-16- 「sweet night」
定刻どおり始まる結婚祝いのパーティ。
新郎新婦は幸せそのものの笑顔で人々の祝福を受ける。
貴族や政治家などの名士と言われる人たちが集まる中、ロイヤルファミリーもいた。
勿論、国王や女王からすれば姪になるファリアの結婚。
そして将来有望な花婿…ランスロット家の跡継ぎのリチャード。
皇太子フィリップは昔から彼に勝てないと感じていた。
彼女に対する愛情も…その立場も。
それなら自分以上の男になって欲しいと願っていた。
彼はビスマルクチームの一員となったことで英国だけでなく地球の英雄となった。
(これで諦めもつくさ…)
今日の二人を見ていればすぐに解る。
誰もこの二人を引き裂けないと。
夜9時を回ると招待客も引き上げ始める。
何人かはモーティマー卿、ローレン卿と9ボールをしていたりしたため深夜まで。
新郎新婦は…10時を過ぎてやっと寝室へと引き上げる。
***
いまだウェディングドレスの彼女を新郎が抱き上げてベッドに運ぶ。
「ちょ…ちょっと…ねぇ…」
「ん?」
「シャワー使わせて…」
「ダメ。」
「何故? …今日一日の汗、流させて。」
「別にいい。」
有無を言わさない様子の彼になんとか意思表示する。
「よくないわ。」
「…じゃ、僕にドレスを脱がさせてくれる?」
妥協案のつもりで彼が口にする。
「…え?」
「ダメか?」
「ダメじゃないわ。 …手伝ってもらわなきゃ脱ぎ着出来ないのよ。」
「そのようだね…」
彼は彼女のドレスの背を見て気づく。
数えてみると18個の小さなクルミボタン。
彼女のためのオーダーメイドのウェディングドレス。
身体にぴたりとしたボディスの為に大量のクルミボタンとなっていた。
自分で花飾りとヴェールを取り、背を彼に向ける。
「ごめんなさい。手間かけさせて…」
「いいよ…」
1コ1コ彼の手で外されていく。
外されていくたび胸元が緩む。
「はぁ…」
思わず出る溜息。
(いくらぴったりに創ってあっても…少しきつかったわ…)
全部外れるとかなりの開放感。
「ありがとう、助かったわ♪」
笑顔を向けられ彼も機嫌がいい。
「やっぱり女性は大変だね。」
「殿方が羨ましいわ… それじゃ、入ってくるわね。」
胸元を押さえたまま、バスルームへと行ってしまう。
ベッドの上でひとりごちる。
「仕方ない…か。 ま、夕方抱けたしな…」
(ウェディングドレスのままの彼女を…)
思い出すだけで腰にずしんと来る。 彼も軍服を脱いでゆく。
袖のカフスを外し、ジャケットのフロントホックを外していく。
脱いで傍らのソファに掛ける。
靴を脱ぎ、スラックスを脱いで… 身一つになると自分もバスルームへと入っていく。
彼の登場に驚きを隠せない。思わず赤面する。
「…え? きゃ!」
「きゃ…はないだろ?」
「だって…」
「いいだろ?同じ風呂に入っても。」
「え…えぇ。」
「ちょっと前行って。」
「は…い。」
陶器製のクラシックなバスタブにはなみなみとした湯が溢れていた。
彼が彼女の背後に入ると思い切り溢れる湯。
背中から白い背を抱きしめる。
髪を洗った直後からなのかシャンプーの香りが香るのを嗅ぐ。
めったに見れない白いうなじが色っぽい。
彼女はまだ少し羞恥心で、顔が火照って熱かった。
「…ファリア…。 僕達、今日からはもう夫婦だ。
この日をずっと待っていた。
…幼い頃から。」
華奢な白い身体を抱きしめ、細い肩先を撫でる彼の手。
優しいその動きで顔を振り向かせて彼の顔を見る。
切なげなそして嬉しさを隠し切れない様子の彼に胸がときめく。
「…リチャード…」
「もう離さない。 僕が守るから…そばにいろ。
いいな?」
「…えぇ。」
幼い頃から時折、命令口調の彼。
それが不器用な優しさだと気づいたのはいつだったのだろう…
しばらくそのままのふたり。
「ねぇ、リチャード。」
「ん?」
「…髪、洗ってないでしょ?」
「え?」
「洗ってあげる。」
「…いいよ。」
「いいから。」
バスタブから二人して上がる。
彼を座らせ、自分は立ってシャワーヘッドを手にする。
軽くお湯で洗い、彼用のシャンプーを手に取り、泡立てる。
「あら…少し多かったかしら…」
リチャードはなすがままにされていた。
少々嬉しそうに自分の髪を洗ってくれている姿を見ていて自分も嬉しくなる。
彼女の指先が心地いい。
(これから…こういうのもいいかもな…)
「はい。終了〜 っと次は…」
コンディショナーまでしっかりされていた。
「完了! やっぱり…リィと同じだわ。」
「は?」
「髪の質。しっかり遺伝してるわ。」
笑顔でそう言われる。
「ひょっとして確かめたくて?」
「少しは… 解ってたけど。」
思わず溜息のリチャード。
「ファリア… 今日がどんな日か解ってる?」
「…え?結婚初日でしょ?」
「そ、初夜。」
「!!」
「だから今日は寝かせないよ。解ってる?」
少し意地悪そうに彼は言う。
照れる彼女をバスルームから連れ出す。
タオルで彼女の黒髪を拭くと抱き上げ寝室のベッドに下ろす。
(解ってるけど…やっぱり少し恥ずかしい…)
顔を赤く染め、恥ずかしさから顔を背けるそんな様子の新妻が可愛くてたまらない。
「ただでさえ…4日ほど逢えなくて…夕方あれだけ…
だからしっかり愛してあげるよ。」
彼女の手を握り、そう告げた。
「…リチャード…」
視線がぶつかる。
もう言葉はなかった。
唇が重なり、求め合う。
彼の指先が唇が熱いと感じる。
みるみる官能の炎に包まれていく。
彼の言葉どおり、朝まで眠らせてもらえなかった。
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(2005/6/28)
*あとがき*
中途ですが…この回、甘すぎて(笑)、シラフでは描けませんでした。
昼だっつーのにバランタインを飲んで描きました〜(滝汗)
ほろ酔いで書いたら…
どうしてこうなっちゃたのか…(汗))
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To Love Sick