-12-   「friends」




彼は久々にロンドンへと車を走らせていた。
来週は…彼女の19歳のバースディ。
何を贈ろうかいまだに迷っていた…



ロンドンの高級店が並ぶ中を見て回る。
何にしようか悩んでいる時、目に止まったのは秋冬モードの花柄のワンピース。
大きく開いた襟ぐりと姫袖が乙女ちっくなもの。
少々子供っぽいかなと思いつつ彼女が着た姿を想像してみる。


気がつけば店のドアをくぐっていた。

店員に告げ、すぐに包んでもらう。
一度買ってしまうともう歯止めはきかない。
ワンピースに合わせて靴、アクセサリーと選んで購入。


「はは…」

彼女が喜んでくれるか心配になる一瞬もあったが思わず一人で照れ笑い。

それにふと気づいた。
リィに…誕生日を祝ってやったことがない。
0歳と1歳の誕生日祝いをと思い、ベビー用品のショップまで足を運ぶ。


一人で選んで一人で買ったと言ったら…どんな顔するだろうと思うだけで楽しかった。



   ***

午後にはローレン城へと向かう。
プレゼントは来週までお預けだ。

彼が到着すると笑顔で彼女は出迎える。

「リチャード!待っていたのよ。」

「そうか…すまなかったな。」

「今日はお客様がいるの。」

「え?!」

予想外の展開に目を丸くしていた。




ローレン城の大応接間に行くといたのは…彼女の親友・エリザベスことリズと自分の親友・エリック。


「あ… エリックにリズじゃないか。久しぶりだな。」

同じ青年貴族のエリックは明るく答える。

「久しぶりだな、リチャード。…やったな、彼女を見つけられてさ…」

「あ、あぁ。」

「やったわね、リチャード君。」

二人の笑顔で嬉しさと共に懐かしさがこみ上げる。




「それにしても…お前、ちゃっかりしてんな〜」

「何が?」

エリックは歯を見せて笑っていた。

「とぼけるなよ。1歳3ヶ月の息子が二人の間にいるって…」

「あ、あぁ。」

赤面しているリチャードにさらに突っ込む。

「昔はキスすら遅かったのに…」

「エリック!!」

思わず叫ぶ彼にリズも笑っていた。
ファリアも傍らで顔を真っ赤に染めている。

「もう…ホントよねぇ…。 でもファリア…良かったね。」

「うん…」


「で、肝心のベイビーは??」

エリックは周りを見回す。

「ちょっとお昼寝中。」

「おや〜、仕方ないな。
それにしてもさ、18でパパか…頑張れよ。」

エリックは彼の肩を叩く。

「何をだ?」

「コレで打ち止めにする気ないんだろ?」

「「!!」」


エリックとリズが笑っている中、二人は真っ赤になっていた。



しっかりリィの顔を見て、顔が融けていたのは意外にもエリック。

こんな調子で夕方までいた親友二人…。





   ***

-翌日

昨日のローレン城で疲れたリチャードは珍しく一人でのんびりしていた。
前は…彼女を失ってからは、一人でいることのほうがラクだった。
今は淋しさを感じる。

ファリアとリィの笑顔が思い浮かぶ。



   (ひょっとしなくても…単身赴任してる夫ってこんな気分なのかな…?)



やっぱり逢いたいと思い車を走らせる。

ローレン城に着くと…彼女も子もいなかった。
使用人に聞くとロンドンに出かけたという。
思わず彼女の携帯電話にかけるが、電源が切られていたために通話不能。


「はぁ…」

仕方なくランスロット城へと帰る。


「何処行ってるんだ…?」







   ***


そのころファリアとリィはロンドンの病院にいた。
英国での出生届けが受理されたので、ちょっと遅いが1歳の検診。
それに彼女は婦人科へと。
祖母に付き添われ病院を回った帰り、買い物好きの祖母に連れられベビー用品を買いに行く。

気がつけばもう3時のお茶の時間。
3人でホテルのティーラウンジへ。




結局、城に戻ったのは夜7時。

夜9時過ぎ、ファリアは彼に電話する。


「リチャード、今大丈夫?」

「ん、あぁ。」

電話の向こうの彼に少し元気がないような気がした。

「…大丈夫? 具合でも悪い?」

「そんなことないよ。」

そうは言ってもいつもより声のトーンが低い。

「ねぇ、ひょっとして…怒ってる? 今日のこと…」

「何が?」

彼の言葉になんとなく怒りを感じる。

  (やっぱり怒ってるわ…どうしよう…)




言い訳にしかならないと解っているけれど、口にする。

「あ、あのね…今日、あの子の1歳の検診だったの。
やっと出生届受理されて… 病院に行ける様になったから…

急に今朝行く事になっっちゃって…あなたに連絡するタイミング逃しちゃったの…
ごめんなさい。」

「もういいよ。」

まだ声のトーンが低い。
簡単には機嫌が直りそうにないなと感じる。

  (まだ怒ってる…)


もうひとつの報告で機嫌が直るかもしれないと切り出す。

「ね、ねぇ、リチャード。もうひとつお話があるの…」

「ごめん、今、ちょっと…」

彼に言われ息が詰まった。

「あ…私、ごめんなさい。あなたの都合も考えずに…
じゃ、おやすみさない。」

「あぁ。おやすみ。」




ぷつと切れてしまう電話。
彼女は溜息をつく。

ベビーベッドからリィが見上げていた。

携帯を手に息子を抱き上げる。

「どうしよう…ママ。 パパを怒らせちゃった…」

思わず出る涙。
リィの淡い金の髪を濡らしていた。





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(2005/6/14)

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To Love Sick