-25- 「shopping」
ランチをホテル内のレストランで済ませ、ふたりはロスのショッピングモールへ。
「ほら…コレなんか似合うと思うよ…」
「やっぱり花柄? 可愛すぎない??」
くすくすと笑う彼女の顔を見て嬉しくなるリチャード。
「君はどういうのがいい?」
「こっちかしら…?」
彼女が選んだ服を見て目を細める。
「君が選ぶのって結構、シックだね。」
「そう?」
「やっぱりこっちだよ。」
「解ったわ。あなたに選んでもらうって言うことだったんだものね。」
彼女は笑顔を彼に向ける。
「そうそう。」
彼に選んだワンピースを包んでもらっている間、店内を見て回る。
「あら…コレ可愛い♪」
淡いベビーピンクのキャミソールワンピースとレースアップのミュール。
乙女ちっく全開な可愛さが気に入る。
(こういうのも結構好き…
でも幼く見えるかしら…?)
少し離れたところにいた彼が近づく。
「…ファリア?」
「なぁに?」
「ソレ…気に入ったのかい?」
彼女の視線の先にある乙女な服を見る。
「…えぇ。」
「…こっちも似合うだろうな…
あぁ、こっちも頼むよ。」
駆け寄ってくる店員がすぐに応対する。
「いいの?」
「勿論さ。 愛する妻に服をプレゼントできるのは夫の僕だけだからな。」
「ありがとう…リチャード…」
彼の左腕に笑顔で抱きつく。
嬉しさを隠し切れない彼は囁く。
「君が喜んでくれるなら…いくらでも…」
「じゃ、毎日あなたの選んでくれた服を着なきゃならなくなるわね。」
「それでもいいかもな♪」
新婚の甘い二人に周りはただ圧倒されるだけだった。
ショッピングモールを歩くファリアはふと思う。
(ごめんね…リィ… この旅の間だけ… ママを乙女にさせて…
今だけは… 母親である事を忘れさせてね…)
***
何軒も廻ったので彼の手にはいくつもの紙袋。
通りかかった紳士服のショーウィンドウの前で立ち止まるファリア。
「あら、コレ…素敵。」
ペパーミントグリーンのシャツとダークグレイのスーツ。
(でも…スーツって普通オーダーメイドよね…
彼に似合いそうだけど… 国に帰ってからしか買えないわね。
…残念。)
立ち止まったままの彼女に気づき戻ってくる彼。
「ファリア、どうしたの?」
「あ、ごめんなさい。このスーツ…
あなたに似合いそうだと思ったけど…オーダーメイドよね、こういうのって…」
彼女が見上げるショーウィンドウの中に視線を向ける。
「いや…大丈夫じゃないか。コレくらいなら。」
「え?」
「僕の場合、半分オーダー、半分既製品だからな。」
「そうなの?知らなかったわ…」
「仕事が仕事だからね…
諜報部員って結構、外に出て動くから上等すぎるのは向かないよ。
ビスマルクのときはプロテクトギアだったから、ほとんど着なかったけど。」
「そうだったの… じゃ、私が選んでも…大丈夫なのね?」
「あぁ。」
「私…紳士服って祖父や父がオーダーしてたって位しか知らない…」
「それが普通だろう?」
「でも私、あなたのサイズ、知りたい!
ねぇ…入ってもいいでしょ?」
「君が選んでくれるって言うのならね。」
「えぇ、もちろん♪」
ふたりは笑顔で店に入っていく―
***
気づけば3時を過ぎていた。
近くのオープンカフェでお茶するふたり。
「リチャード…ありがとう。」
「ん?」
「私を…元気付けようとしてくれたんでしょ?
