-27-   「pinkish」




彼女はバスタブで一日の疲れを取っていた。


「ふぅ…   一日、楽しかった…
ただの19歳の女の子って感じした。
リチャードのおかげだわ。…感謝してる。」


髪を身体を洗い、ふっと思い出す。


「あ。今夜こそ、アレ着なきゃ…」

バスタブから出ると昨日買って貰ったベビードールを手に取る。


「彼が喜んでくれるなら…」


それを着てバスルームから出る。
昨日と同じ状況ならたたき起こそうと思っていたが、彼はベッドの上で新聞を読んでいる。
彼女が出てきたので視線を上げた。

「あ…」

少々顔を赤らめた彼女がベービードールを着ている姿を見て笑顔になる。。


「…着てくれたんだ…」

「えぇ… すっごく恥ずかしいのだけど…」

「何言ってるんだ?可愛いよ。」

「…そう?」


「普段の清楚な君もいいけど…セクシーな君もやっぱりいいね…」

「そうなの?」

「あぁ、もっとこっち来て見せてよ。」

「…はい。」

おずおずと彼に近づく。

「…僕、嬉しいよ。君は…恥ずかしいかもしれないけど…」

顔を真っ赤に染めて彼の目の前に。

「あなたが…喜んでくれるなら…」

彼は腕を引く。
透けて見える肌はいつもより色っぽく見えた。

「あ…そんなに見ないで…恥ずかしいわ。」

「もっと…見せて。可愛い君を…」






朝まで…何度も愛を確かめ合う二人―






   ***



朝―10時台の飛行機でラスベガスへと向かう。
50分ほどのフライト…



午後2時からの式の為に昼前にはホテルに到着し、チェックインして着替え教会へと向かう。



聖堂内には大勢の人。
参列者はスペースインパルス隊のメンバーやガンマン仲間が多いのでほとんど男性。
その中に進児とマリアン、ルヴェール博士が待っていた。

「あ、来た来た。」

進児が声を掛ける。

「10日ぶりねファリアさん♪」

「この間はわざわざありがとう、マリアン。」


乙女二人は早速話していた。
彼はルヴェール博士に挨拶する。

「ご無沙汰してます、ルヴェール博士。」

「いやいや…君たちも幸せそうで何よりだ。」

リチャードとファリアを見て微笑む博士。

「おや…リィ君は?」

「あぁ。僕たちの新婚旅行でもあるので…国に。」

「そうか…」

マリアンが横から顔を出す。

「ちょっと残念。会いたかったわ。」

「ごめんなさいね。また会ってやってちょうだい。」

「えぇ。」

二人が顔をあわせ微笑み会うと教会の鐘が響き始めた。

「あ、はじまるぜ。」






ウェディングマーチと共にジョーンが花嫁姿で入ってくる。



「キレイ…」


マリアンは羨ましげに呟く。



ボディにピッタリとしたマーメイドラインのウェディングドレスに身を包んだ花嫁。

ファリアの時とはまたとがう美しさをかもし出していた。


ビルとジョーンもまた…幸せな結婚生活が待っていた―








   ***


ラスベガスのホテルで盛大な披露宴のパーティ。


「「おめでとう、ビル。」」


進児とリチャードが顔が融けているビルに言う。

「いや〜ご苦労さん。アメリカまで来てくれて。」

「おかげで僕は新婚旅行を満喫してるよ。」

リチャードの言葉にビルは突っ込む。

「え…俺の結婚式といいつつアメリカで新婚旅行?」

「そう。」

「うわ、あいかわらずちゃっかりしてるなぁ。」

「それでビルたちは新婚旅行は何処に行くんだ?」

「…ハワイ。」

ビルの応えに進児とリチャードはハモる。

「「ハワイ〜!?」」

「そう。新婚旅行の定番。いいだろう?南の島♪」

「…いいな、ソレ。」

リチャードは少し羨ましそうに言う。

「だろ?」

「僕たちも行くか…」

「なぬ?? ついて来る気じゃないだろうな?」

「このまま新婚旅行を延長してもいいし…行くか。
進児、お前も来るか?マリアンと。」

「いいな。俺も行く。」

「マジで? 勘弁してくれよ〜。」


笑いあっていたが進児とリチャードは本気だった…



一方、花嫁達も盛り上がっていた。

「マリアンにジョーンさん、この間はありがとう。
おかげさまでちょっと大変だったわ。」


ファリアの言葉にジョーンは嬉しそうに微笑む。

「あら、効果テキメン?」

「って…いうか…(汗)」

「よかったじゃない。じゃ、二人目出来そう?」

「…(滝汗)」

思わず恥ずかしくてコメントできなかった。



「あぁ、そうそう。二人にお礼のもの送ったから。
今日手元に届くと思うわ。楽しみにしてて。」

「「え?」」


そこへ男性陣がやってくる。

「ファリア…ちょっと。」

「あら、なぁに?」

「あのさ、ビルたちの新婚旅行に同行する事にしたよ。」

