-20-   「honeymoon 〜2〜」



―翌朝

ファリアが目覚めると薄暗い。
やっと見慣れてきた白い胸板が目の前。

「や、起きたか。おはよう。」

「えぇ、おはよう。…って、今何時?」

「えっと…9時まわったくらい。」

彼がベッドサイドの時計を見て言う。

「え?もうそんな時間?」

「あぁ。…どうやら今日は雨のようだね。」

「雨?」

薄いカーテンの向こうに雨空が広がっていた。

「あ…だから暗かったの?」

「そ。」

リチャードは起き上がり、ガウンを羽織ってリビングの先の玄関ポーチに向かう。
新聞を手に戻ってくる。

「ん…今日は一日雨だな。 ここにいるか…」

「…そうね。」

「とりあえず服着て…朝食に行くか。」

「…えぇ。」



二人は幸せな笑顔で腕を組み、朝食のビュッフェへ。

周りにも新婚カップルがいるが、リチャードたちが一番幸せそうに見えた―








部屋に戻ると彼は今日の分の新聞を読み始める。
こうなったら1時間は動かない。

ファリアはドレッサーの前で髪を梳いていた。

「もう…リチャードったら…新婚旅行中くらい、新聞やめたっていいのに…」

鏡に向かって呟く。



ピンポンと玄関ドアのベルが響く。
これも妻の役目と応対に出る。

「はい?」

「お届け物でございます。レディ・ランスロット。」

「そう、ありがとう。」

手渡される箱。
見た目よりもかなり軽い。


   (どなたから…?)


伝票を見ると…

   "To. Lady・Faria=Luncelot
         From.Miss・ Marianne=Levert&Miss・Joan=Clementine"


   (え…マリアンとジョーンさんから…?私に…なんでしょう…???)



ベッドの上で箱を開ける。
思わずあっと叫んでしまう。


中身は…ベビーピンクのシースルーのベビードールとランジェリー。


   (何考えてるのよ…?! マリアンとジョーンさん…(汗))


はらりとメッセージカードが落ちる。


   (何…?)


見ると思わず噴出す。


  "早く2人目の赤ちゃん見せてね☆ マリアン&ジョーン"


  (もう… こんなの着なくても…十分よ…)



でも手に取るとシルクのさらりとした気持ちのいい肌触り。


  (まぁ…プレゼントだし…着てみる?  なんだか半分悪戯の気もするけど…)



新聞を読んでいるから彼が当分こっちに来ないのは解っている。


  (試着してみましょ…)


着ていたワンピースとランジェリーを脱いで、スケスケのそれを着てみた。
クローゼットの扉の裏の姿見に映してみる。
  
  (やだ… 丸見えじゃない…(汗)  着ている意味ないわよコレ…
   それにこのランジェリーも…)



ちょっと恥じらいが大きすぎて当分、彼の前では着れないと思う。

「はぁ…」

溜息をついて、それを脱ごうとした時、リビングと繋がるドアが開く音。
慌ててクローゼットの中に身を隠してしまう。


「ファリア…すまないお茶を淹れて…って、あれ?」

自分がいないことに彼が気づく。

「出掛けたはずないし…バスルームか…?」


歩き出した彼の目に留まったのはベッドの上の置かれた箱と着ていたワンピース。

「ん…?  さっき来た…荷物…か? それに服?」


  (バスルームにいるのか?)



ドアをノックするが返事がない。
倒れているのかと思い開けてみても姿がない。


クローゼットの中で彼女は慌てていた。


  (どうしよう…あ!! 服着ればいいのよ!)




彼は推理した。
箱の伝票と彼女の服。


  (まさかあの二人から服でもプレゼント…か? とすると…)



