caress -4-








0度近い氷窟内で二人は汗ばんでいた。


「あぁ、ファリア。やっと…僕に応えてくれる気になってくれたんだね?」

優しく顔を覗き込むリチャードに首を横に振る。


「…私…諦めていた。」

「え!?」


意外な彼女の言葉に面食らう。

「父も母も弟も死んで… この異郷の星で孤児になって…あなたに会えなくなって…
とてつもない孤独と…憎悪。」

「…。」

リチャードは黙って彼女の語りだす話を聞いていた。


「私、修道女になる前…引き取ってくださったのはロナルド神父様。
そこで私は普通の少女だったわ。
何度か男の人に愛の告白を受け、そのたびに断った。
それだけじゃない…
犯されかけたこともあった。

それらから逃れたくて…

あなただけだと思っていたから…
だから修道女になったの。」



リチャードは黒髪を指に絡ませ聞いていた。

「幼い頃から… あなただけを見てきた。
今更、他の男の人なんかいらない。
もう恋なんてしないって…
でも…でも、あなたが今でも私を望んでくれるのなら…
神に背く事になっても…やっぱり、あなたが好き…」

告白する彼女の瞳を見つめる。


「嬉しいよ…。僕もずっと君だけを見てきた。…想っている。
他の女なんかいらない。」


お互い抱き合う。
素肌が心地いい。


「私… ごめんなさい。酷いこと言ったわ。」

素直に謝るファリアにリチャードは応える。

「もういいさ。…もういい。」


傍らの炎が小さくなっていた―


「…リチャード。」

「うん?」

「もう乱暴にしないで…」

「あぁ。」

照れながら抱きつく彼女の体をぎゅっと抱きしめる。



「いっそこのまま二人でここでつながったまま凍ってしまおうか?」


「ふふ…それもいいかもしれないわね。
パーシヴァル家もランスロット家も関係ない…」

「そうだ。このまま二人だけ…」


「それなら私、ひとつだけ後悔するわ。」


「何だい?」


「あなたの子供が産みたかった…」


そっとリチャードの頬に触れる細い指先。

「!! そうか…
さっきのことを気にしてるんだね… 
僕の子を宿せと言った事を。」

こくりとうなずく。

「すまなかった。君の純潔を無理に奪ったのは…僕だ。
どんな罰でもののしりでも受ける。
君を傷つけるつもりはなかったのに…」

真剣に謝罪するリチャードに彼女は思い掛けない言葉を口にした。

「私…こんな形になっちゃったけど…初めての相手があなたで嬉しい。」

「!!」

「…もう修道女には戻れない。帰ります、英国に。」

「…ファリア。僕の独断で…」

「ううん、いいの。
たとえ神の怒りが落ちて地獄に落ちても構わない…
だから私を愛して…」

広い彼の胸に顔をうずめる。

「あぁ。愛するさ。そして守ってみせるよ。」





しっかりと抱き合う二人の耳に人の声―

『おーい、リチャード!生きているのなら返事しろー!』

進児の声がヘルメットから流れ出していた。
起き上がり彼女から離れてヘルメットを手にする。

「あぁ、何とか生きてるさ。けれど…どうもここから出れそうにない。」

『よかった。生きてたか。』

「勝手に殺すな!」

『で、おまえさん。今何処にいるんだ?』

「森の中の岩板の亀裂に落とされて、岩で塞がれた。
しかもここは氷の洞窟なんでね、時間的に余裕がない。」

『出口が塞がれているのか…』

「あぁ。歩いて出れなくはないそうだが…彼女を置いて行くなんて出来ない。」

リチャードの言葉にビスマルクマシンの3人は驚く。

『『『はぁ?』』』
  
『彼女って誰か一緒なのか?』

ビルが思わず口に出す。

「実は…教会のシスターが一緒なんだ。」

『本当か?』

進児がいつもの口癖で問いかける。

「あぁ。それで出ることが出来ないと解った。」

『そういうことなら…1時間だけ待ってくれ。
村人に他に出口がないか聞いてくる。
何か対抗策も出来るかもしれんしな。』

「すまんな。」


ぷつと通信が切れた。




*****************

ビスマルクマシンの3人はリチャードが生きていたことに安堵。

インテリジェンスシステムを使える彼がいないので探査をすることが出来ないでいた。

通信が取れた位置からやっと場所が特定。



「しっかし、リチャードのヤツ、ちゃっかりしてるぜ。」

「何で?」

ビルの呟きに進児が突っ込む。

「あのシスター、超美人だぜ? 洞窟なんて暗闇で何してんだか…」

「リチャードに限ってそんなわけないだろ? お前じゃあるまいし。」

「何だとー!?」

逆切れするビルの様子を見て進児とマリアンは思わず笑う。



真実を知らない3人。



*****************



氷窟内に燃やせるものがなくなりつつある中、二人は互いを温め合う。


「ふぅん…ッ… リ、リチャード…」

深く唇を重ね、絡み合う舌。
彼女の吐息すらこぼさぬように唇を覆う。

白い裸体が薄闇の中、彼の体の下でもどかしげにくねる。

「んッ …ん…」

指先に愛情を込めてやわらかな白い胸を撫でていく。
硬くなる先端を手のひらでこすり下から上へと揉みあげる。

ファリアは体の中から熱い疼きが生まれてくるのを感じていた。

甘く切なく彼を求める―

「あ…あ…」

さっきとは違う、熱く優しい愛撫に融けてしまいそうになっていた。

薄く目を開けて彼を見上げる。

青年になったリチャードは凛々しく逞しい。
広い胸板と筋肉質な腕。
繊細な指。
変わらない柔らかい金の髪。
自分を熱く見つめるエメラルドグリーンの瞳。



子供の頃、読んだ童話に出てきた王子様のような彼―

リチャードが自分を探し求めて宇宙に出てきた。
それだけでも嬉しいのに、今 逞しい腕に抱かれて天国にいた―




*****************

デスキュラを殲滅し落ち着いた村長に仲間が洞窟に落ちたと説明し、
解決策はないかと尋ねる。

「うーん…あそこは厚さ10メートルの岩盤で塞いでしまったからな…」

「どうやって?」

ビルは思わず突っ込む。

「3年前に子供が迷い込んでな。
連邦軍に頼んで塞いでもらったんじゃ。
ちっとやそっとで動かせる岩ではないぞ。」

中年の小太りの村長は顎鬚を撫でながら応えた。

「うーん…」

「人がひとり通れるくらいの隙間を開けて…また塞いでくれればいいさ。」

村長の言葉にピンときた。

「ありがとよ、村長さん。」

ビスマルクマシンに残っていたマリアンに村長の提案を告げる。


「…そっか。完全に開けなくても、リチャードとシスターが通れればいいんだもんね。」

「そうだぜ。進児は?」

「進児君も村に行っているわ。」

「呼び戻そうぜ。ビスマルクでちょっと動かしてやればいいさ。」

「えぇ。」



マリアンの通信ですぐに帰ってきた進児。

「よし、わかった。」


マリアンはおもむろにリチャードに連絡を入れる。




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(2005/4/26)