茶を口に運びながらリズは言う。

「お嬢様。そこの箱… おそらくチョコレートですけどね、昨日、リチャード様がお持ちになられたんですよ。」

「え…?」

慌てて箱を手に取りラッピングを開ける。
中身は大好きなメーカーのチョコが詰まっていた。

その中に手書きのカードが一枚。

  "I'm  sorry.    
       from. richard."




見た瞬間、ぽたぽたと涙が落ちる。



その姿を見たリズとベアトリス夫人。

「やっぱりファリア  …あなた…」

リズがそっと囁く。







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(2005/5/10)
(2007/2/13加筆)


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