「え?」

「ハワイ。行った事ないだろう。僕たち。せっかくだし…行こう。」

彼の言い出す言葉に驚く。

「本気?」

「本気も本気。進児もマリアンと行くって。」

「まったく…人の新婚旅行についてくるか、フツー…」

ビルはひとりぶつぶつ言っていたので進児が言う。

「別にいいじゃないか。同じ部屋に泊まる訳でもなし。
どうせ3組に分かれるんだから。」

「そうだ。僕たちだって新婚なんだぞ。」


「進児君…私たち、当てられっぱなしじゃないのよ!」

「じゃ、仲良くするか?」

「うん!」




そんな訳であっさりハワイ行きが決まる。
すぐに進児とリチャードは航空券とホテルを手配する。
もちろん、ビルと同じ。
ホテルは取れたが航空券はそうは行かなかった。
1本後の便となる。





   ***



その夜―


マリアンとジョーンの元にファリアからのお礼の品が届く。

「「あ…」」


違う部屋で受け取ったにも関らず、二人の反応は同じ。


「ベビードール贈ったから… ベビードールで返ってきちゃうわけ?」

しかしその後言葉は違っていた。

「…早速着ましょ、今夜…」

新婚の夜に着るのはジョーン。


「もうちょっと先よね…」

先送りにしたのはマリアン。






新婚の部屋は…熱かった―――何処も。







   ***



―翌日


5時間半ほどかけてハワイ・ホノルルへと到着。
ビルたちは先に着き、二人だけの時間を満喫していた。


リチャード夫妻と進児&マリアンは同じ便だがシートが離れていた。


夕方にはビルたちを同じホテルに到着する4人。

夕食を済ませた後はそれぞれに別れた。

リチャードたちはダブルの部屋。




「いきなりハワイに来るなんて思ってもなかったわ…」

「唐突だったからな…決めたの。」


部屋を探検しながら二人は呟く。

「明日、服を買いに行かなきゃ。」

「え?」

「だって、秋物しか持ってきてないもの。
夏服と…水着かしら。」

「確かにそうだね。 明日の午前中はショッピングだね。」

「マリアンに電話して…時間決めておかなきゃ。」

「その方がいいな。進児も。」

早々に二人は進児とマリアンに連絡を取る。

進児とマリアンはそれぞれのシングルの部屋。



   ***





「…えぇ、それじゃ。おやすみなさい。」


ファリアがマリアンに電話して時間と待ち合わせの場所を決めた。

「それじゃ、次は進児だな。」

リチャードは進児の部屋をダイヤルする。

「…はい。」

「や、進児。ちょっと…明日の事なんだが… マリアンと4人で買い物に行こうって…
夏服持って来てないだろう?」

「あ、そうだな…」

「それで朝10時に1階ロビーで待ち合わせって事で…」

「わかった。ところでリチャード。
ちょっと相談があるんだけど…」

歯切れの悪い進児の言葉に訝しさを感じる。

「なんだ?」

「その…電話ではちょっと…」

「こっちくるか?」

「いや…夫婦の部屋に行くのはちょっと。」

「じゃ、僕が行こうか?」

「すまん。」

「いいさ。」



電話を切るリチャード。

「少し進児の部屋に行って来る。
何か相談したいって。」

「あら…そう。いってらっしゃい。」


彼を見送る新妻―






   ***

進児の部屋に着くと少し神妙な顔で出迎えられた。

「何だ?進児?どうした?」


「…入ってくれよ。」

「あぁ。」


薄暗い室内で進児はベッドに座る。

「一体なんだ?深刻な悩みか?」

「…ちょっと。」

「…。」


今まであまり見たことのない進児の顔にリチャードは戸惑う。
しばらくの沈黙のあと、進児がやっと口を開く。

「あのさ… 女の子の… その…初めてってどうするんだ…?」

「…は?一体何の事だ?」

「その…H。」

「…って、え?」

明らかに驚いているリチャードに進児は恥ずかしげに告げる。


「俺さ…中学まで日本にいたんだ… 義務教育だったけど…
あんまり行ってなくて。
そのあとスーパーパイロット養成所だったからさ…
女の子のことってあんまりよくわからなくて…」


思わず納得したリチャード。


「そうか…。で、具体的にどうしていいか解らないってコトか?」


うなずく進児。

ここまでオクテなのは性的知識が幼稚だったからだと理解した。
スーパーパーロット養成所じゃそんな事は教えないのが当たり前。



「…キスまでくらいはしてるんだろ?」

「あぁ。」

「ソレから先ってことか…」

「あぁ。」


リチャードは思案する。


   (言葉で説明してもな…)


彼はふっとTVの番組表を手にする。
ホテル内の有料番組がある。

   (コレ…見せれば…って刺激が強いか?)

