夜の妖精      -5−






乙女はバルコニーでしばらく夜空を見上げていた。

背後に人の気配を感じて振り返るとリチャードが立っている。

バルコニーがつながっているから彼女が外に佇んでいるのを見つけたのだった。

彼女の肩にふわりとガウンをかけてきた。

「ずっと外にいると身体が冷えるじゃないか。
ただでさえ君は怪我人なんだから…
ほら、手が冷たい。」

手を握り、その冷たさを知る。
乙女は彼の手のぬくもりを感じていた。

「えぇ、そうね。もう戻るわ。」

自分の部屋に戻ろうとする彼女に向かってリチャードは告げた。


「少し…話していいかな?」


「えぇ、どうぞ。」




二人は暖かい室内に。

彼女は彼に温かい飲み物でもと思いミニバーに向かう。

彼女の背に向かってリチャードは話しかける。


「ファリア…」

「はい?」

「僕は少し、後悔しているよ…」

「…?」

彼女は言葉の意味がわからず振り返った。
瞳を伏せて彼は言葉を発する。

「昼間、君の身体を奪ったことを…」

「何故、後悔しているの?」

「僕は…その… 君が夜の仕事をしていると思って君を抱いた…
けれど実際は違った。
君の初めてをあんな形で奪ってしまった事を僕は…
後悔してるんだ…」


後悔で頭を下げるリチャードに近づく。

「…。  私はそうは思ってないわ。」

「!?」

「私は… むしろあなたでよかったと思ってる。
結果的にそのおかげであなたに村のほとんどが
デスキュラに成り代わられていることがわかった。
私に薬物が使われていたという事も。
私はデスキュラに騙されていたのね…   5年間ずっと……」

瞳を伏せ、自分で自分を抱きしめる。

「だから私は… 初めての人があなたでよかったと思ってる。
だってまだ私は…  私の身体は… あなたがいたって感じてる。」

まだ体の中に彼がいる感触が残っていた。

「…」
その言葉に愛おしさを感じるリチャード。


そっと抱き寄せ唇を重ねる。

互いを求め合う熱いキス。

リチャードはそっと彼女を抱きしめる。

ファリアは彼の身体の異変に気付く。
そして自分の身体も熱くなっていることに。


くちびるが離れると彼女をお姫様抱っこしてベッドまで運ぶ。


「もう一度確かめて…いい?」

「えぇ。」


白いシーツの海へと沈む二人。


彼女の黒髪がふわりと広がり、漆黒の宇宙を思わせる。


浮かぶ白い肌。


その華奢な身体に似合わぬ大きな乳房に彼の指先が触れる。


小さな喘ぎが漏れる。


彼女の艶っぽい顔が見たくて彼は丁寧に優しく愛撫する。


可愛い耳朶を甘噛みする。


身体が甘く熱く融けているのが彼にはよくわかった。


昼よりもその蜜が溢れ出て来ていた。


その華芯のたたずまいはちっとも淫らではなく可憐だった。


彼女の性格を反映しているかのごとく…


彼の熱くたぎった想いが彼女へと流れる。










彼が得たかった暖かく優しい時間…

それを感じた夜だった。







-翌朝

リチャードは彼女のベッドで目覚めた。

自分の腕の中で眠る乙女。
それが自分の恋人。


昨日までの喪失感と逆の満たされた想いが自分の中にあることを感じていた。

他の誰でもない彼女でなければならない…


そっと呟く。

「絶対、離さない…」


彼はそっとおでこにキスする。




ベッドの下に散乱している自分のパジャマを拾い、自分の部屋へと戻っていく。


自室のベッドで仰向けに転がる。


夕べのことが確かな現実と実感していた。



時計が7時を告げる。


彼はおもむろに起きて、バスルームへと向かった。





**********


リチャードがバスルームに消えた直後、
ふと目覚めたファリア。

ものすごい安心感と充足感に包まれている自分を感じていた。
それがベッドに残る彼のぬくもりと香りのせいだということを。

ふとドレッサーの鏡を覗くと身体のあちこちに残る紅いキスマーク。
まるで薔薇の花びらを散らしたような。
彼と溶け合ったことを実感していた。

彼女もバスルームへと向かう。

白いタイルを打つシャワーの音…


バスルームから出ると夕べ運んでもらった服に着替える。



身支度が済んだ頃、メイドのレイチェルがやってきた。
直後、彼の部屋へ。



朝食の席にと。

昨夜と同じようにすでに進児とマリアンが席についていた。

朝の挨拶はみな笑顔で。



ビルがそのあとにやってきた。

ドメス将軍も。


朝の穏やかな空気は緊急連絡で一蹴された。

ドメス将軍に入った一報はデスキュラがある町に攻撃を仕掛けているというものだった。

大至急でビスマルクチームに向かうように指令が出る。

慌しい中、彼女は愛しい彼に囁く。

「気をつけてね… リチャード。」

「あぁ。」

そして彼女は3人に向かって告げる。

「皆さんにもご武運を…」

「それじゃ、行って来るよ。」

プロテクトギアに身を包んだ4人がビスマルクマシンで飛び出してゆく。

何も出来ない自分に歯がゆくなる。

空高く上っていくビスマルクマシンを見送り、祈るだけだった。

見えなくなるまで…




*********


そのビスマルクマシンの中で…


「それにしても…」

「何だ?ビル?」

答えたのは進児。

「リチャードの許婚って、すっげーいい女だなぁと思ってさ。」

3人は呆れる。

「はぁ?!」

「あんな美人で優しそうで…羨ましいぜ。
でも俺には無理だな。」

「どうして?」と突っ込むマリアン。

「なんかさー… リチャードとおんなじ空気なんだよな。
やっぱ貴族だからなのかな?」

「そりゃそうさ。彼女の家は英国貴族の中の名門貴族・パーシヴァル家。
そして彼女の母君は王室出身だからな。」

「は?王室出身って?」

「彼女の母君は現在の女王陛下ヴィヴィアン7世陛下の妹姫・セーラ様。
残念なことに5年前の例の事故で亡くなってしまった…」

「そうだったのか…って マジィ?」
叫ぶビル。
そのビルの反応に驚く3人。

「僕のランスロット家より格上の家柄だよ。」

「大変なんじゃないの?」

マリアンが少し心配げに問いかける。

「そのはずなんだけど…
彼女の父上も祖父も僕のことを認めて下さっているんだ。」

「へ〜え。」

「ありがたいことだよ。」






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あとがき(2004/11/14)
なんだかな〜…
連載になってますよ??

今回はそれっぽいトコが出てきたり…

大人だねぇ、リチャード君(笑)


(2005/2/22加筆)