-26-   「virgin」



夕食をレストランで済ませたふたり…

部屋に戻るともう9時前。




ベッドルームに行くと彼女に尋ねる。

「…ファリア、君、先にフロ入るか?」

「え?」

「それとも…一緒に入るか?」

笑顔で問われ笑顔で返す。

「…後でいいわ。」

「…そう?」

少々淋しげな顔してバスルームへと消えて行く彼…







なんとなく窓の外を見つめていた。
夜空が広がり、窓に自分の姿が映る。



しばらくして彼がバスローブ一枚で出てきた。


「交代…ね。」

「あぁ。」


彼と入れ違いにバスルームへと姿を消す。



彼女のほうが長風呂と言う事もあってベッドの上で少々まどろんでしまう彼。




ファリアは意を決して、今日彼が買ってくれたベビードールを着てベッドルームへと出る。

ベッドの上の彼を見ると…パジャマを着て眠っていた。


   (ちょっと… ウソでしょ?! せっかく着たのに…)


ぷうとひとりでむくれていたが昨夜の彼の言葉を思い出す。

   (あ… そういえば、3日間。抱いてもらうの…禁止…なんだっけ。 
    じゃ、これでいいいんだわ。)


ほっと胸をなでおろし、普通のキャミソールのナイティに着替える。



「おやすみなさい…リチャード。 いい夢を…」

そう囁いて彼女は夫の腕枕へと入っていく―





   ***



ふっと彼が目覚める。


   (あれ…僕、眠っちゃったのか?)


ぬくもりを感じて腕の中で眠る彼女を見ると、胸元が見えるキャミソールのナイティを着ていた。
幸せそうな顔して眠っているのを見て、自分も心が温かくなる。

「おやすみ… 僕の夢、見てくれよ…」

そっと黒髪に頬寄せて、再び瞳を閉じた―







   ***



朝、目覚ましのアラームで目覚めるふたり。


彼の手がボタンを押して止める。

「おはよ、ファリア。」

「…おはよう。リチャード。   って何で今朝は目覚まし?」

「あぁ。行くところがあるから早めにって…
ちょっと早かったな…(汗)」

ふたりして時計を見ると"6:32"

「設定間違えたか…??」



くすくすと彼女は腕の中で笑う。

「じゃ、いいんじゃないの?もう少しこのままで。」

「…そうだな。じゃ、おはようのキス。」

そう言ってちゅっとわざと音を立てて唇にキスするリチャード。


「えぇ、おはよう。My Darling!」

キスのお返しをする彼女。

「…んッ」


軽いキスのつもりだったのに気づけばディープキス。


「はん…」


彼女の唇の端から甘い声。



   (やっぱり可愛いな…朝でも…)


白い首筋を舌でなぞり、耳元にくちづける。
手を掴み、指を絡ませるリチャード。握り返してくる彼女に嬉しくなる。


「あん…リチャード…」

そっとキャミソールの裾をたくし上げる。
潤む瞳で彼を見上げる。

彼女の両手も彼のパジャマのボタンを外していく。
ちょっと嬉しい彼がいた。
逞しい筋肉質な白い胸板に触れる細い指。


「あ…」


彼も反応する。ふっと視線が合うと彼の瞳が色っぽいと感じた…




朝―――ふたりはお互いを求めて愛し合う…











   ***


時計を見るともう7:35を示していた。

彼の腕の中で顔を上げて問いかける。


「ねぇ…今日の予定って何?」

「ん…まだ秘密。」

「何なの〜? 着ていく服選ばなきゃ…」

「いいよ、何でも。似合ってれば。」

「そういう問題じゃないと思うけど?」

彼女は身を起こして彼の目を見る。
冗談ではない事が解る。

「じゃ、昨日買った服にすれば?」

「え?どれの事?」

昨日の服と言っても結構買ったのでどれのことか解らない。

彼は思い起こして告げる。

「ん〜…  じゃ、黒のスカートに淡いピンクの上着に白のカットソーの…」

そう言われてやっと理解した。







   ***




朝食を済ませたふたりは車に乗り込む。


「目的地まで、どれくらいかかるの?」

「1時間…かかるかかからないかってトコか…」

「そう…。」


発進する車のシートに身を沈めるファリア。


   (助手席は心地よくて好き…
    だって彼の横顔見れるし…)