ありがとう…」
やわらかな笑顔で
感謝を示す彼女の髪をそっと撫でる。
「…君の…心の傷を癒せるのなら僕は何だってする。
だから…気にするな。」
「…あ…」
「君の笑顔が見たい…
そういうことだ。」
「私もあなたが微笑んでくれるなら…
喜んでくれるのなら…何でもするわ。」
彼の手を取り、自分の頬に当てる。
「そうか…」
彼も嬉しげに瞳を閉じる。
そっと抱き寄せ軽くくちづけた。
しばらく沈黙するふたりは笑顔…
「…もう一軒、付き合ってくれ。」
「え?えぇ…」
*
(何処行くつもりなのかしら…)
彼の手に引かれ行った先には…彼女の予想外の店。
(え!? ちょっと… !!)
彼女の困惑も当然だった。
何せそこはランジェリーショップ。
「ちょっとリチャード!? 何で どうして??」
「何でもするって言っただろう?
選ばせてくれないか?」
「冗談でしょう??」
顔を赤らめ思わず叫ぶ。
「いや本気。 君が一緒に行かないって言うのなら
僕一人で行って来るよ。」
「平気なの??」
「…少々目のやり場に困るけど…
君のためなら…何でもするさ。
前に君に用意したの…知ってるだろう?」
「え?あ…」
(確かに…あの邸にパジャマとベビードール…あったけど…)
ちょっと落ち着いた声で問いかける。
「ねぇ、わざわざロンドンで店まで行った訳?」
「いや、あれは…ネットで…」
「!!!!」
言葉につまり、何も言えない。
「なぁ、入らないか? 逆にふたりで店の前にいるほうがよっぽど…」
(ど、どうしようかしら… 本気みたいだし… リチャードったら…(汗))
とりあえず店に入るふたり。
でもやっぱり乙女の彼女はかわいいものを見てつい欲しくなる。
「あ、コレ可愛い♪」
フリルたっぷりのブラ&ショーツや可愛い冬用のネグリジェを見ていた。
「そうだわ… マリアンとジョーンさんにも…贈ってあげましょ…ベビードール♪
"おかげさまで"ってカード付けといてあようかしら…」
ふたりの雰囲気に合いそうなものを物色する。
「ファリア。」
「なぁに?」
「コレ、どうだい?」
彼が持ってきたのはシースルーの黒のベビードール。
思わず引いてしまう。
「これ…着る意味ある?」
「…一応。」
「あ、でもこれジョーンさんに似合いそう。」
「え?」
「うん、結婚祝いのおまけに付けておきましょ。」
ひとりで勝手に納得する彼女に戸惑う。
「ちょっと…せっかく君に…」
「…どうしても?」
彼に哀願されてはどうしようもなかった。
「解ったわ…。 じゃ、ジョーンさんとおそろいね♪
あ、じゃ…マリアンにもコレ。」
手にしていたものを見てリチャードは一言。
「マリアンにコレか? 進児が鼻血吹くぞ、きっと。」
「…あなたはそうじゃないの…?」
「どう思う?」
彼の目は少し笑っていた。
意図が読めない。
「まぁ、いいわ。…これ3人分ね。」
もう彼女は開き直っていた。
夫である彼が望むならしょうがない。
またもや荷物を増やしてしまった―
ホテルに戻ると荷物を片付ける。
彼はリビングで新聞を読んでいた。
ベッドルームのクローゼットの前で溜息をついていた。
「はぁ…」
彼が選んでくれたベビードールを手にしていた。
前のは透けていなかっただけに今回のには少々びっくりしている。
(私だけじゃなくて… ジョーンとマリアンにもあげるから…あれだけど(汗)
今夜… やっぱり着るべきなのかしらね…)
今はとりあえずクローゼットの引き出しに入れておく。
(ホント… 何考えてるのか…解んないわ、リチャードって…
て、いうか男の人って…)
リビングからノックする音。
「はい?」
「ファリア…すまないが、お茶を淹れてくれないか?」
「えぇ。」
バーカウンターの中で紅茶の缶を手に取り
茶葉をティポットに入れて、お湯を注ぐ。
ティカップに注いで、彼の前に運んでいく。
新聞を読んでる横顔は真剣な眼差し。
(やっぱりこうして見ると…
凛々しくて…精悍で本当に昔読んだ騎士様そのものって感じよね…)
To #26 「virgin」
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(2005/7/7)
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