so sweet -4-
進児とマリアンはとりあえず宿を取る。
取れたのはロイヤルウェントワースホテル。
ふたりはツインの部屋に。
「これからどうやって探そうかしらね… 進児君?」
貨物船の船長とちょっと話したときにリチャードがまだこの星にいることがわかった。
しかし いくら人口の少ない星とはいっても街は3つある。
首都・イナルにカクサ村とダラゴ村 ―合計しても人口8000名ほど。
「ま、明日から頑張るさ。 今日はゆっくりしようぜ。」
「…うん。」
「とりあえずメシに行くか。」
二人は連れ立って2階のレストランへ。
フロアマネージャーが出迎え、ふたりをテーブルに案内する。
ふと目に付いたのは―――見覚えのある金髪の後頭部。
「え? リチャード?? …まさか…?」
「ちょ… ちょっと、進児君?」
同じテーブルに黒髪の乙女がいる。
廻り込んでみると横顔ですぐに解った。
「…リチャード…」
不意に呼ばれ振り返った彼はその場に立つ進児を見て驚く。
まさに青天の霹靂に近い驚き。
「って!! …進児!? 何でここにいるんだ?」
「お前… 実家に連絡したらいないし… マリアンとふたりで探しに来たんだ。
ま、3日目で見つけられてよかったよ。」
「は?? わざわざ探しに来たということは何か緊急の用事か?」
真剣な顔で進児に問いかけるが当人は恥ずかしげに頬を掻く。
「いや… みんなでスキーに行こうって声掛けるつもりだったんだけどさ、
ビルには振られるし… せめてリチャードだけでもと思ったら
お前までいないしさ。
で、スキーの代わりに探しに来た。
…で、ひょっとしなくてもそっちの彼女が例の話の…??」
進児は彼の斜め横に座る黒髪の乙女を見て言う。
「あぁ…そうだよ。」
彼は彼女のそばに行き、手を引き立たせる。
「紹介するよ。 僕の花嫁のファリア。
で、こっちがビスマルクチームの進児とマリアン。」
乙女は初めて会う二人に挨拶する。
「初めまして… よろしくお願いします。」
「あ、どうも。」
進児が鼻の下を伸ばすのを見て、小突くマリアン。
「よろしく、私、マリアンよ。」
「えぇ…こちらこそ。」
リチャードはギャルソンを呼ぶ。
「あぁ、すまんが僕達のテーブルに二人分の用意を頼むよ。」
「かしこまりました。」
すぐにセッティングされ、4人のテーブルとなる。
料理も速攻、運ばれ始めた。
「それにしても…リチャード、おめでとう。」
「あぁ、ありがとう。」
男ふたりの顔には満面の笑み。
ファリアはエリック以外に彼の親友を知らなかっただけに少し驚く。
「え?」
「あぁ…私達ね、ちょっと…あなたのことをリチャードから聞いていたの。」
淡いブロンドを揺らしマリアンが言うと彼を振り返る。
「…そうなの?」
「あぁ…」
彼は少し照れ臭そうにしていた。
「見つかってよかったな…」
「ホント、ホント☆」
進児とマリアンの前にいるリチャードの表情は
ビスマルクチームの頃とちょっと違って見えた。
以前から自信家でクールなリチャードと思っていたが
彼女に向ける顔は柔和な感じがした。
それからしても彼女にベタぼれだということが解るほど。
ビスマルクに乗り込んでいたときは確かに戦争中でいつも緊張状態。
みんな険しい顔をしている事も多かった。
ハードな任務だっただけに無意識に4人とも気を張っていた。
戦争が終わって、ドメス将軍の戦勝記念パーティの時でも
リチャードだけは何処か3人と違っていたことを思い出していた進児とマリアン。
リチャードにとっての戦争は、
彼女を見つけ出したことによって終わったのだと感じていた。
東洋人である進児と比べてもフェミニストな西洋人のリチャード。
愛する女性に対して彼はストレートに愛情を示している。
リチャードたちふたりを目の前に当てられっぱなしの進児とマリアンがいた。
途中から来た二人の為に夫妻は少しメニューが進むまで待っていた。
メインディッシュは4人揃って楽しむ。
最後のデザートまで来るとすっかり笑顔で打ち解けているファリア。
笑顔の溢れるテーブルになっていた。
新妻は目の前に座るマリアンが進児に恋していることにすぐ気づく。
(まだ恋人未満…って感じかしらね?)
