-30-   「oasis」



夜―

夕食を4人一緒にしていた。

仲のいい新婚夫婦の二人を見ていてすっかり羨ましくなったマリアンと進児がいた。
ワインも入り少しハイテンションの4人のテーブル。


デザートまで来るとマリアンがファリアに耳打ちする。

「ね、ちょっと、相談したいんだけど…」

「…いいけど、マリアンの部屋でいい?」

「うん。よろしく。」







レストランを出ると彼女は夫に囁く。

「ちょっと…マリアンの部屋に行って来るわね。」。」

「ん?何だ?」

「何か…相談したいらしいのよ。ごめんなさいね。」

「いいよ。いってきてあげな。」


彼の頬にキスしてマリアンと二人で部屋に行く。
彼女たちを見送ったあと、リチャードは進児に言う。

「進児…お前は大丈夫か?」

「何が?」

「恋愛相談。」

「は?」

「マリアンが彼女に相談したいって言ったら、大体そうだろう…」

「う…恋愛というか何というか…」

「一体何をまだ悩んでるんだ?
とりあえず部屋に行くか…」


男衆二人も進児の部屋へと行く。




   ***



マリアンの部屋では―


唐突にファリアに質問をぶつけるマリアンがいた。

「ねぇ… キスってさ… どうすれば上手になれるの?」


マリアンが本気で聞いてきてちょっと引く。

「え…  ソレって やっぱりパートナーと回数重ねればいいと…思うけど?」

「う…でも…進児君、全然。それに私、最初の頃、恥ずかしくて逃げちゃった事あるし…」


「だからじゃないの?   …ねぇ、聞いていい?」

「うん。」

「今回の旅行もだけど…進児君って手つないで来る?」

「うん。」

「キスは?」

「軽い…のなら。」

「いつ?」

「9月末…」

「って、もう2ヶ月位前?」

「うん。」

「まさかと思うけど…それっきり?」

「…うん。」

「じゃ、そろそろじゃないの?」

「う〜ん…そうなのかな?」

「それらしい雰囲気は?」

「なんか照れちゃって…」

「どっちが?」

「進児君が。」

「あんまり構えすぎない方がいいんじゃないの?」

「そうなのかな…やっぱり。」


二人して溜息が出る。




しばらくしてマリアンが好奇心の目で問いかけてくる。

「ね、ね、ファリアは…その…リチャードと昼みたいな感じで?」

「…最近はそうね。」

「最近ってコトは昔は違ったの?」

「ん…。最初の頃って…やっぱり彼は紳士だから、一言言ってからっていうのが…」


「へ〜…」

「だから…やっぱり、二人のペースで…
タイミングとかもあるし…焦らなくていいと思うけど?」

「ビーチでもそう言ってたもんね。」

「人それぞれだしね。」

「うん。…ありがと。やっと納得できた気がする。
あともうひとつ。
初めてのHって痛い?」

コレにはマジで引いたがマリアンの真剣な眼差しに参ってしまう。


「…個人差はあるみたいだけど…
私はとりあえず、少し痛かった…わね。」

「ホントに?」

「うん… ってこれ以上聞かないで。恥ずかしいわ。」

目の前のファリアが耳まで赤く染まっている事に気づく。

「あ、ごめんなさい。」

「いつかは経験する事よ。」

「そうね、ありがとう。お姉さま♪」

「じゃ、私、部屋に戻るわね。」

「また明日。」

「えぇ。…おやすみなさい。」

「おやすみなさ〜い。」


マリアンの部屋を出た途端、一言呟く。


「昔の私と同じ…かな?やっぱり…」











…進児の部屋では昨夜と同じ話で盛り上がっていた。




   ***


ファリアが部屋に戻ると彼の姿はなかった。


   (あら…いない?  進児君の部屋、なのかしらね?)



久々にひとりきりなので、淋しく感じる。


「はあ…」



とりあえずシャワーを浴びようとワンピースを脱ぐ。


「ん…」



毎日、彼と睦みあっているためか、肌はすべらかで胸も張りがある。
自分で胸に触れただけで彼の手を思い出す。


  (やだ… 私ったら…  )


かぶりを振ってバスルームへと入る。

コックを廻すと熱い湯が身体を打つ。


「はぁ…」








洗面台で髪を乾かし、身にバスタオルを巻いて寝室に出る。
ドレッサーの前に腰を下ろし、顔にローションをはたく。

鏡を覗いていると玄関ドアの開く音がした。
すぐに寝室のドアの開く音。


「おかえりなさい。リチャード。」

「あぁ、ただいま…って…!」


彼女の姿を見て息を飲む。
バスタオル一枚巻いただけの彼女。
風呂上りのせいか妙に色っぽい気がした。


   (なんでこう…男心をそそるかな…君は…)




