-29- 「summer beach」
―ハワイ3日目
進児&マリアンとリチャード夫妻はビーチにいた。
大きなパラソルを砂浜に差し、日陰にいるのはリチャードたち。
波打ち際ではしゃいでいるのは進児とマリアン。
「それにしてもあの二人…進展してるのか?」
無邪気にはしゃぐ二人を見てリチャードが少々心配げに呟く。
「私もそれとなくマリアンに聞いてみるわ。
あの娘もひょっとしたら悩んでるかもしれないし…」
「そうだな。男同士、女同士でないと話せないこともあるだろうし。」
「そうそう… って… え? あなたもあるの?」
「…たまにな。」
「そうだったの… 知らなかったわ。
でも私もそうかしら…」
「夫の僕に言えない?」
「…ちょっと…」
「ふーん…」
沈黙する二人。
気まずい雰囲気を変えたくてファリアはシートから立ち上がる。
「なんだかノドが渇いたから、何か買ってくるわね。」
一人で行こうとする彼女の手を引っ張る。
「僕も行く。君一人で行かせたら…男が釣れそうだ。」
一瞬噴出した彼女は笑顔になる。
「そんなことないわよ。」
「いや、水着姿の君なら、他の男はイチコロだ。
一緒に行く。」
「…わかったわ。じゃ、あの二人の分も買ってきましょ♪」
「あぁ。もちろん。」
二人は浜辺のオープンカフェでテイクアウトしてくる。
パラソルのところまで戻ってくると二人に声を掛けた。
「ねぇ、お二人さん! 飲み物いかが?」
「あ、いただくわ〜。ノド渇いちゃった!」
マリアンが元気よく駆け寄ってきた。
その後を追いかけるように進児も来る。
シートの上に腰を下ろし、4人が揃って口にする。
「ん〜、冷たくておいし〜♪」
アイスティを一気に飲み干す進児とマリアン。そしてリチャード。
「ファリア…置いておくとぬるくなるよ。」
「ん、でも一気には無理。」
「じゃ、もらっていいか?」
「いいわよ。」
彼女の飲み残しを飲んでしまうリチャード。
彼女本人ではなく進児とマリアンがその光景に反応していた。
(間接キスじゃない…今の。 さすが夫婦ね…)
照れ臭くなる進児とマリアン。
「ね、進児君!泳ぎに行こ!」
「あ、あぁ。」
手を引っ張られる形で海に入っていく二人。
リチャードも立ち上がり、彼女の手を引こうとする。
「僕たちも行くか…」
「でも行っちゃったら誰が荷物の番するの?」
「あ…」
「行って来ていいわよ。私ここにいるから。」
彼女の言葉で再びシートに腰を下ろす。
「…いい、行かないよ。」
「いいの?」
「あぁ、君をひとりにしておくのイヤだからな。」
「…。」
嬉しくて黙ってしまう彼女の様子に気付く。
「ファリア。頼みがあるんだけど。」
「なぁに?」
「膝枕貸してくれないか?」
「え? あ、いいわよ。」
彼女はシートの上でひざを崩して座る。
そのひざの上に頭を乗せ横になる彼。
(あ… やっぱり、いい感じ…)
彼はそのちょうどいい高さに嬉しくなる。
彼女の可愛いお臍が目の前。
「ねぇ、何でこっち向き?」
「イヤか?」
「イヤじゃないけど…(汗)」
「じゃ、しばらくこうしてて。」
リチャードは彼女のぬくもりを感じながら顔を見上げる。
ちょうど胸の谷間から少し顔が見える。
彼の視線に気づいているのかいないのか…
彼女は陽で光る海を見つめていた。
しかしその手は彼の金の髪を撫でていた。
またそれが彼本人にとって心地いい。
思わず悪戯してしまう。
目の前のお臍周辺にキス。
「何してるの?」
「kiss。」
「ん、もう…くすぐったい…」
くすくすと笑いながら彼の髪を撫でる彼女の細い指。
彼は調子に乗ってキスを繰り返す。
「やん… くすぐったいわ…リチャード…」
キスだけでなく時折、舐めていた。
「あ…ダメ…」
「ひょっとして…感じてきた?」
「もう…ダメ。こんなトコロで…」
彼女の声に少し甘さが出てきたことに気づく。
パレオの中に手を滑り込ませる。
「やッ!ダメ…」
ビキニのパンティのソコを指先で触れると熱くしっとりとしていた。
「ダメ… お願い…」
身体を震わせてこらえていたトコロにマリアンと進児がかえってきた。
「ごめん。リチャード、ファリアさん。」
「あら?邪魔しちゃったかしら?」
ファリアは顔を真っ赤に染めていた。
リチャードが身を起こし応える。
「…いいや。」
「代わるよ。俺たちが残るからさ。」
「そうか。頼むよ。」
「「了解。」」
リチャードは彼女の手を引いて海へ向かう。
少し安堵したファリア。
(アレ以上触れられたら…)
顔が熱くなるのを感じていた。
一応、泳ぐのは大丈夫な彼女。
さっきのほてりを打ち消すかのように海に泳ぐ。
「何年ぶりかしら… 海で泳ぐの…」
「あの時以来としたら…11年ぶりか、君?」
「そうみたい。私が7つであなたが8つ?
