-22-   「honeymoon 〜4 〜」



珍しく二人は静かにベッドにいた。


  (一日中、睦みあっていたからな… こんな夜もあるさ…)


リチャードは殊勝な気持ちで彼女に腕枕をしていた。
腕の中の彼女のぬくもりと重さが心地いい。


  (久々にパジャマを着てるな…)


しばらく目を閉じていると眠りに落ちていく。




ファリアは逆に眠れずにいた。

  (なんだか…話したら、随分すっきりした…。
   あの時の想いを彼、解ってくれた…  嬉しい…
   やっぱりあなたは私の一番の理解者よ…
   リチャード…愛してるわ…   )


眠る彼の唇に口づける。

「…ん」


起きてしまうかと思ったら、再び眠ってしまう。

  (よかった… 。  
   それにしても…眠っている時の彼って、少年のときと同じ顔してる。
   普段あれだけ凛々しいのに…
   …こんな無防備な顔を知っているの私くらいなのかしら…?)



すっと通った鼻筋、凛々しい眉、切れ長の目、薄くもなく厚くもない綺麗な唇。

  (やっぱりキレイ… リチャードって… メアリ夫人に似てるわね、やっぱり。)





彼女は不意に喉に渇きを覚え、ベッドを出る。


リビングルームのバーカウンターの奥の冷蔵庫を開けて、
ミネラルウォーターのボトルを手に取り、じっと見ていた。


  (なんだか少し飲みたい気分…)


氷とミネラルウォーターのボトル、ウィスキーを棚から出してきて、
グラスに水割りを作り出す。

「ん。完成〜♪」

両手でグラスを持ちこくこくと飲み出す。


「ん〜 やっぱりスコッチはおいし〜☆」


子供の頃、何度かパーシヴァルの領地内のスコッチウィスキーの醸造所へ
連れて行ってもらったことがある。
あの芳醇な香りが好きだった。
子供だったから香りしか楽しませてもらえなかった事を思い出す。

もう1杯作り出す。

カウンターの止まり木に腰掛け、カウンターでひとり飲んでいる。

ほんのり頬がピンクに染まっていた―









リチャードが目覚めるといるはずの彼女がいないことに気づく。

「あれ?」


バスルームを覗いてもいない。

リビングに行くと… バーカウンターで突っ伏して寝ているのを見つけた。


「何でこんなところで…?」

近づくとふうんとウィスキーの香り。

「え?酒臭い??」


ふと彼女の傍らを見るとバランタインのボトルが1/3くらい減っていた。


「本当か??」


顔を見ると妙に色っぽい薔薇色の頬の彼女が気持ちよさそうに眠ったまま。




「たまに突飛な事をしてくれるな…僕の姫君は…」


彼女を抱き上げ、ベッドルームへと。
そっと起こさないようにベッドに下ろす。

「ううん…」

「こら、明日二日酔いでも知らないぞ。まったく…」

笑いながら薔薇色の頬をつつくリチャード。
薄く開いた唇が扇情的に映る。

まつげが揺れて目が開いた。

「おや…目が覚めたか? 」

「ん…リチャード…?   …ノド渇いた…お水…」

ベッドにいると理解していなかったらしく、思い切り顔からこけた。
カーペットの上にへたり込む。
そんな彼女を心配する彼。

「大丈夫か? まったく… いつ酒なんて覚えた… バー時代か?」

ベッドの上からカーペットの上にいる彼女を覗き込む。

「悪い?」

顔を上げた彼女の目はすわっていた。
一瞬、たじろぐ。

「だって…だって…淋しかったんだもん!! あなたいなくて…どうしようもなくて…
リチャードが恋しくて…でも、逢えなくて。逢えないって思ってた。
他の男に抱かれるのだけはぜーったいイヤ!! 
だから飲んでごまかしてたのよ…
悪い?私が悪いの!?」

わーっと座り込み泣き出してしまう。


「あぁ。ごめん。悪かったよ、僕が悪かった…」

  (ファリア…泣き上戸か…??)


