-18-   「sin&punishment」



―次の日・11月4日…

彼女は眠っていたリィの頬にキスして、朝9:30には車に乗り込む。
ヒースロー空港まで車で約1時間弱。

アメリカ行きの飛行機に乗り込む新婚夫婦。

ファーストクラスの中でもスペシャルシート。
10時間強のフライトだけにのんびりと過ごさせたかったリチャードが手配した。
11:20の定刻に飛び立つ。


水平飛行になると運ばれるランチ。

ワインを選ぶリチャードの顔は嬉しそうだった。

しばらくすると機内の明かりが落とされる。
時差のことも考えて眠る人がほとんど。

彼は二人の間にあるアームレストをシートに押し込み、彼女を抱き寄せる。

穏やかな想いで寄り添う二人がいた―






ファーストクラス担当のキャビンアテンダント4人はバックルームで話していた。

「見た?」

「うん、見た。すっごくベタベタなのねぇ〜」

「あぁ、英国貴族のサー・ランスロット?」

「そうそう。」

「新婚旅行らしいのよね〜」

「シートで抱き合ってたわね。」

「確かまだ19歳なんでしょ?」

「あのままHしちゃったりして(笑)」

「それは無理でしょ。さすがに。」

「…わかんないわよ。たまにいるもんねぇ」

「それにしても…すごくベタ惚れってすぐ解っちゃうわ。」

「えぇ、見ているこっちが恥ずかくなっちゃうわね。」



無責任なことを言っていたキャビンアテンダントたち…



   ***


周りが寝静まった頃、彼の腕の中で彼女が小さく呻いていた。


「…ぅ…ん…ん…」

気付いたリチャードが声を掛ける。

「…ファリア?」

彼女の眉が苦悶に歪んでいた。
心配になって肩をそっと揺らす。
耳元で名を呼ぶ。

「ファリア…!? 」

「…ぇ…あ?」

「大丈夫か?怖い夢でも見たのか…?」

彼女は彼の問いに答えず、シートから立ち上がる。
小走りに後ろにある、電話室へと向かう。
慌ててロンドンの邸のナンバーを押していた。
彼は追いかけてその様子を見ている。


「あ…もしもし…私、ファリアです。 リィは…リィは泣いてない?大丈夫?」


その言葉でキャスリーン夫人に電話しているとわかった。


「そう…大丈夫なのね? えぇ、ごめんなさい。あの子の泣いている夢を見たものだから…
えぇ、ありがとう。それじゃ。」






リチャードの中で何かがキレた。
無言で彼女に近づく。
電話室を出ようとする彼女の前に立ちふさがる。

「リチャード…? ごめんなさい。私…」

謝る彼女の言葉に構わず、手を取って前のレストルームへ連れて入る。
少々狭いがかえって彼には好都合。

彼の瞳を見れば怒っているのが解る。

「ご…ごめんなさい。あなたの手を振り払って悪かったわ。
あの子が泣いている夢を…」

言葉を遮る様に無言で唇を奪う。

「…んッ!!」

あまりの激しさで怖くなり思わず彼の胸板を叩く。
抵抗されたことが面白くなくて、自分のネクタイを片手で外し その細い手首を縛り上げた。

「やぁ…ッ!! リチャード!!」

黙ったままの彼は服の上から胸のふくらみに指を沈める。

「やぁん…」

声が上がりそうになるが、キャビンアテンダントに聞かれると思い、こらえる。

「ん…んッ!」

思わぬところで求められ戸惑いを隠せない。
無理やり彼の手で導かれる官能の炎。
ワンピースの裾から中に彼の手が滑り込む。

器用に下着を奪われる。

「やぁ…ッ!んッ」

奥歯をかみ締め、声を抑える。

彼の指先が触れた先は熱く潤み、訪問を待ちわびていた。
顔を真っ赤にして強く瞳を閉じ、声をこらえている様は一気に奮い立つ。
彼は一思いに剛直を突き立てた。
夫の動きに翻弄されるがままになっていた…

「はん…あぁ…」


身体は彼の熱の塊を受け、喜びにのたうっていた…




   *

彼の腕の中で放心状態の妻。
リチャードは乱した服を調え、彼女を小脇に抱えてレストルームを出る。
傍目に見れば気分がすぐれなくなった新妻を介抱した夫に見えていた。



  (彼を怒らせちゃったから…  罰…なのよ…)


思わず涙するファリア。




シートに戻るとリチャードはさっきまでと同じようにその腕に抱いていた。


しばらくして眠りに落ちていく彼女を見つめている彼の心の中に妙な達成感と罪悪感が生まれていた―


   (愛しているのに… 僕は…???)








**************************



ロスに到着するとすでにホテルの車が迎えに来ていた。


ビルたちの式は11日。
11日の午前にラスベガスに行くまでの約1週間ほどの滞在。

部屋は勿論、最上階のスィートルーム。
景色がよくて彼女は機内でのことなど忘れたかのように無邪気に喜ぶ。



「綺麗な景色ね…」


窓の景色に見とれている彼女を背中から抱きしめる。


「気に入った?」

「えぇ、勿論。天気がいいと遠くまで見えるわね…」

「あぁ。」


しばらく言葉も出さすに景色を見つめる二人。



ふっとファリアが時計を見るともう3時を回っていた。

「ねぇ、お茶でも飲みに下りましょうよ。」

「…そうだな。」




二人が部屋を出て行こうとするところへホテルの支配人がやってきた。


「あ…ランスロット様。 ご挨拶に遅れ申し訳ありません。」

「「え?」」

玄関ポーチで二人は立ち止まる。

「申し遅れました。私は総支配人のアドラーと申します。
何かございましたらなんでもお申し付け下さい。」

黒のスーツ姿の50代前半と言った風情のアドラーが頭を下げる。

「あぁ…ありがとう。世話になるよ。」

「ところでどちらかへお出かけですか?」

「あ、いや…3時のお茶にでもと…」

「よろしければお部屋に用意させますが…?」

リチャードは目を細めて言う。

「ティールームにでも行こうと思っていたんだが?」

「それでしたら、、この2フロア下のラウンジをお使い下さい。」

「ラウンジ?」

「わざわざ1階までお越しになる必要はございません。
どうぞ、ご利用下さい。」

「あぁ、じゃ、そうさせてもらうよ。」



二人は総支配人に見送られてエレベーターホールへ。


エレベーターの中で話しかけるファリア。


「ね、わざわざ総支配人が挨拶に来るって…凄いことじゃない?」

「…かもな。」

「やっぱり地球の英雄ね。私のダンナ様は…」

笑顔を彼に向けると微笑み返される。

「君だけの騎士のつもりだったんだけどな…」

「ふふ…」

嬉しそうに彼女は夫の肩に頭を寄せた。
その黒髪を撫でる彼の手―





   *


2フロア下のラウンジは景色も良く、のんびりとした時間を過ごせた。

広い空間に少ししかテーブルはない。
ここは特定の部屋の客しか入れないフロア。

紅茶を二つオーダー。



式の後もなんだか落ち着いた気がしなかった二人にとって
やっと一息つけたような気なる。






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(2005/7/5)



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To Love Sick