まるで昔の自分と重なる気がした。
「進児たちの部屋は何処に?」
「あ? 俺達は17階の…1711。ツインの部屋だよ。」
「そうか… もうちょっと話したいし、…部屋に来いよ。」
リチャードの言葉に進児は驚く。
「へ?」
「25階のスイートでカウンターバーもあるしな。」
「そうね、飲み物は出せるもの。」
笑顔でファリアも同意する。
「じゃ、行くかマリアン?」
「うん!」
*
4人はスイートの今のテーブルを挟んで腰を下ろす。
ファリアはカウンターバーの奥の冷蔵庫と戸棚から、
グラスやボトルをトレイに載せ、テーブルに運ぶ。
バーにいた頃に一通りのお酒の飲み方、入れ方を見知っている。
グラスに氷とスコッチを入れ、彼の前に置く。
進児とマリアンにはソフトドリンクを出そうとするが彼に止められた。
「ワイン出しておけば?」
「…いいの?」
進児を振りかえるリチャード。
「ワインぐらいなら飲むだろう?」
「まぁな。」
彼女はワイングラスとボトルを持ってくる。
酒が入ったコトもあって少々オープンな話もする男ふたり。
照れたマリアンを見かねてファリアは隣のベッドルームへと連れて行く。
「…もう…男の人って…(汗)」
「ごめんなさい。ファリアさん。」
「いいのよ。 もう…年頃の乙女がふたりいるっていうのに…もう…」
人妻には見えないファリアがマリアンに笑顔を浮かべて困った表情を向ける。
「でも…」
「でも?」
「私、進児君ならいいのに… って思ってる。」
「そうだったの…」
ファリアは自分の目の前のブロンドの美少女の悩みを察した。
目を細めて話しかける。
「私も…15,6の頃、同じ悩みを抱えてたわ。」
「え?」
「ずっとそばにいたい。
リチャードなら何されてもいいって…」
マリアンはそう告げたファリアの顔を見つめる。
懐かしげな、でも嬉しそうな表情。
「ファリアさんは…いつ初めてを迎えたの?」
少し頬をピンクに染めて答える。
「あのね、例の事件、知ってるのでしょ?」
「うん。」
「あの…一週間前。」
「えーーー!!!」
意外な返答にマリアンは驚き叫ぶ。
「だから…16歳と10ヶ月…かな?」
「そうだったんだ。
私が今、16歳と4ヶ月なの。」
「でも…焦っちゃダメよ。」
「え?」
「今日の進児君、お酒の力とかで冷静さを失っていると思うの。違う?」
「…多分そう。」
「…それじゃ、今日はイヤでしょ?」
「ちょっと…」
「こっちから行って恥ずかしい思いをするのもイヤでしょ?」
「そうね…」
「じゃ、時期を待ったほうがいいわ。」
「うん…」
まるで姉と妹のようにふたりは真剣に話していた。
しんみりとしている乙女ふたりのいるベッドルームにリチャードがやってくる。
「…ファリア。いつ戻ってきてくれるんだ?」
「あ、ごめんなさい。」
少し酔いの醒めた顔のリチャードの顔。
ベッドに腰掛ける乙女ふたりを見て彼は花嫁の横に腰を下ろす。
いきなりくちびるを奪われた。
「んッ!! ダメ… マリアンが見てるのよ。」
「じゃ、戻ってくれる?」
まるで駄々っ子のような彼に戸惑いを憶えながら立ち上がる。
「解ったわ。マリアン、戻りましょ。」
「そうね。」
今に戻ると進児が一人でワインボトルを丸1本空けていた。
その様子にちょっと驚く。
「リチャード… 飲ませすぎじゃないの? 未成年に…」
「大丈夫だろ?目、据わってないし。」
「少し眠そうね。」
「しばらくそのままにしておけばいいさ。」
「進児君、部屋に戻ろうか?」
マリアンが隣に腰を下ろすと半分まどろんでいる進児の顔。
思わずマリアンに寄りかかっている。
「あぁ、もう…仕方ないわね…」
リチャードたちは向かいのソファに座って、その様子を笑って見ていた。
マリアンの視線は進児の顔を覗き込んでいる。
彼は再びファリアにキスした。
「ん…」
