Sympathy  -2-




アリステアと中年男性…Mr.コットンは船中で話した。

「どうして君だけ…地球に?」

「姉が…僕に立派な人間になって欲しいと。
僕が家の跡取りだからって。」

「跡取り?! 英国だって言ってたけど…君はひょっとして貴族なの?」

「…はい。」

「そうだったのか…」

沈む少年にそれ以上、聞きだそうという意欲は削げてしまった。

男性は姉であるフェアリーを思い出す。

  (貴族の令嬢だから彼女には気品があると感じてしまうのか…?)


そっとキスされた唇に触れる。



もう少しでセレス星という時、船体に衝撃が走る。

アリステアにとってそれは身に覚えのある嫌な感覚。

窓の外にはマシンを操るデスキュラ兵の姿。

デスキュラの奇襲だった。

あっという間の出来事。


  (僕…地球に帰れないよ… ごめん…姉さま…)


薄れ行く意識の中、アリステアは姉に謝っていた。


   ***



セレス星へ向かう定期船が襲われたと聞き、ビスマルクチームが駆けつける。

もうデスキュラは引き上げていた。

惨状を見て嘆く4人。
それでも生存者がいないかと探索する。


緊急酸素マスクをつけた少年がビルの手によって助けられた。
しかし…その他の生存者はいなかった―



少年はマリアンのベッドに運ばれ、ビスマルクチームはセレス星へと向かう。





「う…あ… 姉さまッ!!」


意識を取り戻した少年は飛び起きた。
初めて見る室内には金髪の美少女。
思わず周りを見回す。

「ここ…どこ?」

「ビスマルクの中よ。」

「ビスマルク…?」

初めて聞く言葉に訝しさを感じて繰り返す。

少女は何処かへ連絡をしていた。


椅子に腰掛ける少女ににっこりと微笑みかけられ戸惑う少年。

「私、マリアン。あなたは?」

「ぼ…僕はアリステア…」

「セレス星へ向かう途中なのよね?何しに?」

「地球へ…帰るために…」

「そう…」

マリアンは地球へ帰るという言葉を聞いて、ルートが浮かんでいた。
まだ自分より幼い少年が一人でと思うとふと悲しくなる。

「ご家族も…あの船に?」

「ううん、僕一人です。」

「そう…」



そこへリチャードがチャイムを鳴らして入ってきた。

「意識を取り戻したらしいね。 身元を調べさせていただきたいんだ…名前は?」

少年は金髪の長身の青年に告げる。

「…アリステア=パーシヴァル…です。」

「!!」

その名を聞いて驚く彼。

「どうしたの?リチャード?」

訝しげに思ったマリアンは問いかける。
青年の名を聞いてまじまじと顔を見た少年も声を上げた。

「ひょっと…して、リチャード…さん?!」

「アリステア…生きていたんだね…」

思わず少年の手を握りしめる。

「ひょっとして二人、知り合いなの?」

マリアンが問いかけた。

「あぁ。」



アリステアは立派な青年になったリチャードの姿を見て思わず叫ぶ。

「リチャードさん… 姉さまを、姉さまを助けて!!」

その言葉に息が詰まる彼。

「!! 何!? ファリアも…生きているのか?」

「うん。フルシーミ星の…西カストガル鉱山の村に…」

「何で…君ひとりであの定期船に?」

「姉さまが…僕にひとりで帰れって…」

少年の細い肩を掴み、彼女と同じ色の瞳を覗き込む。

「で、ファリアは?」

「…死んだものと思ってって… 言ってた。
でも僕が大人になって迎えに行くって言ったら、来なくていいって怒られた。」

「何だって!?」

「そしてこう言ってた。
リチャードさんに会って"愛してる" って伝えて欲しいって。
それに死んだと言う様にって。」

「「!!」」

リチャードもマリアンも驚く。

「じゃ、何故、君と帰ってこない? 何故、死んだなどと??」

「…もうパーシヴァル家にふさわしくない。
バーで働いてたなんて不名誉だから、帰れないって…言ってた。」

男泣きする少年の言葉を信じる。

「リチャードさん、姉さまを迎えに行ってあげて!! お願い!!」

「頼まれなくても行くさ。
…マリアン、すまないがこの子のそばにいてやってくれ。
僕は進児たちにフルシーミ星に行くように頼んでくる。」

「OK。」






コクピットへ行ったリチャードは進児とビルに助けた少年の姉がフルシーミ星にいると説明した。


「フルシーミって確か鉱山の星だったよな。」

「そうだ。」

「…わかった。」

メインコンソールのシートに腰を下ろした進児。

「スーパーフライトGO!!」


事件の後処理は連邦軍に任せ、一直線にフルシーミ星へと向かう。



   ***




―夜

昨日と変わらずに村のバーで歌姫フェアリーはステージをつとめる。

いつもより少し悲しく切ない歌声に男たちは聞きほれる…



客席を回る彼女にチップを渡す男たち。


   (もう必要ないわね…)





