Thank you my girl -5-
彼女の中で僕自身はまた熱を持ち始めていた。
「ファリア…離れようか?」
「ううん…いいの… このままでいて…。
リチャード… 熱くて、私の中でいっぱいになってる…」
もう完全に力を取り戻していた。
「…君の中、あたたかくてやわらかくて… ものすごく居心地がいいよ…
ずっと…こうしていたい…」
「えぇ…いいわ。 ずっといて… 私もあなたを感じていたい…」
彼女の言葉が嬉しくて、胸を熱い想いが込み上げる。
白い指が僕の髪を梳いて撫でるだけでなんともいえない幸福感を感じた。
「…もう僕たちを引き裂くものは何もない… 僕たちはこうして結ばれてる…」
「私、もう怖くない… あなたが私を強くしてくれてるの…」
「僕もだ。 君がいるから強くなれる。いや…強くなる。
君を守るために… 愛するために…」
もう言葉はなかった。
肌と肌が触れ、視線が重なるだけで胸が熱くなる。
彼女の中でこの世のものとは思えない甘美な感触に動かなくてもめまいを覚えそうだった。
「あん…リチャード…」
彼女に名を呼ばれるだけで、背中にぞくりと快感の稲妻が走る。
「く… ダメだ… 動くよ…」
「…えぇ… あ…んッ…」
僕はゆっくりと腰を引く。
けれど彼女が切なげに腰を震わせ、離したくないと叫ぶかのように締め付けてくる。
「うぁ…あ…」
「はぁ…ああん…」
ちょっと動いただけでお互い身悶えた。
「ファ…リ…アぁ…あぁ…!!」
僕は再び激しい波に襲われる。
ただ無我夢中だった。
「ふ…くぅ… 」
流れ落ちる汗が目に沁みるがそれどころではない。
激しく彼女の中を突き上げ、こね回していた。
「あああッ!! ダメぇ…ッ!! あぁぁあッ!! 」
「あぁ…ファ…リ、ア… もう…!!」
考えようとしても無駄だった。
彼女を気遣いたくても出来なかった。
僕のうめき声と彼女の熱く艶を帯びた喘ぎ声、それと激しく立つ粘着質な水音が耳につく。
僕が一番奥を突き上げた時、彼女が今までで一番激しく身体をわななかせていた。
「も…ダメだ…!!」
再び、彼女の中で爆ぜた。
びくびくと全身が震え、意識は真っ白の波に飲まれていく―
気がつくと彼女の上に倒れこんでいた。
しばらく意識を失っていたらしい。
慌てて腕で身体を上げた。
下の彼女はまだ、意識を失ってるのに僕を受け入れてたまま。
申し訳なく思い、身を離した。
自身が出るとどろりと白濁した精に赤いのが混ざって見えた。
「あ…」
僕は感激していた。
ファリアの処女の証―
痛みと苦しみに耐え、涙を流して微笑んでくれた。
すべてが愛しくてたまらない。
僕はバスルームに置かれていたティッシュBOXを持ってきた。
自身をふき取るとまとわりついた白いものに明らかなキレイな血―
(ファリア… ありがとう、僕の為に…)
新しいのを持って、彼女の肌に張り付いている蜜と精をキレイに拭き取る。
そこで僕は満たされた想いでいたけれど、すーっと背筋に冷たいものが走った。
「あ…」
まだ失神したままの彼女の肩をそっと揺らして起こす。
「ファリア…ファリア… ごめん、ごめん…」
「ん… リチャード…?」
やっと覚醒した彼女は少し驚いた顔を見せた。
僕が泣きそうな…いや泣いている顔をしてたから。
「どうしたの? リチャード…?」
優しく僕の頬を撫でてくれる白い指。
「ごめん…僕、君の中で2回も…
妊娠してたら僕の責任だ。 避妊できなくて…ごめん。
婚約してるって言っても… 僕…
いくら謝っても…すまない…」
みっともないくらい泣いてしまう。
そんな僕を彼女は優しく抱きしめてあやすように背をさすってくれてる。