でも泳げるのよね。不思議…」
「そうそう…思い出すよ。」
「何を?」
二人は泳ぎながらやりとりしていた。
「あ…そうか。 君は知らないんだな。」
「だから何のこと?」
「あとで話すよ。」
「もう!何よ〜!」
笑いながら泳いで逃げる彼を追いかける。
つんとつま先が攣ってしまう。
(あ…やだ。 足…つった…)
海面から2,3メートル沈んでしまう。
彼は慌てて引き返し、もぐると彼女を抱きかかえて海上に出た。
「大丈夫か?足攣った?」
「えぇ。ごめんなさい。
やっぱり運動不足ね。」
「ベッドの上では足りてると思うが…?」
「もう!」
笑顔のリチャードが彼女を抱きかかえたまま、沖の大型ブイへと向かう。
「よっ…と」
彼女を上に上げ、自分も上がる。
太陽の日差しがまぶしい。
彼の手が攣った方の左足をさする。
「もう大丈夫か…?」
「なんとか。」
「帰りは僕につかまってろ。いいな。」
少しキツめの口調だがそれが彼の愛情表現だと解ってる。
「はい。お願いします。my darling。」
「随分、素直だね。」
「いつもでしょ?」
笑顔で言われると反論できない。
「まぁ…そうだな。」
彼は彼女の腰を抱き寄せた。
彼女が顔を上げると覗き込むエメラルドの瞳。
「ん…」
なんのてらいもなく唇を重ねる二人。
彼が舌を入れると少し潮の味がする。
ふっと彼女が離れた。
「ん…ダメ。 」
「何で?」
「これ以上したら…
したくなっちゃう。」
「何を?」
「もう!解ってるくせに!」
彼の腕から逃れるように海に飛び込む。
「帰りましょ。」
「…あぁ。」
先を泳ぐ彼女を追いかける。
「ほら、捕まえた。」
「あん。」
「帰りは僕につかまってろって言っただろう?」
「そうだったわ。」
リチャードは彼女の手を自分に抱きつかせる。
身体が密着していたがそれさえも嬉しい。
(やっぱり…頼もしいわ…リチャードったら…)
子供の頃は想像出来なかった…逞しい腕と胸板の彼のことを。
浜辺に着くと横抱きする。
「ちょ…ちょっと下ろして。歩けるから。」
「いいから… ほら、進児たちに見せ付けてやるんだよ。」
「あ…そ、そうなの?」
進児たちがいるビーチマットのところへと戻る。
マリアンは羨ましげに呟く。
「うっわ、やっぱりラブラブね〜、お二人さん♪」
「ファリアさん、足でも攣った?」
「ちょっとな…」
マットの上に彼女を下ろす。
「ありがと、リチャード。」
「じゃ、お礼。」
そういって頬を向ける。
軽く頬にキスするはずが、彼に唇を奪われた。
「「!!」」
「もう!リチャードったら!」
彼女本人よりも進児とマリアンの方が驚いていた。
モロに二人のキスシーンを間近で見たからだ。
リチャードはすぐに立ち上がる。
「何か買って来ようか?」
「あ、俺も行く。」
男二人でカフェへ向かって歩き出す。
残った乙女たち。
「ねぇ、ファリアさん。リチャードっていつもあんな調子なの?」
「えぇ…そう。子供の頃とは大違い。…何でああなったのか謎。」
「そうなの?!」
「キスは…12と13だったから、普通みたいだけど。」
「へ?私なんて去年…15歳の時よーーー!!」
思わずマリアンは叫んでいた。
「でもフレンチキスじゃないでしょ?」
「…ううん。」
「…そ、そうなの…(汗)」
思わず黙り込んでしまったファリアにマリアンは問いかける。
「ねぇ、なんていうの。ディープキスっていつだった?」
「…16…かな?」
質問された彼女は視線を外して答えた。
「じゃ私もそろそろかな?」
「進児君…どうなの?」
「なんて言うの?…ちょっとオクテっていうか…」
「でもいいんじゃない?向こうが焦ってこないなら。」
「そうかなぁ…」
少し切なそうな顔をするマリアンに一言。
「まぁ、女の子の立場からすれば"求められたい"って思うわよね…」
「そ!そうなの!ソレ!!」
声を大にして応えるマリアンがいた。
「…解らなくはないけど…。
二人のペースの問題だし、…あんまり深く考えない方がいいんじゃない?」
