-4- 「fate」
翌日、ファリアと弟は父から告げられる。
「お前のコンクール入賞とアリステアの馬術大会優勝の祝いで宇宙旅行に行くぞ!!」
「「ホントに??何時?」」
弟アリステアは前から行きたがっていた。
ファリアは去年、リチャードが行った時から、行きたいと思っていた。
「水曜から…1週間だ。」
「ホントに??」
「急だが休みが取れたからな。」
この時、一家四人とリチャードを巻き込む運命の事件が起こる―――
のちに真相がわかるまで謎の事件とされた。
”アテナU号事件”
地球に侵略を図るデスキュラが狙っていたのは
軍の補給物資を運搬する船だったのだが、間違って観光船を襲撃した。
しかし彼らはここにも多少の食料があると知ると略奪していったのだ。
緊急脱出用のポッドで難を逃れた乗客乗員。
だが残念なことに地球連邦軍によって乗っていた人たちの60%は死亡が確認された。
そして18%の人がポッドごと行方不明とされ、生き延びたのはわずかに22%だったのだ。
生存者の中に父・アーサーと弟・アリステア。母・セーラは遺体で発見された。
娘・ファリアは乗り込んだカプセルごと行方不明とされた―――
***
彼女の乗り込んだカプセルは鉱山の星・フルシーミ星へと向かう労働者達の宇宙船に回収された。
少女が意識を取り戻したのはフルシーミに降り立つ寸前。
「ここ…どこ??」
無骨な男たちに囲まれて不安を隠しきれない。
「…フルシーミ星に向かう船の中だよ。」
「!! お願いです! 私を地球に返して!!」
泣き叫ぶ少女に同情の顔を見せるが告げる。
「残念だが…無理だね。」
「え…?」
「この星からは…一般人は出られない。」
「どうして!?」
「人口が少ないからね…軍人以外は出られない。片道しかないんだ。」
非情な宣告に戸惑う。
「そんな…そんなっ!!」
「可哀相だけど…もう帰れない。」
泣き崩れる少女を見て男たちはどうすることも出来なかった。
「もっと人口が増えたら帰れるようになれるかもしれん。
しかし…何年かかるか…」
「!!」
そうこう言っている内に船はフルシーミ星の首都・イナルに着く。
「とりあえずは働かないとな。」
「え…」
「お嬢ちゃん、いくつだ?」
黒髪のまだ幼さの残る少女に尋ねる。
「16歳です。…9月が来たら17歳になります。」
「ありゃ。こりゃ難しいな。」
15歳までならフルシーミの施設に入れるがもう無理。
「何か出来るかな?」
「私、ピアニストの卵です。」
4人の男に順に尋ねられ応える。
「そうか… ならバーかな?」
「そうそう…たしかカクサ村のバーが…歌姫探してたっけな?」
「歌姫?」
思わぬ言葉に驚く少女。
「そう。ピアノを弾いて歌う…ってあんたにピッタリじゃないか?」
「…そこしかないですか?」
「それがイヤなら…ダラゴ村の売春宿だな。」
「!! 解りました…バーに行きます。」
どっちもイヤだったが、身を汚すのはもっとイヤだった。
彼女の選択はそれしかなかった―
*****
―彼女を見送った日
リチャードは一人で丘に行っていた。
あの日と同じように風は吹いている。
頬を撫でる心地いい風。
まるで彼女の気配が残っている気がした。
夕方になり城に戻ると父から書斎に来るようにとの伝言を執事から聞く。
書斎へ行くと…涙のアトを見せる父の顔に驚く。
「父上…何かあったのですか?」
「…リチャード。悪い知らせだ。私も辛い。
でも…お前に伝えなくてはならん。」
「何です?!」
思わず声を荒げる少年。
「パーシヴァル一家の乗ったアテナU号が沈んだ…」
脳天に衝撃を感じた。
「!! そんな!!バカなッ!!」
いつも冷静な息子の顔に狼狽の色が浮かんでいるのを認める。
何とか言葉を続ける。
「…アーサーとアリステアは生存が確認された。
しかしセーラ夫人は遺体で発見された。
あの娘は、ファリアは乗り込んだカプセルごと行方不明だ。」
信じられない事実を突きつけられ泣き叫ぶ。
「嘘だ!!信じない!! 嘘だと言って下さい!父上ッ!!」