店が終わったのは深夜1時過ぎ。



バーの2階の部屋に戻るとひとりになったことを実感する。


空のベッドを見つめるサファイアの悲しい瞳。

  (アリステア… 元気で、がんばりなさい…)



今日、弟の乗った定期船がデスキュラに襲われたとこを全く知らない―――




溜息をついてステージ衣装のドレスから夜着に着替え、薄いメイクを落とす。

鏡に向かうと寂寥感を漂わせた女の顔―

  (これでよかったのよ…  アリステアのためにも、私のためにも…)




声を出さすに泣いてしまう。
それはもう彼女のクセになっていた。



突然、ドアをノックする音。
涙を拭い出る乙女。



「どなた…こんな時間に?」


ドアを開けると…そこにいたのは常連客の一人・エイブリー。38歳の鉱山の第2責任者の男。


「何の御用?こんな時間に…迷惑よ。」

ドアを閉めようとすると足を挟んで閉めなくさせる男。

「待てよ…。弟、出て行ったんだろ?
知ってるんだぜ。」

「何故、その事を?」

「俺、今日、仕事がらみでエアポートに行ったんだよ。
そしたら弟を見送ってるお前さんを見たんだ。」

「だから?」

「寂しかろうと思ってさ…慰めに来てやったんだ。」

にやりと薄笑いを浮かべる男に嫌悪感を感じた。

「結構よ。」

ドアを閉めようとするが、乙女の力で適うはずもない。
力いっぱい開けられ、勢いで転倒した乙女にのしかかる。


「イヤッ!! 止めてッ!!」

「何、言ってるんだ? 金なら払ってやるさ。
俺、知ってるんだぜ。 隣街のダヴェンポートとグルーガーに1万ドルで商売してたんだろ?」

その言葉に驚くがもう2度としないと決めていた。

「もう…お金は必要ないから…しないのよ!! どいて!!」

「はッ。じゃ、ただでもいいのか?」

力任せに夜着を引き裂かれる。
隣の部屋のバーの主人達には口止めに金は払っていた。
誰も助けに来ない。


「いゃああッ!!」




   ***



この少し前。
ビスマルクマシンがフルシーミ星に降り立った。
村の外れに停められ、アリステアがリチャード達を連れて村内を歩く。

「こっちだよ。」


アリステアが連れて行った先に<P&M>という看板が掲げられたバー。
キィとスイングドアを開け、4人は入る。

2階の部屋へ向かう途中で気づく、争う音が響いていた。

廊下に出ると明らかに姉の悲鳴。

「姉さま!! どうしたの?!」

ドアを開け、飛び込むアリステアとリチャード。
そこには男が姉を床に押し倒し、陵辱しようとしている光景。

アリステアより早く反応したリチャードが飛び出し、男を引き剥がす。
思い切り殴打すると男は昏倒した。


髪も顔もくしゃくしゃ。引き裂かれた服から白い肌が露わに見える。
それでも解る…ずっと探していた恋人の少女の成長した姿。


突然の出来事に驚く乙女。
見送ったはずの弟がここにいることにも驚きを隠せない。

「ど…どうして…アリステア…?それに…あなたは…?」

まさかと思う疑念がよぎる。

「リチャードさんだよ!! 僕を助けてくれたんだ。
だから、姉さまも助けてって頼んだんだ!!」

顔を背ける姉に抱きつく弟。

「余計なこと…しないで欲しかった…」

「何言ってるんだよ!! 今、来なかったら…姉さま…!!」


思わず弟の頬をはたく。

「!! 姉さまッ!?」

「何するんだ!! ファリアッ!?」

リチャードは二人の間に割って入る。

「あなたなんかに!私の気持ちなんか解らないッ!! 
帰りなさい!! 英国に!!」

「君も帰るんだ!!」

リチャードの言葉が耳に響く。

「無理よ!!」

「何故だ!!」

「もう…もう…無理なのよ…」

泣き崩れる彼女にアリステアもリチャードも何も言えない。







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(2005/5/29)



To Love Sick