-6- 「again」
―2085年8月
激化するデスキュラ星人の侵略。
最近はアステロイドの星々にまで魔の手を伸ばしていた。
それは辺境の星・フルシーミとて例外ではなかった。
最初に襲撃を受けたのはダラゴ村。
あっという間に全滅させられる。
ダラゴ村からの連絡を受けた首都のイナルから軍が出たがそれは陽動作戦。
二分化された軍は殲滅させられた。
最後にカクサ村が襲撃を受けた―
「女子供は鉱山に逃げ込め!!」
鉱山の責任者ホセと村長のホワイトが叫ぶ。
女たちは我が子の手を引き、鉱山の洞窟へと逃げ込む。
男たちは入り口で銃を持ち、抗戦をしていた。
フェアリーもリィを抱きかかえ逃げ込んでいた。
おびえる子供達を抱き、女たちは鉱山のメインコントロール室に固まっていた。
デスキュラは攻撃の手を緩めない。
フルシーミに暮らす地球人を全滅させるつもりだった。
この星には鉱山が5つあり、その膨大なエネルギー資源を必要としていた。
ついにメインコントロール室にまでデスキュラ兵が及ぶ。
子供を庇いながら倒れていく母親達。
リィを抱きしめ、ぎゅと目を閉じた。
(ごめんなさい…リチャード… あなたの子…守れそうもない…)
「フェアリー!!」
彼女を庇ったのは血まみれになっていたホセ。
そのまま庇いながら覆うように倒れこむ。
下敷きになってしまいデスキュラ兵から見えなくなっていた。
メインコントロール室は血の海と化した。
全滅させて不敵な笑みを浮かべる親衛隊・ペリオスが立っていた。
「大変です!!ペリオス様!!」
「何だ?!」
「ビスマルクチームです!!」
「思ったより早いな…ちッ!! 応戦しろ!!」
「ハッ!!」
コントロール室を飛び出していくペリオスと兵士達。
しばらくして銃撃の音が響いていたが、突然静かになった。
ビスマルクチームが来たためにペリオスは部下を多く失い撤退した。
***
「こりゃ、ひでぇ…」
ビルが鉱山内の惨状を見て呟く。
内部は地球人の血の海。
「生存者は…」
リチャードは無駄かもと思いつつセンサーで走査しようとする。
「とりあえず回ろうぜ。」
進児の一言で3人は分かれて探索に回る。
***
「…う…」
彼女はホセの下から這い出た。
もう男の顔には血の気がない。
「…ホセ…。」
一度ならず何度も真面目にプロポースしてきた。
リィのために父親が必要だと。
何度も説得されたが拒否した。
リチャードに2度と会えなくても彼しか愛せないと自分で解っている。
なにより他の男に抱かれるのが怖かった。
けれど変わらずに優しかった男…
「う…ごめんなさい…ホセ。」
愛していたわけではない。
けれどその想いは伝わってきていた。
最後まで自分を守ろうとしてくれたと思うと
応えてあげればよかったのかとさえ感じている。
彼女の傍らでリィが泣き出す。
「ごめんね、リィ…」
まだ1歳3ヶ月の我が子を抱く。
どこからか子供の呻き声が聞こえた。
母親の遺体の下から出てきたのは兄妹のデビー(6)とレベッカ(4)。
泣いているリィを抱いている彼女の顔を見て安心する。
「あ…フェアリーママ。」
「デビー、レベッカ…大丈夫?」
「うん…」
傍らでもう亡くなっている母メグの遺体を目の当たりにして泣き出すレベッカ。
その声を聞いて這い出てきたのはルース(7)。
「あ…ルースも…無事?」
「…うん。」
気丈にも涙をこらえる幼い少年達。
どこからか赤ん坊の泣き声もする。
彼女が探すとノーラの下から生後半年のサラ。
「あ…」
母親の腕から抱き上げると激しく泣き出してしまう。
その声を聞いてコントロール室に飛び込んできたのはビル。
コントロール室にいた彼女と子供たちは驚くが
青のプロテクトギアをまとった地球人とわかると安心した。
ビルはその光景に驚く。
おびただしい遺体の中に若い女性と子供達。
「良かった…生存者発見した。」
ビルはマシンのマリアンに連絡する。
マリアンの連絡を受け、進児たちもコントロール室に向かう。
「大丈夫ですか?」
ビルは彼女に手を差し出す。
「…なんとか。みんな、怪我はない?」
子供達に声を掛ける。
「うん、フェアリーママ。」
「へ?」
きょとんとなっている少年に微笑みを向ける。
「私、村の子供達にそう呼ばれているんです。」
「…へぇ… それより、ここから出たほうがいい。」
少年にそう言われ幼い子供二人を抱きかかえ、三人の子供達と歩き出す。
歩き出してすぐにルースが言う。
「フェアリーママ…サラ、泣き止まないね…」
「ごめんなさい。ちょっと…リィを抱いてて。」
「うん。」
ルースにリィを渡し、立ち止まり子守唄を聞かせる。
ぴたりと泣き止む。
「へぇ…」
ビルも一瞬聞きほれる。
