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書斎で使用人からの電話を受ける公爵。

「何!?見つかった! 何処でだ!?」

受話器に向かって叫ぶ姿を見ていたリチャードと伯爵。


「ふむ…それで…   わかった。」



受話器を置く公爵に伯爵は問いかける。

「で、何処で見つかったんだね、私の娘は?」

少し眉をひそめ 口にした公爵。

「それが…あの落雷のあった木のそばに倒れていたらしい…」

「何!?」

思いもしない場所だっただけに本気で驚く。
その言葉を聞いて少年は半泣きになる。

「そんな…ファリアは無事なのッ?!」

泣き叫ぶ息子に父は告げる。

「一応…と言いがたい。 
あの木から5メートルも離れていなかったそうだからな。
放電流の影響がなければいいが…」

「…うッ… ぼ、僕の、僕のせいだ…」

泣き出す少年の頭をそっと撫でるパーシヴァル伯爵。


「誰も君を責めないよ。
…娘の無事を祈ってやってくれ…」

うなずくリチャードに少し悲しい笑顔を見せた彼女の父親。



そこへ使用人のひとりがずぶ濡れで駆け込む。

「今、お部屋に運ばれました!!」

3人はすぐに部屋へ向かう。

ランスロット城で夫人付きの医者が少女の診察の為に駆けつけている。


父親であるパーシヴァル伯爵は娘の惨状を見て驚愕した。
全身ずぶ濡れで髪からも服からも雨のしずくが滴り落ちている。
少女の顔は蒼白で意識はない。

「!? ファリア!!」

すぐに扉が閉められるが父親である伯爵のみ入室を許可される。

事件の報告をうけた母親のセーラ夫人もローレン城から駆けつけた。


はあはあと呼吸を乱したままの夫人は扉の前でたたずむ公爵に問いかける。

「ランスロット公!! 一体どういうことなんです?! 私の…私の娘はッ?!」

「申し訳ない… 今、妻の主治医が診てる…」

扉を開け、セーラ夫人は入る。

着ていた服はすべて脱がされ薄物一枚まとった姿の娘。
髪もぐっしょりと濡れたまま。


傍らにいる夫に問いかける。

「あなた… 一体 何が! 何があの子の身に!?」

「… ちょっと間が悪かったようだ。」

「え?!」

美しい眉をひそめ夫人は夫を見やる。

「ファリアはリチャード君が相手にしてくれなかったので機嫌を損ねて外へ飛び出したらしい。
直後に雨が降り出して… 落雷のあった木のそばに倒れていた…らしい。」

「…”らしい”ばかりなのね?」

「あぁ、あとは本人に聞くしか解るまい。」




医師の診察を見守る両親。
ベッドの上で意識を失っていた少女の目が開く。



「「ファリアッ!!」」

「え、お父様…お母様。一体、私…?」

セーラは濡れるのも構わないまま思わず抱きしめる。

「あぁ、もう。こんなになって…何があったの…?」

母に問われ一気に涙が溢れ出す。
恐怖の瞬間が目に心に焼きついていた。


「怖かった…怖かった…」

ひっくひっくと嗚咽を上げ震える身体で母に泣きすがる。



医師が父親のパーシヴァル伯爵に診察結果を告げる。


「落雷のあった木のそばに倒れていたと言うことですが…
電流痕はありません。
ただ精神的にも肉体的にもショックを受けられたようですな。
血圧も体温も高くていらっしゃる。
たぶん お風邪をお召しに。
あとは、細かい擦り傷くらいです。」

「そうですか…ありがとうごいざいました。」


母親に抱きつく姿を見て相当怖い思いをしたと理解した。


「体力も消耗しておられますので3,4日は安静にしておられたほうがよろしいかと。」

「わかりました。城へ連れ帰って養生させます。」

「それではお大事に。」

医師と看護婦が退室する。



「それにしても…思っていたより大ゴトだったようだ…」

娘の着ていた服を手にすると今の状態もうなずけた。


ドアをノックし入ってきたのはランスロット公爵とリチャード。


「診察結果はドクターに聞いた。ウチで面倒見よう。」

「いや、城に連れて帰るよ。
ショックも大きいようだし。自分の家のほうがいい。」

「そうか。」

泣きじゃくる娘をパーシヴァル伯爵は抱きかかえる。

「それではこれで失礼するよ。
例の仕事の件は夜にでも…。」

「あぁ。」



何も言えないままリチャードはパーシヴァル一家を見送る。


「リチャード。お前、明日学校から帰ったらお見舞いに行こう。
私も行くから。」

「…はい。」






ローレン城に着くとすぐに少女の寝室へと運ばれる。

すでに事件のことを聞いて彼女の乳母でもあるベアトリス夫人が部屋で待機していた。

「可哀想に…お嬢様。」

目を真っ赤にして嗚咽を上げたままの顔はぐしゃぐしゃだった。


ベアトリス夫人とともに待機していたローレン城にいるパーシヴァル家付きの医師が診察する。


一応、ランスロット家の医師から連絡は受けている。
体温、血圧諸々をチェックし、すぐに点滴が施された。

しばらくして静かな寝息をたてて眠りに落ちていく―。






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(2005/5/10)
(2007/2/13改稿)


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