「そっか…そうなのかな?」
少し瞳を伏せるマリアンに話し出す。
「ね。マリアン…
恋愛って結構難しいわよ。」
「え?」
「好きだ嫌いだ。大好き大嫌い。恋してる愛してるって…
なかなか口に出来ないわよね… 大切な相手ならなおさら…」
「…うん。」
「今でこそ、結婚して夫婦になったし割と好き勝手言ってる…
でも昔は違ったわ。
本当に好きなら欲しいなら…女からでも言うべきよ。
私からはあんまりえらそうに言えないんだけど。
ひとりしか好きになってないし…」
「…ファリアさん…」
「私でよければ話ぐらいは聞いてあげられるわ。」
「私…私…」
「泣かないでマリアン。」
普段勝気で明るいだけに悩みはない様に見えていたが
やっぱり年頃の女の子。あって当然だった。
「私…同年代の友達って少ないの。」
「え?」
「私、幼い頃から父の研究所でずっと勉強してて、博士号とって…
進児君くらいしか同世代のコっていなかったの。
たまにしか会えなかったけど…進児君が大好き。
今はずっとそばにいれらるから余計に切なくて…」
そっとマリアンを抱きしめてプラチナブロンドを撫でる。
「私の周りって…いつも大人だった。だから…」
「淋しかったのね?」
「…うん。」
「…そう。私も少し解るわ。
ね、これからも色々お話しましょ。」
「えぇ。よろしく…ファリアさん。」
「前から気になっていたんだけど…
"さん"はいらない。」
「じゃ、ファリアお姉さま。」
「なんか違う世界へ行っちゃいそうね。」
ぷっとマリアンが吹き出し笑い出す。
つられてファリアも笑っていた。
乙女二人が笑いあっているところへ進児とリチャードが帰ってきた。
「何だ?随分盛り上がってるね?」
「おかえりなさい。リチャード。」
「お帰り、進児君。」
「なんだ〜?マリアン、泣いてたのか?」
「マリアンを泣かせたの?ファリア?」
「違うの。笑い泣き〜☆」
「なんだそれ?」
進児がすこし様子がおかしいと感じたが口には出さなかった。
「あ〜!!! 進児君!いいもの持ってる〜!!」
「だろ?どっちがいい?」
進児とリチャードが買って来たのはソフトクリーム。
しかもバニラとチョコ片手ずつ。
「私、バニラ〜!」
マリアンは嬉々として受け取りすぐに食べ始める。
「君はどっちがいい?」
「私…どっちでもいいわ。」
「じゃ、君にチョコ。」
「ありがと。」
リチャードは真横に腰を下ろし、彼女が口につけた直後に言い出す。
「…あ、でも、僕にも一口チョコ。」
「ん。」
彼女の手を掴んでチョコソフトを舐め取る。
進児とマリアンは呆気に取られていた。
「じゃ、私にもバニラ一口。」
「はい。」
彼が差し出したソフトを一口口にする。
「ん〜、おいし。」
彼女は美味しそうにかわいいピンクの舌で舐め取る。
ソレを見てリチャードですら妙に色気を感じてしまっていた。
彼が進児を見ると視線が釘付けだったことが解った。
何事もなかったかのようにしている男二人。
マリアンは気づいてない。
食べ終わると進児がリチャードの腕をつつく。
「ちょっと…リチャード?」
「ん?」
シートから立ち上がった二人はシート&パラソルから5mくらい離れる。
「ファリアさん…いつもあんな色っぽいのか?」
「ん…本人自覚ゼロだけどな。」
「リチャードも大変だな…。
今日俺、ダブルパンチだけど…(汗)」
「へ?」
「マリアンのビキニと…
ファリアさんのあの色気にやられた…」
リチャードは大きな声で笑い出してしまった。
少し離れているマリアンとファリアが振り返る。
彼が進児の背を叩きながら笑っていたからだ。
「お前も…か?」
妙な盛り上がりを見せる進児とリチャードに乙女二人は訝しさを感じていた。
To #30 「oasis」
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(2005/7/30)
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