しかもさっきと違って抱き寄せ、深くくちづけられる。
抵抗できなかった。
空気を察してマリアンが顔を上げて向かいのふたりを見ると濃厚なキスシーン。
リチャードの腕の中でファリアが頬を染めて身をよじっていた。
彼の手は肩をさすったり、胸に触れたりしている。
「あ… ん… ダメ…」
スコッチの味のするくちづけにファリアまで酔いそうになる。
目の前の光景を見て、マリアンは見とれてしまう。
美しく清楚な乙女と思っていたファリアがリチャードの腕の中で乱れる様は
同性から見ても奇麗で艶やかだ。
「あ…」
自分の身体の異変に気づくマリアン。
鼓動が高鳴る…
身体が火照る様に熱い…
そして何より脚の奥に生まれた疼きと熱を感じていた。
(ヤダ… 私…)
「やん… リチャード…」
彼の手はワンピースの上からヒップを撫でたかと思うとスカートの中へと侵入していく。
「あ、イヤ。こんなところで… マリアンも見てるのに…」
彼の手を掴み、止めさせようとする。
「…しょうがないなぁ…」
リチャードは軽々と抱き上げてベッドルームへと連れて行く。
マリアンはどきどきしながらふたりの様子を見ていた。
目がトロンとしていた進児だったが
さっきからのファリアの嬌声で少ずつ覚醒していた。
だいぶ酔いも醒めている。
「マリアン…?」
ベッドルームへのドアの前に佇むマリアンに声を掛けた。
「あ、進児君…」
「リチャードたち…入っていったよな…」
「…うん。 ドア開けっ放し…」
頬をピンクに染めたマリアンが答えた直後、中から声が聞こえる。
「やん… リチャード…ダメよ。」
「…ん?」
「進児君たちいるのに…」
彼を制止しようとするが、彼の手が力強く彼女を捉えていた。
「…いいよ。 見せ付けてやるんだから…」
「…え?」
「何も隠す必要はない。
君を愛していると世界中に見せ付けてやりたいくらいさ…」
耳元で熱い吐息と共に囁かれ、身体も心も痺れていた。
「だけど…」
まだ羞恥心の残る彼女の唇を強引に奪う。
「んんッ…!!」
ベッドに押し倒されたまま、背中のファスナーを一気に下げられ、奪われる。
「あ…やッ!!」
可憐なブラとショーツだけの姿にぞくぞくとした興奮を覚え、
恥らう姿が拍車をかける。
「ダメ…ダメよ…」
腕と手で胸元と股間を覆い隠そうとするが彼の手はあっさりと外していく。
力づくではない。
そのまま白い胸の谷間にくちびるを落とす。
「やッ…あぁん…」
ゆっくりと舐められ、吸い立てられると甘い快感が身体を巡る。
「はぁ…ん…ダメ…よぉ…」
つつっと舌先を滑らせ白い首筋へと上がっていく。
両手は彼に囚われ、指を絡めていた。
彼の熱い唇から痺れるような感覚に襲われる彼女は彼の手を握り締めている。
「ファリア…愛してる…僕の…ファリア…」
「あぁ…ん… リチャード…」
甘く低い声に胸まで痺れた。
無意識に腰が震え、ひざをすり合わせていた。
すでに身体の奥が熱く疼いている。
すっかり力の抜けた彼女の身体からブラを奪い取り、ショーツも奪う。
何一つまとわない全身はほんのり薔薇色に染まって見える。
「可愛いよ…」
「あ…あん…」
彼が深くくちづけると彼女の細い腕が廻る。
金の髪を指先でかき乱していた。
彼にとってそれは快感に繋がっていく。
彼の指先が白くすべらかなおなかを撫で、へそをなぞり、
さらに下へと向かう。
やわらかな草むらを掻き分けてゆくと、
甘く切ない声が可憐なくちびるから漏れた。
「はぁ…ん…はぁ…」
もう意識は融けて、進児とマリアンがいることさえも吹き飛んでいた。
to -5-
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(2005/9/23)
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