しばらくして行き先が解る。


「あ…!? ひょっとして、カリフォルニアディズニー??」

笑顔で答えるリチャード。

「当たり。 行った事ないしな…君も僕も行った事ないし。」

「そうね…わざわざここまで…めったに来ないものね。
ありがとう…リチャード…」

翠の目を細めて笑顔になる。

「新婚旅行だからな…二人の思い出も作りたいし…
リィが大きくなったら…連れてきてやろうな…」

「えぇ。」






   ***



リチャードは園内の地図を一見して廻るルートを決めた。




エントランスから逆時計回りに廻る。

キング・アーサー・カルーセルで無邪気な笑顔を見せる彼女を見つめていた。

主なライドは乗りつくす二人。

終盤にホーンデット・マンション。


「きゃ…」

彼にしがみつく彼女の姿が可愛くてしょうがない。
暗闇に乗じて軽くキスするリチャード。

「ん、もう…」

「はは…」


外の明るさに安心する。

「作り物ってわかってるんだけど…ちょっと苦手だわ。」

「じゃ、も一度入るか?」

意地悪っぽくいう彼にすねる。

「もう…リチャードったら。」

「はは…」

明るい笑顔で笑われると何もいえない。




最後はインディ・ジョーンズのライド。
二人が乗り込むのは10数人乗れるジープ型。
偶然、ファリアは一番前の一番右端。
彼女の前にはジープなのでハンドルがある。
喜ぶ彼女を見て彼は微笑んでいた。

発進し、途中に大きな石の玉が転がってくる映像があった時、
つい避けようとしてしまった彼女は前のハンドルで軽くおでこを打ってしまう。

「痛〜。」

「何やってんの?」

「だってぇ…」

「ホント君は意外なところで意外な事してくれるなぁ。」




ライドを降りてから明るいところで見ると少し赤い跡。
思わず噴出してしまう。

「ぷッ…」

「ひっどーい!!」

むくれる彼女に笑いながら告げる。

「ごめんごめん… あんまり可愛いからさ…」




「ねぇ、行って見たいところがあるんだけど…」

「なんだ」

「コレ。」

そう言って案内のパンフを見ると"あなたもお姫様"

「ここでキャラクターの衣装貸してくれるんですって。
それで記念撮影。」

「へぇ…で、君は何になりたいわけ?}

「う…ん、シンデレラ、オーロラ姫、白雪姫くらいかしら?」


彼女に言われて記憶を辿る。

「…シンデレラは…初等部の時、白雪姫は中等部をやってるからなぁ…
人魚姫、どう?」

「どう…って。 じゃあなたはエリック王子?
ちょっと…シャツとズボンだけじゃないの。
らしくない…」

ちょっとご不満の彼女に再び問う。

「じゃ、何がいい?」

「…やっぱり白雪姫かしら…?}

「…。」

   (ボクにとっては…ものすごい思い出のものなんだけどな…)

あの頃の想いが蘇る気がした―

不意に黙る彼に問いかける。

「ね、リチャード?」

「あ、あぁ、じゃ…白雪姫でいいんじゃないか?」

「それで決まりね。行きましょ♪」




二人揃って白雪姫と王子様に。


記念撮影は3回シャッターを切ってくれる。
思わず3度目で彼はキスした。


上がってきたのを見るとちゃんと映っているキスシーン。


「もう… 突然だし、驚いた顔してる…私。」

「仕方ないさ。コレも思い出。いいじゃないか。」

口では少し怒っているが内心嬉しい彼女。



「あ、早く出よう。パレード始まるよ。」


彼に手を引かれ外に出ると3字のパレードが始まる。
無邪気に喜ぶ彼女を見ていると普通に19歳の乙女に見える。
とても人妻で1歳半の子供の母親には見えない。
彼はパレードより彼女を写真に収めていた―





