-5-   「lullaby」





少女はフルシーミ星に着いた直後から、カクサ村のバーで働き始める。

もう地球に帰れないと思うと辛くて苦しかった。

でも夜のステージでピアノを弾いている瞬間だけが救いだった。




バーの2階で暮らし始めた少女。
彼女が自分の異変に気づいたのは17歳になった9月末―



もともと不規則だったが丸2ヶ月以上、月経がない。
首都イナルの病院に行くのが怖くて検査薬で調べると………陽性。


   (どうしよう…私… どうしよう…そんな…)





悩んでいるうちに年が明けた。
少しずつ大きくなっていくお腹は隠せるはずもなくバーの主人と妻に気づかれる。



妻のメリルは泣き出す歌姫に言う。

「あんたのお腹の子が、レイプされて出来たのか、
好きな男との間に出来たのか…どんな事情は知らないけど、
ここまできたら産むしかないね。」

「!!  あ…」


バーの女主人に言われて少女は決心した。

  (もうどうせ地球に帰れないのなら…
   せめて彼の子供がいればそれだけ生きていける…



   あの日の…思い出がここにいる…)



そう思うと突然愛しくなる。
彼の子…だと。

シングルマザーになることを選んだファリアは17歳という若さだった。

彼女はその年の5月7日________________________________金髪の男児を出産した。



歌姫として村の男たちから人気のあったファリアことフェアリー。
鉱山の男たちが寄付を募った結果、彼女の元に2万ドルが届けられた。
この村で暮らすには十分な金額。


それでも3ヶ月を過ぎた頃から店に復帰した。




バーの2階に暮らす彼女は昼は自分の子だけでなく村の子供の面倒を見ていた。
と、いうのも彼女の子守唄を聞くとどんなに癇癪を起こしている子でもぴたりと泣き止む。

母親達は自分でもてあましてしまうとフェアリーの元へとやってくる。
それが高じて昼となく夜となく彼女の元へ子供をつれてくるのだ。

おかげでステージの途中であっても、子を連れてくる母親まで現れた。
仕方なくステージの脇で子守唄を歌う。
客の男たちもまるで子供のような顔をしていた。





彼女の子―リィと名付けられたフェアリーの幼子は
半年を過ぎると夜、同じような赤ん坊のいる家に預けられるようになる。



村人達はすっかり住人となったフェアリーを優しい目で見守っていた。



男たちからだけでなく、女からも子供達からも慕われるようになっていた。
子供達は皆、<フェアリーママ>と呼んで、歌やお話をせがむ。


優しい子守唄と色々なお話を聞かせてくれる彼女が皆、大好きだった。






ファリアはある意味、幸せだった。

英国にいた頃は家族とリチャード、リズたちくらいしか話す相手がいなかった。

けれどここにいる人たちは自分の生まれや育ちを知らない。
パーシヴァル公爵家の令嬢、女王陛下の姪という色眼鏡で見られない。

だからこそひとりの人間として女性として認められ求められていることが幸せだったのだ―




彼の子供と優しい村人に囲まれて穏やかに暮らしていた…



そんなささやかな幸せも異星人の手によって再び奪われようとしているなどとは夢にも思わない…





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(2005/6/4)

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