号泣し、膝を折り床に拳を叩きつける。
「嘘だッ!! う…あッ!! 信じない!! …ファリアぁああッ!!」
息子のその様子を見て父も涙が止まらない。
あと3年もすれば結婚式が見れると思っていただけに辛いものがあった。
この直後から、彼は引きこもることに―
***
―事件から3ヵ月後
アーサー=パーシヴァル公爵はマスコミで騒がれていた。
”悲劇の公爵”
―王室出身の愛する妻を亡くし、愛娘は行方不明。
彼の唯一の救いは息子が生きていることだけ…
自身は左腕を骨折していた。
ローレン城に戻り療養中のアーサーの元には同情のお見舞いの人がたくさん来た。
見舞い客の一人…ランスロット公爵エドワードは少し違った。
「アーサー、元気で何よりだ。」
「すまんな心配かけて…」
酸素欠乏症と骨折で済んだのは奇跡だと医者達に言われた。
「思ったより元気で…嬉しいよ。」
「…。」
学生時代から先輩後輩の親しい間柄。
いまでこそ親友といえる相手・アーサー。
「…こんな状態の君に頼むのは気が引けるが…聞いてくれないか?」
親友・エドワードの言葉に少々驚く。
「何だ?」
「…リチャードに会ってやってくれ。」
悲痛な親友の顔に涙が浮かんでいた。
困惑するアーサー。
「…?リチャード君に?」
「あぁ。…君達の事件を聞いて…君の娘が行方不明と聞いてあの子は…」
目頭を押さえるエドワードに戸惑う。
「リチャード君がどうした?」
「いろいろなカウンセラーに診せた。しかし…時間しか解決方法がないと…」
「!!」
***
すぐに左腕を吊ったままのアーサーとランスロット公爵エドワードは城へと。
そこでアーサーが目にしたのは…
ファリアの写真が入ったフレームをじっと見つめたままのリチャード。
憔悴しきった顔にうっすらと浮かぶ笑顔は衝撃的だった。
「!!」
「あの直後から…ずっとああだ。
君の娘の写真を見つめて…」
声にならずに涙が溢れる父親。
「本当に…あのリチャード君か?」
彼の変貌振りに驚く。
いつも凛とした騎士然とした少年だった。
目の前にいるのが同一人物とは思えない。
思わず肩を掴む。
「リチャード君…?」
焦点のあってなかった目に光が戻る。
「…パーシヴァル公…?」
「あぁ。」
「…彼女は?…ファリアは?」
「…。」
どう返事していいか解らず何も言えない。
「何故…何故…?? ファリアは…」
もう涙も枯れ果てて嗚咽しか出てこない。
その姿を見て解る。
少年がどれほど自分の娘を愛していたか…
「しっかりしろ!! リチャード君!! 君はあの娘のために立派な騎士になるんだろう?」
「えぇ…僕は…」
震える自分を抱きしめている少年。
その彼の瞳を覗き込む。
「リチャード君なら解ってくれるな?…私は娘は死んだと思ってない。」
「!?」
思いがけない言葉に顔を上げた。
「時々、夢で見るんだ。あの娘がひとりで泣いているのを…」
思い当たるふしがある少年は口にした。
「!! 僕も… 彼女が黒いドレス姿で…泣いている夢を…」
「…そうか…やはり…」
父親と彼女を愛する少年は驚く。
「じゃ…ファリアは…」
「おそらく何処かで生きてるんだ。…しかし私は探しに行くには年をとりすぎている…」
「!! 僕が!! 僕が探しに行きます!!」
「そうしてくれるか??」
「…はい!!」
やっと瞳に生気が戻った。
二人の会話を聞いていたエドワードも安堵の涙を見せる。
リチャードはアーサーとの再会で目覚めた。
すぐに大学に復学し、トップの成績で卒業。
即、諜報部の訓練所へと。
そして2084年10月運命的に地球連邦ルヴェール博士が結成するビスマルクチームへと抜擢される。
いずれ彼女を探すためにと宇宙訓練を積んでいた事が功を奏した。
To #5「lullaby」
__________________________________________________
(2005/6/4)
BACK To #3
To Love Sick