so sweet -3-




花嫁の頬を雫が零れ落ちていた。
神父とメリルたちに見守られふたりは腕を組んでバージンロードを歩いていく。


教会の扉を開けると大勢の村人達の笑顔。

「!? え?!」

乙女は再び驚く。

「おめでとう!! フェアリー!!」

「あ…」

ライスシャワーを受ける二人。
そんな中、花嫁はぽろぽろと涙が溢れた。


花婿が囁く。

「ブーケ、投げてあげなよ。」

「あ、そうね。」


花嫁が声を掛ける。

「みんな!!行くわよ!!」

可憐なブーケは空を舞い、一人の女性が受け取った。

周りの視線が集まる中、受け取った女性は苦笑い。

「って、あたし、既婚者…(汗)」

それでもみんな笑っていた。



彼は手を取り歩き出そうとする。

「それじゃ…行こうか?」

「え?」

人波の向こうにはスペースホース・ドナテルロの姿。
彼は花嫁を乗せ、自分も跨る。

人々の歓声をあとに駆け出すドナテルロ。


「って、何処に行くの?」

「…イナル。」

「このまま?」

「そう。」

180キロの道のりを約3時間弱かけて二人は行く。
花嫁はしっかりと花婿に抱きつく。
笑顔の彼は美しい自分の花嫁を見つめていた。





到着したのは首都イナルで一番大きなホテル・ロイヤルウェントワースホテル。

ドナテルロをホテルマンに任せ、
彼女を抱き上げたままエントランスを抜け
エレベーターに乗り込む。

「ちょっと… いいの?」

「勿論、手配済みさ。何も心配しなくていいよ。」


エレベーターは最上階の25階で止まる。
ホテルマンがふたりエレベーター脇に控えていた。
リチャードが抱きかかえているので、部屋のドアを開けてくれる。

入った部屋はもちろん、スィートルーム。

やっと降ろして貰えるかと思ったが、そうでもなかった。

「ちょっと…下ろして。」

「ヤダ。」

ベッドルームのドアも開けてもらい、中へ入るとホテルマンは閉めてさっさと出て行く。

リチャードはベッドに下ろし、腰掛けさせた。


「もう…驚いてばっかりだわ。」

「はは…」

白のタキシードのリチャードが屈託なく笑う。
作戦成功を喜ぶかのように。


「…ファリア…」

しかし次の瞬間には真顔になった彼が横に腰を下ろす。


「…はい?」

「確かにまだ…書類上は、手続き上はまだ夫婦じゃない。
けど、僕にとっては…あの日が始まりで、今日はまた違う始まりの日。

僕は神じゃなく君に誓おう。
君だけを一生愛する。ずっと守る。ずっと離れない。
…死がふたりを別つても…離れないよ。 …ファリア…」

彼の言葉を聞いて、ぽろぽろと涙する。

「あ、あぁ…

私も… あなただけを愛するわ。
私もあなたを守りたい。
ずっと離れないわ。
例え死が私達を別つても…リチャードを愛してる…」

彼の瞳からも涙が零れる。

「愛してる… ファリア…」

ふたりはくちびるを重ねる。
長く深く…


彼の指先は露わになっている白い肩先を撫でる。
くちびるが離れると彼の手はヴェールを外した。

「あ…」

「愛してるよ、僕の花嫁…」

「私も愛してる…」

彼の手はドレスの上から彼女を愛撫していた。

「ん…」

花嫁の手は花婿の蝶ネクタイを外し、ウィングカラーシャツのボタンを外していく。
ふっと彼は身を離し、ジャケットとベストを脱いで投げ捨てた。
カマーバンドを外している彼のシャツのボタンをすべて外していく細い指先。
精悍な胸板がさらけ出される。

「あ…」

薄暗くなり始めた窓の外―


部屋の中は間接照明でほんのりとした光を放っているのみ。

その中に浮かぶ…白い胸板は陰影のせいか男の色気を放っていた。。

花嫁の目は釘付けになる。

   (なんて… 逞しくて、子供の頃に見たギリシャ彫刻みたい…)