夕方になるとカップルが増えた気がする。

「ファリア…寒くないか?」

「ううん。平気よ。」

ふたりはあらかた廻ったので、のんびりカフェにいた。

「あとは7時のパレードだ。」

「えぇ。時間中途半端だし…お土産見に行っていい?」

「あぁ。そうだな。」


エントランス近くのショップに入る。

「えっと…お父様二人とお爺様二人…それにおばあさま二人とお母様。
アリステアとリィ…ね。
ねぇ、何がイイかしら?」

「任せるよ。」

「もう!いいわよ。解ったわよ。」


彼はショップの外に出る。
人が多くて少々、嫌だった。

彼女は隣接している3件を見て廻る。

「これ2個と…コレ… はおばあさまに…」


あらかた選び終わると彼を呼ぶ。

「ね、こっちきて。」

「もう終わった?」

「ちょっと背貸して。」

「ん?」

背中を向ける彼にシャツを当てる。


「あ。やっぱりこっちのサイズね。」

「なんなんだ? ってコレ?」

「あなたにって…可愛すぎ?」

彼女が手にしていたのはキャラクターが全面にプリントされた半そでシャツ。

「ボクに…かい?」

「やっぱり嫌?」

「もうちょっと…他にないの?」

「じゃ、コレ。」

白のYシャツだが胸ポケットにやはりキャラクター。

「まぁこれくらいなら。」

「そう♪」

「で、君。自分には?」

「あ、忘れてた。でもさっきのところでスノーグローブ買ったし…」

「僕が選んであげるよ。」

「え?」




服のところを見て彼は持ってきた。

「じゃ、これな。」

お揃いのシャツ。

「…って、ペアルックって流行らないんじゃ…(汗)」

「んじゃ、これは?」

次のは可愛いエプロンで胸にキャラクター。

「いいわ。これなら。
国に帰ったら、何か料理するわね。」

「OK。」




  ***




夜のパレードを見た後、中のレストランで夕食を取る。
9時の閉園ギリギリまでいた。

帰りの車の中、しばらくすると寝入ってしまう彼女。


   (まぁ…今日はたいぶ楽しくはしゃいでいたしな…)


車がホテルに戻ると彼はベルボーイを呼ぶ。

「あぁ、すまないが車を頼むよ。
それに後部座席の荷物を持ってきてくれないか?」

「かしこまりました。」

ひとりのベルボーイが車を廻し、もうひとりが荷物を持ってくる。
彼は眠る彼女を抱き上げる。


部屋までベルボーイは付いてきてくれた。


「お荷物、こちらでよろしいですか?」

リビングのソファに置こうとしていた。

「あぁ、すまんな。ご苦労様。」

「はい。失礼します。」


リチャードは彼女をベッドルームに運び、ベッドに下ろす。
下ろした途端目が覚める。

「…ん?リチャード? 」

「あぁ、起きたか。」

ふっと自分がいる場所を認識する。

「あら?部屋?」

「そう。」

「ごめんなさい。…すっかり寝入っちゃったのね…」

「構わんさ。」





「…リチャード。申し訳ないけど、先にお風呂入っちゃってくれるかしら?
私、その間に荷物片付けるから。」

「え?」

「明日の午前中に移動でしょ?
スーツケースに詰めておかなきゃ。」

「あぁ、そうだね。すまないな。」

「いいの。コレも妻の務めよ♪」

「それじゃ、先に入るよ。」

「えぇ。」


彼をバスルームに見送ったあと、手早く手際よくスーツケースに詰めていく。

   (んー… 全部収まらないわね…(汗) 
    仕方ないわ、入らないお土産とか…国に送りましょ…)



フロントに頼んで発送用のダンボールを頼み、すぐに詰めて送る。


やってきたホテルマンに頼む。

「お願いしますね。」

「かしこまりました。」



リチャードはベッドルームに彼女の姿がないので探しにきた。

玄関ポーチにいた彼女。

「ファリア?」

「あぁ、もう上がったの?」

「何してたんだ?」

「お土産とか…入らない荷物を国に送ったの…。」

「あぁ。」

タオル一枚巻いただけの夫に告げる。

「私も入るわね。」






To #27 「pinkish」
__________________________________________________
(2005/7/20)

*あとがき*
サブタイトルの「virgin」は処女…というより「乙女」という意味で…

ちなみにカリフォルニアディ●ニーは半分リアル、半分捏造です(笑)




BACK To #25


To Love Sick