-15- 「wedding 」
再会早々、3人に言われるリチャードがいた。
「残念だな…結婚式延期で。」
ビルが半分からかうように言う。
「仕方がないさ…この場合。
憎むべきはデスキュラのヤツらさ。」
「ま、そうだな。
あいつらやっぱりイヤなやつらだね〜。」
「ねぇ、リチャード。またリィ君に会いたいな。
赤ちゃんってすぐに大きくなっちゃうんだもの。」
「あぁ、日に日に大きくなってるよ。」
「おやおや〜 すっかりパパだね〜。」
ビルににやけた顔で言われ少し赤面する。
「進児もビルもいずれわかるさ。」
***
そしてビスマルクチーム4人の活躍でデスキュラの人工惑星ヘルペリデスは爆破。
デスキュラの野望を阻止できたのだ。
やっと地球圏に平和が訪れた―――
彼ら4人が地球を飛び出してちょうど1ヶ月経っていた…
***
リチャードは10月1日に地球・英国へと帰った。
直後、息子・リィにミドルネームとして"ウィリアム"と言う名を与えた。
それは知識人だった曽祖父の名。
"リィ=ウィリアム=ランスロット"… それが二人の息子の名。
無期延期としていた式を1ヵ月後に手配する。
式の日取りは11月1日―
たった1ヶ月しか準備期間がないので忙しい日々。
彼女のドレスは発注済だったので問題はない。
それでも多忙な日々。
それこそお互い会えない日が続く。
式の前3日はパーシヴァル家のしきたりで二人は会えない。
パーシヴァル家のほうで色々と決まりごとがあった。
"聖杯"の騎士・パーシヴァル卿の子孫でもあるので
それにまつわる儀式がいくつかあるということだった。
他家に嫁に出す場合でもこうなのだから、アリステアの未来の花嫁はもっと大変。
ただでさえ逢えない日々を過ごしてきたのに
式直前まで会えないのは彼にとっても辛いものがあった。
電話をするが繋がらない。勿論、携帯も。
理由を知りたくてパーシヴァル公爵に電話で尋ねる。
「すまないね。実は私も会ってない。」
「は?」
「…娘はローレン城の塔の部屋にいるがね、どうしているのか知らない。
リィも母親に合わせて貰えないのだよ。可哀相だがね。」
「…男子禁制の部屋なのですか?」
「まぁ、そんなところだ。
会っているのは母上とベアトリス夫人と神父だけだよ。」
「…大変なのですね…」
「パーシヴァル家の娘も嫁も…大変だよ。」
***
ファリアはローレン城の塔の最上階の一室にいる。
薄暗いロウソクしかない室内。
ベッドには薄いヴェールがかけられていた。
代々伝わる金の杯がベッドの足元に置かれている。
なみなみとした水が時折、揺らぐ。
彼女は白のドレスをまとって、ベッドに横たわっていた。
己の純潔を示すための儀式―
例え子を生んでいても、再婚でもずっとパーシヴァルの女たちが続けてきた―
親族であっても男は会えない。
唯一の例外は神父だけ。
***
―式当日 11月1日
やっと早朝に塔の部屋から出される。
自室に戻り、入浴をする。
3日間こもらされていたから、すっきりした。
すぐにロンドンの教会へと車で送られる。
母がいないので祖母と乳母二人の手を借りて花嫁の仕度。
父がリィを抱き上げ、祖父とアリステアが控え室へと姿を現す。
「「「あ…」」」
真っ白なドレスとヴェールをまとった花嫁姿。
父と祖父は滂沱していた。
父が言葉を発する。
「…ファリア。」
「はい…。」
「…私は今、感動しているよ。
お前の…花嫁姿をこうして見れるなんて…嬉しいよ。」
「ありがとう、お父様。」
ハンカチで目頭を押さえる祖父も声を掛ける。
「綺麗だ…ファリア。
幸せになるんだぞ。」
祖父の声は涙声だった。
「はい… ありがとう、お爺様。」
1歩前に出て弟も声を掛ける。
「姉さま。おめでとう。
僕も頑張る。 立派な跡取りになって…リチャードさんみたいになるよ。」
「頑張るのよ…アリステア。
私はずっとあなたの姉よ。」
「うん。」
リィは母親を見て手を伸ばしてきた。
「…マ、マぁ…」
「リィ、ごめんなさいね。淋しい想いをさせて。
…でもこれからはパパと3人で頑張ろうね…」
1歳半になろうとしている愛しい子を抱きしめる。
