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a  fleeting  love -2-



帰ろうとするファリアとリズの前にリチャードがやって来た。

「や。お二人さん。」

笑顔を見せる彼に微笑を返す。

「お疲れ様、リチャード。…急なことで大変ね。」

「いや… それより君こそ大丈夫?」

「何が?」

「その…」

リズは彼が何を言いたいのか解っていた。


「あのさ…さっき衣装係の子から手直ししたって言うから
僕の分の衣装を貰ったんだけど…真っ白なんだよね…
なんだか…周りと比べて雰囲気が違う気がするんだけど…気のせい?」

「!!」

リズはやっぱりと思った。
しかし…

「私は別にそうは思わないけど…?似合ってると思うけど、リチャードに。」

彼女の言葉にリチャードもリズも驚く。
二人して思っていることは同じだった。

  ((やっぱり…なんかズレてるよ…ファリア(汗)))



「ねえ、。文句つけるつもりじゃないけどさ…
なんかやっぱりおかしいよ?」

「僕もそう思うよ…」

しかし彼女は違っていた。

「私はそうは思わないけど?」


彼女の優しい心は解るが(ずれてるけど)、これは完全なイジメだということを二人は理解していた。


「…ねぇ。 今日もあなたンち、行っていい?」

「え、えぇ。いいけど。今日、父も母も誰もいないのよ。
よかったら泊まっていってよ、リズ。」

「ホントに?」

「うん。」

ファリアの言葉にぱあっと顔が明るくなるリズ。

「僕は?」

そんなリズが少々羨ましいリチャード。

「何 言ってるのよ、家、隣じゃない。」

「そりゃ、そうだけど…」

残念そうな彼の様子にリズは得意げになっていた。
これが女友達と男友達の違いだと言いたげな。


「じゃ、僕んちの車で送ってあげるよ。まだ待たせてあるし。ね。」

「「いいの??」」



3人はランスロット家の車でパーシヴァル邸に向かう。

ファリアとリズを下ろしてリチャードは帰っていく。



リズとファリアがメレデス夫人に衣装を見せる。

「確かに…舞台衣装にしては少々派手かしら…」

「王子役のリチャード君の衣装が真っ白らしいんです。おかしくないですか?」

メレデス夫人とリズの言葉に同意できない。

「私…結構、気に入ってるんだけど?」

「本気?」

目を丸くしてリズが言う。

「うん。オペラの衣装とかって思っているより派手よ。
ここじゃ多少派手に見えるけど…」

「…ファリアが納得してるって言うのならもう言わない。」

「私、これ着るわ。」


笑顔を見せる親友の顔はとても輝いているように見えた。



   ***


ファリアの心境はリズやリチャードが思っているようなものではなかった。

中等部に上がってから多少、クラスメイトとなった娘たちから、遠巻きにされていると感じていた。
だからそんな子たちが自分の為に衣装を作ってくれたと思うだけで嬉しかった。

それに幼い頃から祖父母や母と王立劇場で舞台劇やオペラを見て育った。
だから舞台衣装がどのようなものか解っていた。

逆にリズやリチャードの言いたいことが解らなかった。







   ***



―発表会当日


ファリアは例の衣装を着て舞台に臨む。

しかけた娘達は逆効果だったことに初めて気づく。


仲間で試着していたのは赤毛だった…ことが失敗だった。



黒髪に白い肌の彼女だからこそ、あの衣装は映えて見えた。

王子役のリチャードが真っ白なのもまた彼らしくて浮いていなかった。
むしろ彼を騎士らしく見せていた。



ラストシーン間際…  死んだと思っている白雪姫にキスするシーン。

フリなのだが、リチャードは本気で見とれてしまい一瞬動きが止まった。
小人役に小突かれてやっと動き出した。



ラストのワルツも何とか無事にこなせた。

2人と7人の踊りで拍手が起こる―――






リチャードの両親もファリアの母親、祖父母も見に来ていた。
もちろん、微笑みに溢れていた。





   ***


リチャードはこの時、彼女を本気で可愛いと思い始める。

今までも可愛い小さな女の子で守ってあげなきゃならない…と思っていた。

薄く化粧をした彼女を見て、フリではなく本気でその可愛い唇にキスしたかったのだ。




13歳____________________________自覚を覚えたばかりの彼の恋は… 淡い可愛い恋だった。







fin

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(2005/5/21)
あとがき

日記のある時期に「白雪姫」を見ていて思いついたお話。
つーか、自覚するの…早いのか遅いのか(笑)

実はこのあと「becouse of you」に続きます。





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