Sympathy -4-
ファリアとアリステア姉弟は一旦、ビスマルクチームと共に火星へ。
マシンは点検の為にドッグ入り。
そのため4人には36時間の休暇が与えられる。
彼らと共にホテルの一室を与えられた姉弟。
二人の処遇を火星に置かれていた連邦政府に依頼した結果、
安全に英国へと帰されることになった。
あの6年前の事件で母は亡くなったが父が生きていることを知らされた姉弟は一安心。
とりあえず三日後の出発ということに。
リチャードは二人をショッピングへと連れ出す。
アリステアは先日の定期船襲撃のせいで身の回りのもの一切を失くしていた。
彼女達に服や靴,日用品を買い与えていた。
「リチャード…ごめんなさい… こんな事まで…」
「全然。これくらい…それに未来の花嫁にこれくらいは普通だろう?」
「「!!」」
弟は横でやっぱりという顔をしていた。
「リチャードったら…」
思わず照れる姉に弟は肘で小突いていた。
「姉さま…幸せモノだね。」
「もうっ!アリステア、からかわないで!!」
あははと笑い少年は青年の背に逃げ込む。
「次、行くよ。」
彼に手を引かれショップへと歩き出す。
「ほら、これ似合うと思うよ。」
彼が指し示したのは淡い花柄のワンピース。
思わず戸惑う。
村にいたときは<フェアリー>というイメージのために黒っぽい服しか着ていなかった。
「こんなの…可愛すぎるわ。」
「いいと思うけど?」
「僕も姉さまに似合うと思うよ。リチャードさんのセンス、信じたら?」
弟にまで言われるとまあいいかと思う。
試着するとサイズもピッタリ。
「あぁ、やっぱり。いいじゃないか」
店員も彼女を褒める。
最初、店内に入ってきた時、黒のワンピースを来た地味な女性と思っていた。
しかし服を変えただけで全然イメージが違って見えた。
「…このままで行こう。」
結局、このワンピースでショッピングをすることに。
3人が街中を歩いていると何人もの男が彼女を振り返る。
村にいたときからそうだったので彼女本人は気にも留めていなかった。
午前中の買い物で荷物がかなり増えたので一度ホテルに戻る3人。
ロビーには進児たちがいた。
「よう!お帰り! 随分、買い込んだな〜。」
ビルが笑って出迎える。
「あら、ファリアさん。そのワンピース可愛い♪」
「あ、ありがとう。マリアン。」
「ね、何処で買ったの?」
「あの…そこのお店で…」
「私もお買い物行こうかな〜。ね、進児君!!」
マリアンに強気に言われ逃れることが出来ないと悟る。
「…はい。」
そんな進児の様子を見て彼女は言う。
「ねぇ、マリアン。私のお買い物に付き合ってくださらない?」
「え?!」
「女の子同士でないと入れないお店もあるし…
…最近のモードも教えてもらいたいの…ダメかしら?」
「いいわ。行きましょ。
進児君、そういうわけでいいわ。
ファリアさんと行ってくるから。」
「そ、そう?」
ほっとした進児の顔を見て微笑む。
彼女の傍らに立つリチャードは懐からカードを出す。
「…そういうつもりなら、これ渡しておくよ。」
「何?」
「…アリステアのチケット代金。」
渡されたのは臨時発行のカード。
「え…?」
「君が頑張って貯めた金だ。
事故があったから全額払い戻せた。ほら。」
思いがけなく渡される。
「地球に帰るのにもう金は必要ないが…
何か入用ならと思ってさ…。」
「あ、ありがとう。リチャード。」
思わず嬉しくて涙する。
己の身を削って得たモノが帰ってきた。
のちに入っていた金額に驚く。
自分の稼いだ以上の金額が入っていた。
それが彼のやったことだと後で知る。
「あ〜、俺、腹減った〜。メシに行こうぜ!!」
ビルの一言で一行は外のレストランへと移動する。
一行はレストランで賑やか過ぎて周りの客が驚いていた。
酒もないのに大盛り上がりのテーブル。
そんな中、ビルは美貌の乙女をまじまじと見ていた。
初めて見たときと印象が違う。
黒の服の彼女は何処か暗い影があるように見えた。
しかし、今は違う。
服装が変わったせいだけではないと理解できるのはやつのせいだと気づく。
今まで自分たちに見せたことのない表情を彼女に向けているリチャードのおかげだと―
(それにしても… マジで美人じゃん!! リチャードのヤツもやるねぇ…)
じっと彼女を見つめているビルに気づき声を掛ける。
「おい、ビル。そんなに見るな。 穴が開くだろう?