予告もなしにクローゼットの扉を開けるリチャード。

「やっぱりここか…って、え!?!?」


目に映る彼女の姿に釘付けになる。

顔を真っ赤にしているスケスケのベビーピンクのベビードール姿のファリア。


「やッ!! 開けないでっ!!」

慌てて扉を閉めようとするが彼の力のほうが当然勝っている。
笑顔の彼が嬉しそうに見つめる。

「何やってるんだ…? クローゼットの中で…」

「もう!やだ! 見ないで!!」

恥ずかしくて手で胸元を覆う。

「可愛いじゃないか…マリアンたちからのプレゼントなんだろ?」

「そう…だけど。見ないで!!」

「嫌だ。
せっかくなんだ、もっと見せてくれよ。 前に僕が贈ったのより可愛いじゃないか?」

「もう!!  …やだっ!!」


恥ずかしくて閉じこもりそうな彼女をクローゼットの中から両腕を掴んで引き出す。
全身をピンクに染めたファリアをじっと見つめる。

「へぇ… マリアンとジョーンさん、イイ趣味してるね。」

「もういいでしょ…服着るから…」

彼の腕から逃れベッドに置いた服に近づこうとすると腕を掴まれる。

「このメッセージカードの意味…解ってる?」

彼の手には二人からのカード。


「解ってる…。けどまだ、二人目はいらないでしょ?」

「いらないわけじゃないけど… もうちょっと後がいいな。」

「じゃあ、いいでしょ?  服着るんだから…」





「…ファリア。」

リチャードはベッドの上に引き倒し、両手を掴んで覆いかぶさる。

「きゃ…」

思わず自分の格好が恥ずかしくて顔を背けた。
彼の目に映る姿は誘っているように映る。

「…僕に抱かれるの…嫌か?」

「…そんなワケないでしょ?」

まだ顔を背けたまま応えた。

「…じゃ、抱かれるの好きか…?」

「あなた…なら…」

消え入りそうな可愛い声で応える。
透けて見える可愛い乳首が反応している事に気づく。

「君の反応…いつも可愛いな…」

そっと薄い布越しに乳首を含む。

「はぁ…ん…」

布越しでいつもと感触が違う感じがする。
ざわざわと肌がざわめき、身体の奥が熱くなっていくのがわかる。

「や…ぁん…」

もじもじと白い太ももをよじらせる。
彼は掴んでいた手首を離し、三角地帯へと指先を這わせた。

「はんッ!!」

すでに熱く潤み刺激を求めている。

「君は時々、素直じゃないな…」

「あふッッ!!」

指先で撫でるだけでとろとろと溢れる蜜。
背を仰け反らせぴくぴくと震える身体。

リチャードは服を脱ぎ捨てる。
まどろっこしくなって彼女のベビードールも奪ってしまう。

「僕にとっては…君の素肌が一番好きだな…」

「あん…リチャード…」


熱く求められ昇りつめる身体―



   ***



リチャードは片膝を立て、それを彼女の背もたれにして座らせた。
ファリアが恥ずかしそうにするので上掛けを纏わせる。


「もう…そんなに照れることないだろう?夫婦になって1週間目だよ?」

「だって…なんだか…」

「まぁ、そこが君の可愛いとこでもあるんだけど…」

恥ずかしげに彼の肩に顔を埋める。
彼の指先は黒髪の頭を撫でていた。

「僕の花嫁。僕の…ファリア。ずっとこうしていたいよ…二人だけで…」

「あ…」

優しく髪と背を撫でられそれだけで嬉しくなり心ときめく。

「私…私もよ。私の…リチャード…。こうしていられるなんて夢みたいよ…」

優しく抱き合う二人。 唇を寄せようとすると…  ぐぅ〜…

そのお腹の音に驚く二人。

「え…リチャード? 私じゃなくて…?」

「ごめん。さすがに空腹には勝てないなぁ…君は空いてないか…?」

「私も今、鳴っちゃってた。あなたの音でかき消されたわ。」

「はは…しょううがないなぁ。 夫婦だからって同じタイミングで鳴らなくても…」

「ルームサービスか…食べに行くかよね?」

「…たまには部屋の外に出よう。な。」

「えぇ。」


二人は服を着てラウンジへ行く。
すでに午後2時を回ってた。

ギャルソンが出迎える。

「喫茶でよろしゅうございますか?」

「いや…出来れば食事を。」

「かしこまりました。」

二人は結構空腹だったことに気付く。
単品で足りないだろうとコース料理。

食事を済ませると3時を過ぎていた。




部屋に戻ると彼は読み残していた新聞を手に取る。


「お茶でも…淹れるわね。」

「あぁ。」


ファリアはリビングの片隅にあるミニバーの横の水屋に行く。
ティポットに茶葉を入れ、保温ポットのお湯を注ぐ。
トレイにティカップを2客、それにティポットを乗せてテーブルへと運ぶ。
砂時計がさらさらと時を刻んでゆく。

ガラスのティポットの中の茶葉が揺らめいて色を濃くしていくのを見つめている。
その向こうに真剣な顔して新聞を読んでいる彼の横顔。

  (私…彼の横顔、好き…昔から…)


しばらくすると砂時計が終りを告げたのでティカップに注ぐ。
彼の前にコトリと置く。

「はい。お紅茶。」

「あぁ。」

彼女は自分で淹れた紅茶を口に運ぶ。
芳醇な香りを楽しんだ後、口に。

その間も彼を見つめていた。

やっと読み終えた彼は新聞をテーブルに置き、ティカップを手に取る。

「ん。いい香りだ。昔から君は淹れ方が上手いね。」

「でも、少し冷めちゃったわ…」

「いいさ。自分が悪いんだから。」


彼が飲み終えると席を立ち、彼の横に腰を下ろす。

「ね、いていい?」

「…ひょっとして、待っていたのか? 新聞読み終えるの。」

「…ちょっとね。」

「それならそうと早く言えば…」

「だってあなたの日課でしょ?昔からじゃない。
いいのよ。
…でもひとつだけわがまま言っていい?」

「何だい?」

何を言い出すのか気になって彼女の顔を覗き込む。

「せめて新婚旅行中は…全部やめてとは言わない。
減らせない? 新聞読むの。」

「いいよ。…新聞より君を抱きしめていたいからな。」

腰を抱き寄せた彼のエメラルドの瞳が優しく光る。

「でも…ずっと一緒じゃ…お互いのありがたみを忘れちゃいそうね。
やっぱりいいわ。読んで頂戴。」

「もう…どっちなんだ!?」

乙女ちっくなきまぐれに翻弄されるリチャード。

「うふふ…」

「ファリア?」

立ち上がり彼の手をすり抜けようとしたとき、脚がテーブルに当たる。

「きゃ!」

「!!」

バランスを崩し倒れそうになるので思わず手を引き抱き止めた。

「あ、ありがと、リチャード。」

「もう…君は…いつも目が離せないな。」

「あ…」

自分のお尻に当たる彼の腰。
ゆっくりと熱を帯びていくのが解る。

「…リチャード…?」


「さっきあれだけ抱いたのにな…
ファリア…抱いていい?」

「えぇ…あなたが望むなら…」

「嫌なら拒否してくれていい。」

「そんなこと…ないわ。」

彼女は一度彼の手から逃れ、手を引く。
その手を引き寄せ、身体を抱き上げる。

「きゃッ!!」




ベッドルームへと二人は向かう。


そっと優しくシーツの上に下ろす。
頬を撫で、甘い声で囁く。

「ずっと…恋してる…愛してるよ…」

「私も大好きよ…リチャード…」


瞳を閉じて始まりのキス。


また二人して恋の海へと溺れてゆく―――






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(2005/7/5)



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