Step back in time   -1-




ランスロット公爵家の跡取り・リチャードが
ガニメデ星出身の娘シンシアを連れて帰ったことは一族を驚かせた。


確かに6年前に許婚であったファリア=パーシヴァルを失った彼にとって
新たな恋が一番の特効薬だと理解していても
両親はおろか親族までもがシンシアとの結婚に猛反対。


理由は勿論、ガニメデ星出身である事、孤児院出身である事、
そしてろくに学校も出ていないこと…





とりあえず彼はシンシアをロンドン郊外のアパートに住まわせ、
遠縁の叔母に教育を頼んだ。

ロンドンのランスロット邸にも、グラントベリーの城にも彼女の居場所はないと感じたからだった。



パーシヴァル家令嬢が生きていれば一番よかったと愚痴る祖父。
少なくとも英国貴族の娘を彼の嫁にと考えていた両親と親族…





ここまで猛反対されるとは思いもしなかった彼は
迷い始めていた…












   *****




デスキュラとの戦争が終結し、やっと宇宙に平和が訪れた。

各星の人口が今、どれくらいなのかを調査する為に連邦政府は調査団を結成し、
ガニメデ星だけでなく、アステロイドのそれぞれの星を調査するために奔走していた。



そんな中、不思議な通信が調査団に入る。


彼らに通信を送ってきたのは―――新たなる異星人。


彼らに言われるまま、行きついた星は117号アステロイド。
それは大型の岩石の塊だと思われていた。
しかしそれは強力なシールドで守られた人工惑星・デロス。


その星に暮らしていたのは…カリオナ星人。
デスキュラ人以外の異星人の存在に驚く一団。


彼らがデスキュラ星人と真逆の性質だと解ると
連邦政府は和平交渉を持ちかける。


交渉の席に、彼らの前に現れたのは美しい乙女―
カリオナ人たちに"姫"と呼ばれていた。



彼女は自分が地球人だと言い出す。
証拠を見せろと調査団の団長に言われても何もないことに気づく。

しかしひとつだけ証明できる事がある。


調査団の人間に小さなナイフを借りた乙女は
その刃で手のひらをうっすらと裂く。

滲んできたのは紛れもなく地球人の赤い血。

デスキュラ星人は緑、カリオナ星人はワイン色をしていた。






そうしてやっと自分が地球人であることを認められた姫は
そこで初めて自分の本当の名と身分を明かす。
すぐに調べられる…


その結果、姫は "英国人・ファリア=C=パーシヴァル"だと判明。
6年前の"アテナU号襲撃事件"の行方不明者の一人だと言う事…


そしてデロス星の地下に眠る地球人38名を母なる大地・地球に返したいと彼女は願う。
その中には彼女の母親も含まれていた…




数日かけての調査と交渉の結果、カリオナ人はこのままこの星・デロスに居住する事。
そして一般の地球人には関らせない事と決まった。
まだデスキュラとの戦争が終わったばかりのこの時期に
新たな異星人の存在はショッキングだろうと言う事で公表を控える。


姫―ファリアと38名の遺体を地球へと…







それは奇しくも戦争終結宣言が出された日の1ヶ月後のこと…



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(2005/10/6)
(2006/1/30 加筆)

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