見惚れている花嫁を抱きしめ、背中のファスナーを一気に引き下ろす彼の手。

「あ…」

「ごめん。ちょっとそこに立って。」


ベッドの横に立つと、ドレスの裾を持ってパニエを脱ぐ。
するとするりと身から落ちていくドレス。

真っ白のブラにガーターベルト、シルクのショーツ。
恥ずかしくて顔と身体をほんのり薔薇色に染めている。

しかし自分でパンプスを脱ぎ、ベッドの上の彼のそばへ。


「奇麗だ…ファリア。 
僕の花嫁…」

「リチャード…」

熱い瞳で見詰め合うふたりはシーツの海へと泳ぎ出す。


一晩中、ふたりの甘い声が響いていた―――












   *****



―結婚式翌日

彼に連れられ、連邦軍基地へと。

通信も制限されているために彼女のIDの復活に少々時間がかかるということになってしまう。


「ま、いいさ。急いで帰る必要もないしな。」

「そうなの?」


彼ののんびりとした言葉に少々驚く。

「あぁ…父上に1年と言う時間を貰っているから、
来年の9月いっぱいまでに帰れば問題ないし。」

「…そうだったの…」

彼に笑顔を向けられる。

「そう。 …君のIDが復活したら、しばらく ふたりで旅でもしようか?」

「え?」

「急いで国に帰って…すぐ結婚もいいけど… ふたりきりとは限らないだろ?」

「あ。そうね。」


英国に帰れば公爵家の跡取りとして、公爵家の令嬢としての立場が待っている。


「半年くらいは… ふたりだけでさ…」

「えぇ…」






そんな訳でしばらくホテルのスイートに滞在。

連邦側が部屋を用意すると申し出たが彼はあっさり断る。


ふたりだけでいたい―――

他人に干渉されたくないと思っていたので丁重に断った。

IDの件での連絡待ちということで連絡先だけは基地司令に伝えておく。








   *


―一方、地球で


進児とマリアンがみんなでスキーに行こうと企画していた。

ビルに連絡すると、既にカナダに行っていた。
もちろん、ジョーンとふたりで。

進児がリチャードの実家・ランスロット城に連絡すると不在だと告げられた。

「いつ戻るんですか?」

「さぁ… 私どもは当分、旅に出られるだけとしか聞いておりません。」

「旅? 地球で?」

「存じません。申し訳ありません。」


通信を切ると進児とマリアンは顔を合わせる。


「どういうことだろ?…リチャードのヤツ…??」

「何処行っているのかしらね?」

「なーんか気になるなぁ…」

進児は思い当たるふしがないので頭をひねっている。

「私、調べてみるわね。」

「ホントか?」

驚きの目をマリアンに向ける。

「任せてよ!! 進児君の時もちゃんと見つけたでしょ?」

「あ。そうだな。」


進児は思い出していた。
ビスマルクマシンと共にガニメデにいたのを見つけ出したマリアンのことを…




丸一日かけてマリアンは調査の結果を出した。

「リチャード… どうやらレト星に行ってるらしいわ。」

「は? レト星って…あの?」

「そう。 なんでまた…」

マリアンも意外な結果に驚いている。

「マリアン… リチャードのヤツ探しに行ってみないか?」

「え?」

「ひとり旅でレト星っておかしいだろ?」

「確かにそうね…」



マリアンと進児はルヴェール博士にリチャードを探しに行くといってフランスを地球を出た。


丸2日かけてレト星へ。



「何か手がかりってあるのかなぁ…?」

定期船の暗い窓の外を見つめて呟く進児。
隣のマリアンが答えた。

「ね、進児君。 管制センターのフランツさんのトコに行ってみない?」

「へ?」

「レト星で顔見知りなの…あの人くらいでしょ?」

「ま。そうだな。とりあえず行ってみるか。」



レト星へつくとふたりは管制センターのフランツ所長のところへ。
彼は笑顔で出迎えた。


「やぁ…ご無沙汰してます。あの時はありがとうございました。」

「いえ… ところでフランツ所長。
お尋ねしたいのですが、俺達の仲間のリチャード=ランスロットが来てませんか?」

フランツは驚くことなくあっさりと答える。

「あぁ…10日位前に…来られましたよ。」

「「!?」」

マリアンと進児は顔を合わせる。

「で、何処にいるかご存知ありませんか?」

マリアンが問いかける。

「え?」

「実は俺達、リチャードを探しに来たんです。」

「そうだったんですか…」

「何処にいるのか知ってらっしゃいます?」

再びマリアンが尋ねると意外な答え。

「あぁ…彼はフルシーミ星に人を探しに行くと言ってましたよ。」

「人探し?」

「えぇ…なんでも行方不明になっている婚約者を探すとか…
旧コンピュータのデータを見て。彼はフルシーミ星へと。」

「聞いたことのない星ね…?」

マリアンの呟きにフランツは答えた。

「鉱山の星でね。
彼にも説明したのですが…人口が少ない星で、
一般人の出星許可が下りないんですよ。」

「「!?」」

ふたりは目を丸くして驚く。

「彼やあなた方なら大丈夫ですよ。出入りは出来ます。」

「じゃ、俺達が行っても大丈夫だってことですよね?」

「えぇ。」

「行ってみるかい、マリアン?」

「そうね。」

ふたりはリチャードがいるという星へ行くことにする。

「えーと…次のフルシーミ星行きは…
あと2時間で出発ですな。」

「「!?」」

「すぐに基地の発着ポートへ行ってください。
私のほうからも頼んでおきます。」

「すみません。」


進児とマリアンは慌てて、フルシーミ星行きの貨物船に乗り込んだ。
半日ほどで到着する…





to -4-
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(2005/9/23)



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