…それともいつものビョーキだったらダメだぞ!!」
慌ててビルは弁解する。
「んなワケあるか!!
大体、お前の女に手ぇ出すか!! それほど不自由してねーよ!!」
一同は大笑いしていた。
彼女本人は照れまくっていたが。
進児が明るい声で少年を誘う。
「アリステア。午後は俺たちと遊ぼうぜ。ゲーセンでも何でも付き合ってやるよ!! な、ビル、リチャード?」
「「あぁ。」」
食事を済ませた一行は、男性陣と女性陣に別れた。
マリアン16歳とファリア18歳ということで結構、話はあっていた。
二人して化粧品やランジェリー、アクセサリーを買い捲っていた。
ショップを回る中、色々と話する乙女二人。
そしてマリアンは気づく。
彼女がどれだけ彼を愛してるかを―
***
進児とビルにアリステアを任せ、リチャードは一人買い物に出る。
ひそかにあるものを買うために…
色々なショップが立ち並ぶ中、リチャードは目に付いたそれを手に入れた。
しばらく歩いていたのでカフェに入る。
ふと見るとマリアンと彼女がいることに気づく。
乙女二人も彼が来たことに気づく。
テーブルに近づき、二人に話しかける。
「や、随分、買い込んだんだね…」
二人の席の隣にはいくつもの紙袋。
「ふふ…」
「やっぱりお買い物は女の子同士でないと楽しくないわ♪」
マリアンが嬉々として言う。
そんな二人のテーブルには女性の好きなスイーツが並んでいた。
「なんだか、私も嬉しい。普通の女の子に戻れたみたい…」
彼にそう言うと微笑を返された。
「良かった。僕も嬉しいよ。」
「にしても、リチャード。彼女といるとちょっと大変。」
「なんで?」
「もう、歩いてるとナンパの嵐よ。
男の人たち、群がって来るんだもん。」
「あ。それは…少々、仕方ないか…」
確かに翳が消えつつある彼女。
昔から学内に信奉者がいたことは知っている。
何故か男を惹き寄せるのは母親のセーラの血らしい。
彼女の美貌なら普通の男ならほおっておかない。
「このあとはリチャードについてもらった方がいいわね。
っていうか、私、ホテルに戻るわ。あとよろしく。」
マリアンは伝票を持って席を立つ。
「外に出ようか?」
「えぇ。」
彼女の買い物を手に持つリチャード。
「ご…ごめんなさいね…。」
思わず彼に持たせてしまうことに困惑していた。
「いいよ。」
にこやかな顔を見せられるともう何も言えなかった。
二人の距離は30センチほど。
手を伸ばせばすぐに届く距離。
緑の公園の中を歩く。
「なんだか…久しぶりだわ… こんな穏やかな気持ち…」
風が二人を通り過ぎていく。
「あの丘の日みたいだわ…」
そう呟いた彼女の手を引く。
「あ…」
「僕もだよ…」
芝生の上に腰を下ろす二人。
周りには家族連れや同じようなカップルがいる。
「…手、出して。」
「え?」
両手を出すと彼は小さな箱を出してきた。
「まさか…?」
「そのまさかだよ。」
「開けてみていい?」
「勿論。」
丁寧に包みを開ける。
リボンを解き、包んでいる紙を綺麗に開ける。
白い箱を開けると、小さなケース。
開けると予想通り…小さなリング。
「急だったからさ…こんなですまない。
国に帰ったら、ちゃんと手順を踏んで…婚約指輪を…」
彼の言葉を聞くまでもなく、ぽろぽろと涙が溢れる。
「あ…ありがとう。こんな、私でホントにいいの?」
「…勿論。君じゃなきゃイヤだ。」
「でも私…一度、堕ちた…のよ。 パーシヴァル家にもランスロット家にもどう説明すればいいの?」
困惑する彼女の肩を抱き寄せる。
「あの件は…黙っていた方がいい。
けど…バーで働いていたことはパーシヴァル公に話したほうがいい。」
「お爺様に?」
「あ、いや。今は君の父上がパーシヴァル公爵だ。
君のお爺さんは…今はローレン卿となられた。」
「そうなの…父が跡を継いだのね…」
「あぁ。…ファリア、リング貸して。」
「え?は、はい。」
彼女の左手の薬指にはめるリチャード。
サイズはピッタリ。
「これで君の指は予約ってことで。」
夕陽の光できらめく小さなスペースダイヤ。
「キレイ…」
彼女の指で輝きを放つ。
彼は彼女の腰を抱き寄せた。
「あ…」
そっと触れるだけの優しいキス。
周りの人間は誰も気に止めない―――
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(2005/5/29)
To Love Sick