鏡に向かい振り返らない彼女を背から抱きしめる。

「リチャード…?どうしたの?」

鏡越しに見える彼が肩先にキスしてきた。


「なんでこう…色っぽいかな…君は…?」

「え?」

「ベビードールは恥ずかしくて、今はそうじゃないのかい?」

「え?あッ! やだ、もう!」

やっと自分がどんな姿で彼の前にいるのか把握した。

「やだもうじゃないだろう?何でそんなカッコ…?」


「…自分の部屋で一人でいたときのクセだわ。うっかりしてた。」

「ははは…うっかりね。おかげで目の保養。」

「って、いつもこれ以上のカッコ、見てるじゃないの?」

「また別。」

「そういうものなの?」

「そういうこと♪」





素肌の肩先にキスする。

「ん…ッ」

わざと音を立てて、首筋へと上がっていく。

「あ…やだ…」

耳元に口づけると耳穴に舌をねじ込まれた。

「ああん…ダメ…」

ぶるぶると身体が震える。

するりと彼の手はバスタオルの中へと滑り込む。


「やん…」

「じゃ、ベッドにいく?」

「う、うん…」

ベッドへと手を引かれる。


二人並んで腰を下ろすと彼はゆっくりとシーツへと押し倒す。


「ん…」



そのままでくちびるを貪りあう。

そっとバスタオルの前をはだけるとうっすらと日焼けの痕。


「あぁ…白いきれいな肌が…少し日焼けしたね…」

「う…ん。」


可愛らしい尖りを吸い立てるだけで、びくびくと身を震わせる。

「あっ…あん…」


彼女の薄くあいたくちびるにくちびるを重ねる。



「う…   んっ…」


白い首筋にキスを落としていくだけで可憐な喘ぎ声が部屋に響く。


彼の頭に白い手がしがみつく。
うっとりとした顔で彼の愛撫に身を任せる。



「あ…ん… リ…チャード…」



ゆっくりと白い肌の上を彼の手が滑る。



麗しい喘ぎ声と可愛い泣き顔、そして自分の名を呼ぶ甘ったるい声。
それだけでも心と身体が熱くなる彼。


なんとも言えぬ甘美なファリアに溺れていく―















   ***


―深夜


二人はまだ起きていた。
もう何度、睦みあっただろう。



彼の腕の中でふと問いかける。

「ねぇ…リチャード。お昼に…沖で言ってた、
あなたが8つで私が7つの時の事で思い出すことがあるって言ってたじゃない。
一体何なの?」


「ん?あぁ。
…今だから話せるかな。」

「何だったの?」


「あの…僕んちのニースの別荘の時の事。」

「何かあった?」

「…僕にとってはね。」

「…?」

首を傾げ、見上げられるとあっけなく陥落するリチャード。


「正直に言うとさ… あの頃に、君を"女の子"として意識し始めたというか…」

「そうなの?」

「それまでさ、あんまり性差とかって感じたことなくってさ。」

「そうだったの…どうして?」

思い出したのか少し笑顔で話しだす。


「二晩目… だったか、雷が怖いって泣いてたの覚えてるか?」

「ん、一応。」



「で、僕がひとりで怯えていた君を部屋に連れて行って…
しばらく一緒にいた。
で、僕たちそのまま寝ちゃっただろ?」


「え、えぇ。」

「あの翌朝、僕は父に言われたんだ。
"むやみに女の子の、レディのベッドに入るな"ってね。
当時はよく理解できなかった。

でもあの日…ヨットに乗ったあの日、水着姿で君の寝ているのを見ていて
自分との違いに気づいた。

で、はっきりとその意味が解ったのが12歳位かな。

あの夏に少し変化があったのは確かだよ。
僕にとってはね。」

「…。」


腕の中でファリアは黙って聞いていた。


「君はいつ?
僕を男として…いつから意識してた?」

しばらく間をおいて応えた言葉は意外なものだった。


「………4歳の頃から。」

「…へ?」

「だって… あの頃のから、私を守ってくれていたでしょ?
私ずっと頼もしいな…って思ってた。
小さな頃からあなたのお嫁さんになりたいって思ってたから。
だから…」

「そんなに昔から…?」


「でもあなたの言うように性差って言うのは多分、あなたと同じ頃。
恋って言う自覚は…はっきりした時期は覚えていないわ。
ずっと好きで来ていたから…」

「…そうか。
君も僕も距離が近すぎたんだね。」

「そうね…」

「恋に夢中で、近すぎて当たり前になってた。」

「だからなのかしら… あなたと離れていたあの2年。
ずっとあなたに片思いしてた。
そしてずっとそのままだと思っていた。」


「僕もだ…。君に片思いに近い感情を抱いていた。
以前は手を伸ばせばすぐそこにいたのに…まるで蜃気楼のように…


あのフルシーミで君を見つけた時、僕は本当の僕に戻れた気がする。」

「…え?」

「砂漠を彷徨っていた旅人が水を求めるように…
僕は宇宙で彷徨っていた君を見つけた。
君は僕のオアシスだよ。」

「オア…シス?」

「そう、やっと見つけた…僕だけのオアシス。

ずっとそばにいたい存在。

それが君だよ。

僕に力も勇気も…安らぎも与えてくれる…」

そっと優しくリチャードは口づける。

「あ…」

ファリアの双眸から涙が溢れた。

「だから…ずっと…そばにいてくれ…」

「…はい。」







それはまるでプロポーズの言葉―








END




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(2005/7/30)

*あとがき*

はぁ〜…やっと終わりました。
というか、結果的に進マリはどうなったんや??と思うので
違うタイトルでまた始めます。(進マリは)

この二人(リチファ)はいくらでも描けるので(笑)
キリのいいとこで止めないと止まらない!

   +++

ところで新婚旅行中のビルたちはどうしてるのか?
描きたいけど…描けない(コレも裏…)

読みたい人っておるんかなぁ〜???





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To Love Sick