コレじゃいつもの逆だ…
「リチャード… ね、お願い。泣かないで…落ち着いて…
話を聞いて…」
「ファリア…??」
意外と落ち着いている彼女を見つめる。
真剣な顔をしてた。
「さっき… 話したでしょ? その…学校で犯されるかもしれないって…言ってたこと。」
「あぁ…」
「私ね、最悪の事態だけは避けたいって思ったの。」
「何?」
「その…犯されて、子供が出来る事。」
「!!」
僕は涙が止まるほど、驚いた。
「だから、私… 薬、飲んでるの。」
「薬?」
そう言われても僕はピンと来なかった。
「…経口避妊薬。」
「え!? えぇッ!! ファリア…君!!」
予想もしなかった単語に狼狽してしまう。
彼女は目の前で瞳を伏せていた。
「いつか誰かにって思ったら怖くなって… 考えたら恐ろしくなって…
考えたくなかったけど、ありえない話じゃないって。
本当に怖かった…」
「…いつから…飲んでるんだ?」
「……4月から。」
「そんなに前から!?」
「えぇ… 学校に行っている間は… 自分に緊張感を持たせるためにも…
絶対、大丈夫と言い聞かせていても… 不安は拭えなくて…
でも、休暇に入ってから意味は変わったわ。」
「え…?」
彼女は頬を染めて告げる。
「リチャードに抱かれる時は… そんなこと考えて欲しくなくて…
だから、気にしないで。大丈夫だから…」
それでも僕のした事は反省すべき事。
「ファリア…でも、ごめん。 僕の気が廻らなくて…」
ふるふると彼女は首を横に振る。
「…私のワガママから始まったのだもの… 気にしないで。
それに初めてのときはあなたを…直に感じたかったから…
邪魔されたくないって… 」
僕は彼女の言葉に感動を覚える。
「君はなんて…素晴らしい乙女なんだ… 今は僕の為にそうしてくれてる… ありがとう。」
「いいえ…あなたのためだけじゃない。私自身のためにも…
今、妊娠なんてできないもの。
でも…あなたに愛されたいって…私のワガママなんだもの…」
そこまで考えて… そんなに愛してくれてるファリアを尊敬の眼差しで見つめる。
「僕は…そこまで君に甘えていいのか?」
「えぇ… だっていつもは私があなたに甘えてるもの…
これくらい、いいのよ。」
彼女ははにかんだ笑顔を見せてくれる。
僕は本当に嬉しくて抱きしめた。
こんなに大切で愛しい存在はないと…
くちびるを寄せると彼女は瞳を閉じた。
深くくちづけようとするとその場に似合わない音が響いた。
"ぐぅ〜"
「あ…(汗)」
穴があったら入りたいくらいの気持ちになってしまう。
こんなに素敵な場で情けない。
「ごめん…ファリア…」
くすっと彼女は微笑を見せてくれた。
「もうこんな時間だもの…仕方ないわよ。」
僕たちが暖炉の上に置かれた時計を見ると1時30分を廻っていた。
「リチャード… 私が持ってきたバスケットにランチの用意があるのよ。」
「あ、そうだった。 キング号のところへ行って来るよ。」
「えぇ…お願いね。」
ベッドを降りてズボンを履いて、厩へと向かった。
キング号の荷物入れの中にあったバスケットを手に取り、主寝室へと戻る。
部屋に戻ると彼女は暖炉の前にシャツを着て座っていた。
「お帰りなさい。
少し…濡れちゃってる…」
バスタオルを手に立ち上がり、僕の髪と肩や背を優しく拭いてくれる。
「ありがとう…」
彼女は笑顔で首を振る。
(可愛いな… いつも。それに優しい…)
「リチャード… バスケット貸してくださる?」
「あ、あぁ。」
彼女にバスケットを渡すと暖炉の前で開けて、手際よくランチの準備をしていく。
サンドイッチにフィッシュ&チップス、それにサラダにポットに入ったミルクティ。
