summer days  -1-







リチャード8歳、ファリア7歳の夏休みに入ってすぐ…



少女は父・パーシヴァル伯爵に連れられて、ランスロット城に遊びに来ていた。


今日は幼馴染の少女が遊びに来ると言うことで朝から機嫌のいい少年。






二人は陽の射す廊下に置かれていた大きなソファに腰掛けて話していた。




「ねぇ、夏休みの課題、手を付けた?」

リチャードは無難な話題を振る。

「うん。もう、絵描いちゃった。」

素直に笑顔で少女は答える。

「ホント?」

「リチャードは何かやった?」

「うん、僕は数学と作文。」

「もう??早いわね〜。」

「うん! 
…何か解らないところがあったら教えてあげるよ。」

少女に褒められ、満面の笑みで少年は応える。
隣で少女は呟く。

「…数学の課題、持ってくれば良かった…」

「今度持ってきたら教えてあげるよ。」

「お願いね。数学、少し苦手なの…」





そんな二人を探していたのは執事頭のアンダーソン。

「あぁ、こちらにいらっしゃいましたか…
リチャード坊ちゃま。ファリアお嬢様。」


「なんだい? Mr.アンダーソン?」


駆け込んできた執事に問いかける。


「お茶のご用意が出来ましたので…よろしければ。」

「行こうか?」

少年は優しい笑みで少女に問いかける。

「うん。」


二人が執事頭に連れて行かれたのは大居間。
すでにリチャードの母・メアリ夫人が座っていた。


「いらっしゃい。ファリア。」


夫人の前に進み、小さなレディは挨拶する。


「こんにちは。お邪魔しています。メアリ夫人。」


「ゆっくりしていってね。」


「ありがとうございます。」


いつもきちんと挨拶する少女を微笑んで見つめる。
ぺこりと頭を下げると黒髪が揺れた。

「ほら、二人ともお座りなさい。」


「はい。母上。」

「はい、ありがとうございます。」

二人の前にアイスティと焼き菓子が置かれる。


夫人は笑顔で少女に問いかける。

「ところで…、セーラ様とアリステア君はどうしてらっしゃるの?」

「まだ1歳半ですから…大変みたいです。母も乳母のダイアン夫人も。」

「まぁ…」


「私のときと全然違うって、母が言ってました。」

「そうね、女の子と男の子じゃ、ちょっと違うでしょうね。」


「いいな…弟がいて…」

少々羨ましい少年。

「そう?弟って言うか…男の子がいないとね…。
私じゃ跡継ぎにはなれないし。」

「そうだね…」

「そうよ。
男の子であるあなたがこのランスロット家の跡取りなのよ。」



そんなやり取りの中、ランスロット公爵エドワードとパーシヴァル伯爵アーサーが入ってくる。
仕事の打ち合わせを済ませてきた二人の父。


「もう始めてたか…」

「えぇ。」

妻の横に腰を下ろすエドワード。
一人がけのソファに座ったのはアーサー。
アーサーは少年に笑顔を向ける。

「そういやリチャード君、おめでとう。 学年末の馬術の校内大会で優勝したそうだね。
娘から聞いたよ。」

「いえ…」

率直に言われ照れ臭くなる少年。
思い出したように父は叫ぶ。

「そうだ!リチャード。ご褒美に欲しいものはないか?
何でも買ってやるぞ。」

「ホントに? 父上?」

驚きの顔を見せる息子に笑顔を向ける。。

「あぁ。」

「でも…僕、今、欲しいものないや。」

少し残念な顔を見せる。

「そうか…。   じゃ、何かしたいこととかないか?
行きたいところとか?夏休みに入ったばかりだしな。」

「う〜ん… 去年みたいに海に行きたいな。」

「そうか…じゃ、今年は早めに行くか。」

「うん!」

無邪気な笑顔を見せる息子の頭を撫でる。



父子の会話を聞いてアーサーは娘に声を掛ける。

「そういえば…ファリア。お前は海行ったのって3歳の時だけか…」

「うん。」

「今年はアリステアも連れて行ってやろうな。」

「そうね、お父様。」




少女と父の会話を聞いてついポツリと呟く。

「あ…じゃ、僕達と一緒に行けたらいいね。」

「…え?」


突然の言葉に驚く少女。
息子の発言に同意するエドワード。

「そうだ!ウチのニースの別荘に一緒に行かないか?
勿論家族4人で来てくれ。な、アーサー?」

「いや…しかし…4人もお邪魔させていただくのは…」

「遠慮する間柄でもないだろう?」

困惑してた父に娘は言う。

「私、行きたい!ねぇ、ダメなの?お父様?」

娘にねだられてはますます断れない。
少し考えて返事する。

「じゃ…エド。 私と娘だけお邪魔させてもらっていいか?」

「いいとも。 …でもいいのか?
セーラ夫人とアリステア君を置いて…」

「まだ手のかかる1歳半の息子だからな。」




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(2005/6/16)
(2015/04/29 加筆改稿)


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