「さぁ、ワシらはもう出ないとな。」
「えぇ、父上。」
父はリィを乳母に渡し、歩き出す。
祖父たちは聖堂へと向かう。
直後、従兄である皇太子フィリップが来た。
一応、血縁者なので会えるのだった。
「ファリア…」
彼女と同じ蒼い瞳の王子は目を細めていた。
「殿下…わざわざ?」
「あぁ。俺も一応親族だからな。
…美しい花嫁だ。あいつも喜ぶだろう。」
「…ありがとうございます。」
「幸せになれよ。」
「…もう幸せです。」
「はは…そうか。そうだな。 じゃ。」
「…はい。」
皇太子も控え室を後にする。
大聖堂の鐘の音が響く…
花嫁は立ち上がり、控え室を出た。
聖堂の扉の前に立つ父。
父の手に導かれ扉をくぐる。
既に新郎のリチャードは大司教の前で待っている。
振り返ると目に映る花嫁姿は彼の胸を打つ。
息を飲むほどに美しい花嫁。
静かにバージンロードを歩いている姿は人々の溜息を誘う。
パーシヴァル公爵の手から彼女の手を受け取る。
彼が幼い頃、夢見ていた瞬間。
自分の横に花嫁の彼女。
大司教の声が遠くに聞こえる気がした―
彼女も涙をこらえるので精一杯だった。
フルシーミ星から出られないと知らされた時から諦めていた、愛する彼との結婚。
それが今、現実となっていく。
誓いの言葉が終り、指輪の交換。
誓いのキスの為に彼がヴェールを上げると涙を浮かべた彼女の顔…
今すぐ抱きしめたい衝動を抑え、誓いのキス―
聖堂内からため息が聞こえる。
黒の軍服の凛々しい花婿に
とても1児の母親とは思えぬほど清冽で可憐な花嫁。
少し長めのキスの後、二人は腕を組んでバージンロードを歩く。
ビスマルクチームのメンバー・進児、マリアン、ビルに婚約者のジョーン。
ルヴェール博士達、首脳陣が見守っていた。
マリアンもジョーンもハンカチを目頭に当てていた。
聖堂を出るとあまりにも大勢の祝い客。
リチャードは前に用意されている馬車に彼女を抱き上げて乗り込む。
人々に笑顔を振りまき、二人はランスロット家のロンドンの邸へと―
道中、彼は自分の花嫁を抱き寄せる。
想像以上に美しい花嫁姿。
「ファリア…綺麗だ…美しすぎるよ…」
「そう?ありがとう、リチャード。
あなたも素敵だわ。
その軍服、よく似合ってる。
…それにしても勲章、多いわね。」
彼の左胸に飾られた勲章の数は年齢に似合わず多かった。
「はは…階級は大尉なんだけどな…」
「それだけ立派ってことよね。自慢の旦那様だわ。」
「僕にとって…君は自慢の花嫁だ。
こんなに美しくて可愛くて…僕だけを愛してくれている。」
露わになっている肩先を抱く。
人目があっても…気にせずに二人は唇を寄せる。
しっかり新聞社のカメラに収められていた。
邸に到着すると彼は花嫁を抱き上げてドアをくぐる。
使用人たちが二人を出迎えた。
1時間半後には、結婚祝いのパーティが始まる。
彼女のドレスのかさがあるので大応接間の一番大きいソファに腰掛け、
彼はそんなことに構わずに隣に座る。
3日以上逢っていなかった上にこんなに美しい花嫁である彼女のそばにいたかった。
「僕は果報者だよ。こんなに美しい花嫁を見たことがない。」
彼女の頬に唇を寄せる。
「リチャードったら…」
くすくすと可愛らしい笑顔を見せる。
もう彼の我慢は限界に近かった。
彼の手がドレスの上から胸元に触れる。
「…あ…」
「でも…夜まで待たなきゃならないんだよな…」
「…リチャード…」
彼女も3日…いや4日、逢えなくて淋しかった。
彼の手に自分の手を重ねる。
彼の手にそっと唇を寄せた後、不意に立ち上がる。
「…ファリア?」
窓のカーテンを閉め始める。
全部占め終わると彼を振り返る。
「ね… ドレスを汚さないでくれるなら…」
「…いいのか?」
「えぇ… あなたが望むなら…」
そっと抱きしめくちづける。
花婿花嫁の姿のまま、愛し合う…
To #16「sweet night」
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(2005/6/25)
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