ふうと溜息をついて進児を振り返る。


「…男と女のベッドの上でのことを知りたいってことだろう?」

「あぁ。どうしてあげればいいのか…知りたくてさ…」

腕を組んだリチャードはきっぱりという。

「僕から言える事は、"焦らない"と"怖がらせない"だ。
相手が嫌がることを無理強いしないってこともな。」

「…そうか。」

「あとは二人で努力する事だ。」

「ふーん、そうか…」

「…女性にとっては…個人差もあるらしいが痛いようだから…
無理は絶対厳禁だな。
あとは…避妊しろ。
って僕が言っても説得力ゼロか?」

「そうか…って、え?」

「お前…マリアン、孕ませたいか?」

「いや…それは…」

「だったらソコはしっかりしろ。男の責任だぞ。」

「ヴ…わかったよ。」


二人は少々ナイーブな話題だけに目をあわそうとしなかった。


「…リチャード。」

「ん?」

「その…彼女と初めてを迎えた時、大変だったのか?」


目を閉じて応えるリチャード。

「あぁ。ちょっとな…」

「そっか…。 ありがとう。リチャード。」

「構わんさ。一応、恋愛でも結婚でも先輩だからな。」

「すまん。これからも頼りにするかも…」

「いいさ。じゃ。」

部屋を出ようとするリチャードに声を掛ける。

「あ、リチャード。 ファリアさんに謝ってたって言っておいてくれよ。」

「何で?」

「新婚旅行中の夫を借りたんだからな。」

「それくらい気にしてないよ、僕の花嫁は。」

「そうか? …明日、ファリアさんにお礼するかな?」

「…必要ないよ。そんなことしたら彼女が困惑しちまうよ。」

「そっか…」

「それじゃ、おやすみ。」

「あぁ。ありがとう、リチャード。
ところでさ、コレって参考になるのか?」

彼がさっき見ていた有料番組表を指差す。

「ん、多少はな。参考だぞ、あくまで。」

「解ったよ。」

「じゃ…な。」




部屋を後にし、廊下を歩く。

   (進児のヤツ… あそこまで純情だったとはな…
    …まあ、僕も16,7の頃ってあんな感じだったか…?)




彼が部屋に戻ると彼女はベッドの上で新聞を読んでいた。


「おかえりなさい。リチャード。何だったの?」

ベッドに歩み寄り、彼女のそばに腰を下ろす。


「…昔の自分。」

「え?」

「…17の頃の自分と同じような悩み。」

「なぁに、ソレ?」

くすくすと微笑むファリアにはにかんで応える。

「男にしかわからない悩みさ。」

「ふーん…」


   (17の頃のリチャードって… あの頃?
    ってことは…アノ事なのかしら…??)



ナイーブな話題だけにしばらく沈黙する二人。



「ねぇ…リチャード。」

「ん?」

「あの…夏の日。
初めて私を求めてくれたあの日。
どんな想いだった?
…私は嬉しかったわ。
正直、辛かったし痛かったけど…でも嬉しかった。
だから今はステキな思い出…」



彼女の言葉を聞いて微笑む。


「僕も…そうだよ。
16の君を…初めてを僕に捧げてくれた。
嬉しかったよ。
心残りは…ちゃんと避妊してあげられなかった事。
それと君に苦痛を与えてしまった事。」

「え?」

思いがけない彼の言葉に顔を覗き込む。

「僕はあの時、嬉しくて舞い上がって君を気遣ってあげられなかった。…だから。」

沈む彼に抱きついて告げる。

「そんなコトない…。
確かに…痛かったけど…あなたの手で…女になれたこと…嬉しかった。」

「…ファリア…」

そっと白い頬に触れるリチャード。
唇を重ねると彼女の口の中へと舌を滑り込ませる。

「ん…」

おずおずと自分の舌に絡んでくるやわらかな彼女の舌。
自分の口の中へと引き入れたり押し返したりの繰り返し。

「ん…はぁ…」


唇の端から漏れ出る甘い溜息。
彼は彼女の唇の中で泳ぎまわる。
絡み合う唇の音が部屋に響く。
彼の手はそっと彼女の身体を横たえる。

「は…ぁん…」

うっとりとした瞳で彼を見上げる。

「やっぱりいつでも可愛いなぁ…」

嬉しそうに目を細め愛しい花嫁の恥態を見つめる。

「やん…」

毎日、同じような手順なのに彼女の反応が可愛くて可愛くてたまらない。

ハワイ初日の夜も激しく甘く融けていく―



To #28 「hawaii」
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(2005/7/21)





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