今度はルースの腕の中でリィが泣き出す。
「あらあら…今度はリィね。サラをお願い。
…いい子ね…リィ…」
我が子のやわらかな頬を指で撫で、子守唄を歌いだす。
ビルは子守唄を聞いていたかったが進児に呼ばれて先に向かう。
鉱山の洞窟の奥からリチャードがこっちに向かっていた。
彼は聞き覚えのあるその歌と歌声に驚く。
「この歌は…!?」
思い出す…幼馴染の少女が赤ん坊の弟に歌っていたあの歌だと。
「この子守唄、僕、知らないよ…」
「え…それはそうよ。」
「なんで?」
「だってこの歌…始祖のパーシヴァル卿を讃えた歌だもの。
うちの領地の人しか知らないっておばあさまから聞いたわ。」
「へぇ…そうなんだ…」
「!!」
遠目でも解る彼の視線の先に赤ん坊に向かって歌っている黒髪の乙女の姿。
静かに近づく彼の目の前1.5メートルくらいで確信に変わる。
「…ファリア…」
不意に本当の名を呼ばれ振り返る。
目の前には黒のプロテクトギアを身に着けた青年が立っていた。
国旗のマークが母国・英国。
まさかと思いつつ問いかける。
「…誰?」
おもむろにヘルメットを脱ぐ相手の顔を見て気づく。
「!! …リ…チャード?」
最後に逢った時より身長もかなり伸びている。
何より17歳の頃に比べて逞しく凛々しい青年となっていた。
ヘルメットを放り出し、駆け寄り彼女を抱きしめる。
「…やっぱり…やっぱり、生きていた…ファリア…」
突然の再会は青天の霹靂。
「ど、どうして…こんな…星に…?」
彼女の驚きの涙がリィの頬を濡らして二人の間で泣き出してしまう。
赤ん坊が泣き出したので驚くリチャード。
彼女は慌てて零れ落ちたしずくを指でふき取る。
「あぁ、ごめん、ごめんね…リィ。」
リチャードは自分と似た金髪の赤ん坊を見て驚く。
「君…この子は…?」
彼女は一瞬、止まった。そしてはっきり告げる。
「あなたの子よ。」
「!? …え? まさか…あの日の…?」
「そうよ。あの日の私達の…」
言葉がつまり、ボロボロと泣き出し止らない。
ルースたちがリチャードをつつく。
「フェアリーママを泣かせないでよ!!」
子供達は本気で怒っていた。
「待って…違うの。違うのよ。みんな…」
「何で?泣いてるじゃない、フェアリーママ。」
デビーが言う。
子供の目線にかがみ、彼女は告げる。
「違うの。嬉しいから泣いてるのよ。
それにこの人はね…前にお話したでしょう…<妖精の騎士>。
リィのパパよ。」
「「「! そうなの?」」」
子供達が一斉に叫ぶ。
デビーがあることに気づく。
「そいうえば髪の色、リィと同じ。」
「そうでしょ?」
涙を浮かべたまま、笑顔で子供に答える。
そこへ進児と合流するために先に行っていたビルが引き返してきた。
「おい!何やってんだ?置いてくぞ!!」
「あ、すまん。」
ビルはデビーとレベッカの手を引き、進児はサラを抱き上げる。
リチャードはルースの手を引く。
無邪気にルースは彼に問いかける。
「ねぇ、リィのパパってホント?」
「そうだよ。」
笑顔で彼は答える。
先を歩く進児とビルは目を丸くしていた。
「おい!? リチャード?どういうこった??パパって何??」
「…事情は後で話すよ。とりあえず外に出よう。」
「あぁ。」
進児たちは怪訝に思いながらも子供達と共に鉱山を出る。
村はほとんど焼かれ、人々の遺体が転がっていた。
ファリアは嘆く。
あんなに優しかった人たちがみな殺されていた。
「酷い…」
「もうすぐセレス星から救援隊の船が来る。それに乗るんだ。」
「…はい。」
ビスマルクマシンに向かう一行。
「ところでリチャード。どういうこった? パパって何のことだ?」
歩きながらビルは少々イラついた声で問いかけた。
「…彼女は僕の…恋人だよ。」
「「ヘ??」」
立ち止まる進児とビル。
子供達も同時に立ち止まる。
「2年前のアテナU号事件で行方不明になってた。今日までな。」
「そうか…」
進児は納得していた。
「で、なんでいきなりパパなワケ?」
「彼女が僕の知らぬうちに子を産んでた…そういう事なんだろう…ファリア?」
彼女を見つめる。
「えぇ。」
「って、何時の間にこんな美人と出逢って仕込んでるんだよ!!」
「ビル…なんでお前が慌ててるんだ?リチャード本人じゃなくて…
まさかお前も何処かで身に覚えが…」
「違うってば!!」
はははと笑いあう進児とリチャード。
つられて子供達も笑っていた。
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(2005/6/4)
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