ひっくひっくとしゃくりながら上目遣いで彼を見つめる。

「だったら抱いて!!」

「へ?」

「だって…淋しかったんだもん!! いいでしょ?」

ベッドに上がり、リチャードにのしかかりキスしてきた。

「ちょっと…ファリ…」


スコッチの味がするキス。
彼も酒に弱いほうではないが、その味に酔いそうになる。
いつもと違う積極的な彼女に戸惑う。

「ファ…リア?」

そんな彼に構わず、彼女はパジャマの上から彼自身に触れる。

「う…あ…ッ!」

普段の彼なら油断してもこうはならない。
ただ相手が彼女なだけに抵抗できなかった。

それにさっきの発言からすると2年間…ずっとひとりで…出産してリィを産んで、
辛くて淋しかったのだろうと思うと酒くらいで済んでよかったのかと思えた。

   (他の男と結婚していたら…僕は奪っていっただろうな…)



彼女のやや強引な行動に驚きながら、抵抗らしき抵抗を見せない。
彼のパジャマのズボンを引き下ろす。
今までフェラチオもさせていなかっただけに強烈だった。
半分屹立しかけている彼自身に手を添える。

「…う…」

リチャードも初めてのことだけに戸惑いを覚える。
ぎこちないが彼女に触れられていると思うだけで、どんどん熱を持ち始めた。
完全に天に向かった彼の男性に唇を寄せ始める。

「ファリ…ア、止めて…おけ…」

そっと優しくキスしてきた。
それだけで彼の唇から甘い溜息が漏れる。

「ふッ…あ…」

愛している彼女に初めてされるぎこちない動きでも十分すぎた。
ぶるりと身を震わせたかと思うと白濁した精が放物線を描いていく。

「うあッ…!!」

それでもまだ力を失わない。
大きく呼吸をしていた彼を見つめるうっとりとしたサファイアの瞳。
彼に跨り、自ら腰を下ろす。

「はぁああん!ッ!」

彼も突然の快感で震える。

「く…」

彼女に愛撫していないのに十分潤っていた蜜壺はとろとろに溶けていて気持ちいい。


「う…あ。ファリアッ!!」

「きゃッ!?」

立場が逆転した。
彼がのしかかり細腰を捕らえる。
激しく打ち付けあう肌の音と喘ぎ声が響く。


 
「はッ…あぁん…リチャード…ぉ!!」

「ファリア…ッ!!」


あっけなく二人は達してしまう。




彼が呼吸を荒げている横で彼女は満足げな顔で眠り始めていた。


やっと落ち着いた彼は眠る彼女を覗き込む。


「ファリア…君、意外なことしてくれるな…全く飽きないよ…」



まだ元気な己をどうするか思案していた笑顔の彼―












   ***






翌朝ー

ファリアが目覚めると何故か身も心も軽い。
伸びをして身を起こす。

「んーッ!! 」
 
  (なんか…何年もこんな風に起きてなかった気がするわ…)

横に彼がいない。時計を見るとAM9:21。

  (もう起きちゃっているの? 私も起きなきゃ…って、え?あれ?
   私…着ていたよね?)

白い胸元やお腹にキスマークが。
よく見るといつもより濃い気がした。

  (え…知らないうちに彼に抱かれたのかしら…? そうとしか思えないわね…)



記憶の糸を辿るが、昨晩抱かれた記憶がない。

リビングを繋ぐドアが開いて彼が入ってきた。

「あ、やっと起きたか。おはよう。気分は?」

「…え? すっきり爽快よ。どうして?」

「昨夜のこと…覚えてるか?」

「…え?」

胸元を上掛けで覆い、何かしたか思い出そうとする。

「確か…二人でベッドにいて、リチャードが先に眠っちゃって…
ノド渇いたから、水を飲もうとして…寝酒にって少しだけスコッチ飲んで…」

「それから先は?」

「え?眠っちゃったんじゃないの?」

「…。覚えてない…のか? 僕に何したか?」

おずおずと尋ねる。

「何か…したの?私…」

一瞬、彼は悩んだ。

  (正直に言ったら、きっと恥ずかしがるだろうな…)

「いや…それが、君にウィスキーの味のキスされて…それで僕の火がついて…」

咄嗟に出た言葉。

「だから… 何も着ていなくて、キスマークが増えているの?」

「あぁ。すまなかった。」

彼の言葉に納得した。

「そうだったの…ごめんなさい。」

「いいさ。気にするな…」


  (本当のこと…言えるわけないさ…)







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(2005/7/6)



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