暖炉の前に大き目のトレイを置き、その上に並べていく中、ティーカップが目に入る。
「あれ…? ティーカップって持ってきたの?」
「違うわ。 あなたがバスケットをとりに行ってくれてた間に1階のキッチンで借りてきたの。」
「そうか…」
手際のよさに感心する。
「さ、どうぞ。」
「ありがとう、いただくよ。」
僕は彼女の前に腰を下ろし、目の前の料理を口に運ぶ。
自分でも驚くくらい空腹だった。
がっつくように口にしている。
心が満たされていると空腹も多少感じないと解った。
「コレ…君んちのスモークサーモンだろ?」
僕はサンドイッチに挟まれていたものに気づく。
「そうよ。」
「やっぱりパーシヴァル家の味って、僕 好きだな。
ウチのより美味いよ。」
「そう?」
彼女は優しい瞳で僕が食べているのを見ていた。
(きっと驚いてるんだろうな…)
ファリアの手が僕に伸びてきた。
「リチャード… 付いてる。」
「ん?」
僕の口の端にソースが付いていたらしい。
指で拭ってくれた。
その手を掴んで指のソースを舐め取ったら… 頬をピンクに染めていた。
何事もなかったフリをしてまた食べ続ける。
「ファリア… 食べてる?」
「えぇ…。」
「なんか…僕ばっかり食べてる気がするけど?」
「そんな事ない。 私…あんまりたくさん食べれない方だし…」
「確かに君が少食なのは知ってるけど…体力つけて。」
「え?」
「じゃないと思いきり抱けないよ。」
僕は少し照れ臭い気もしたけど口にした。
小さな声で彼女は言う。
「…リチャードのえっち。」
「うん。」
「うんって…否定しないの?」
「あぁ。多かれ少なかれ男はみんなそうだよ。
でも僕が抱きたいと思うのは君だけ。」
一気に耳まで赤くなるファリアの顔がうつむく。
手に持っていたポテトを口に放り込み、ミルクティで流し込む。
僕の食べっぷりを見て、彼女の表情が笑顔になる。
「…リチャードって細いのに、よく食べるわね。」
「そうかい?」
「やっぱり運動量が違うのね。」
「多分。」
彼女の手を取り、僕の素肌の胸に置く。
「君の胸は柔らかいけれど、僕のは筋肉だろ?」
「…えぇ。」
「エネルギーの消費量が違って当然さ。
それに僕は鍛えてる。」
「そうね、頼もしいわ。」
賞賛の言葉を聞いて嬉しさを隠さない。
「僕は…4年前のあの時から… 君を絶対守るって誓った。
君にふさわしい男になるって決めたんだ。」
「リチャード…」
彼女の眼差しはキラキラと輝いて見える。
「僕は待っている… いつか近い未来、君が僕の花嫁になる日を…」
「私も待ってるわ。 あなたの横にウェディングドレスを着て立つ日を…」
「僕が大学を出る3年後…位には。 遅くても5年以内には… その日が待ってると信じてる。」
「えぇ…」
僕たちはどちらからともなくくちびるを重ねた。
暖炉の前のやわらかな絨毯の上に彼女を押し倒す。
「…リチャード…」
僕たちはくちびるを貪りあっていた。
魂が融け合いそうなほど―
もう迷いもなく僕は言える。
「ファリアを愛している。誰よりもずっと…」
僕は未来の花嫁を抱きしめた― 強く―
言葉では足りない気がする。
だから想いを込めてキスする―
だから想いを込めて愛撫する―
僕を刻み付けたくて
僕を感じて欲しくて
全身全霊を懸けて僕は君を愛する。
―――僕の愛しい 恋人―――
Fin
to 〜epilogue〜
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(2005/8/18)
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