smile -1-  #1 girl&girl





平穏な毎日を繰り返すうちに少年も少女も大人になっていく…
変化はいつも突然やってくる―

リチャード、ファリアともに12歳の中等部、晩秋のある日…




−女子部

担任のシスター・レイチェルは出席を取り、連絡事項を告げる。

「今日は2限目の体育と4限目の国語が入れ替わります。」

「「「「え〜。。」」」」

少女達の口から少々不満の声。

「体育のアン=セイヤー先生が少し遅れるそうですので、止むをえません。」

仕方がないとった風情で少女一同は一応納得する。


「しょうがないわよ。ね、リズ。
先生にだって何が都合があるのよ。」

「しょうがないなぁ…何してるんだろ?アン先生…」

1限目の数学教師が来るまで少女達は他愛もない話をしていた。


始業のベルが鳴ると同時に数学のマルガリス先生が教室に入ってくる。

小テストのあと、授業は進められる。。。

2限目は国語となってしまったため、そのまま教室に留まる少女達。
3限目は世界史。



少々眠気を覚える授業を経て、体育のラクロスのためロッカールームへと駆けて行く。

今日は2チームに分かれての試合。

ランニングと柔軟体操を軽く済ませ、ラクロスのスティックを持つ。


少女達はプリーツスカートの裾をひるがせ、コート内を走る。

前半、ファリアからのパスを受け、リズが放ったシュートが決まる。

ファリアとリズのいるAチームと対するBチームの得点差は僅か1点。
前半はリズのシュートで勝ち越していた。

後半に入り、お互い熱のこもった試合が展開される。

後半開始3分…
コート内を走っていたファリアの視界は揺れていた。

  (え? あれ…? なんでコートが近づいてくるの?)


次の瞬間、少女はコートに倒れていた。

リズたちがすぐに駆け寄るとファリアは顔面蒼白。

「大変!!」

アン=セイヤー先生は抱き起こすが
少女は目覚めない。

「みんな!! 少しタイム!!
Missパーシヴァルを保健室に連れて行ってくるから…」

「「はい。」」

みんなが返事する中、リズが挙手する。

「あの…先生、私も行かせて下さい。」

そんな様子を見てAチームのメンバーは困惑する。

「やだ、行かないでよ、リズ。」
「え?」
「リズとファリアのコンビネーションも必要だけど
リズがいてくれないと得点力が…」
「あ…!? う…」

リズは少々考えた。
親友のそばについていてあげたいけど、チームメイトの気持ちもわかる。

「ごめんなさい、先生。
ファリアの事、よろしく。」

「えぇ。」

小柄な少女を抱き上げたセイヤー先生は保健室へと向かう。




保健室に着くとベッドに降ろし、保険医に少女の倒れた時の状況を説明する。

「わかりました。
おそらく貧血でしょう。
Missパーシヴァルは初等部の頃から何度か倒れてますから。」

保険医・Missクルスは少女の顔を覗き込んで告げる。

「解りました。
Missパーシヴァルのこと、よろしくお願いします。」

「えぇ。」




セイヤー先生がコートに戻り、試合は再開される。

なんとかリズがメグとのコンビネーションで追加点を上げ
Aチームは逃げ切った。


試合も終り、4限目も終わるとリズは慌てて制服に着替え
昼食も摂らずに保健室へ―




―少し前

ベッドの上でファリアは意識を取り戻した。

「大丈夫?Missパーシヴァル?」

「あれ…? クルス先生?? ってことは保健室?」

黒髪の少女は久しぶりに見る保険医の顔を見上げる。

「そう。 あなたラクロスの試合中に倒れたのよ。
…憶えてる?」

「えぇ…私、どうしちゃったの?」

「貧血ね。 
4限目ってこともあったんだろうけど
スタミナ不足ってトコかしら?」

少女は頬を染めて、上掛けで顔を覆って告げる。

「あの…先生、私ね、3日目なの…」

「え? あ…そうだったの…
それじゃ仕方ないわね。。
身体がきつい時とかある?」

「少し…」

少女の黒髪をなで、保険医は問う。

「あなた…いつ始まったの?」

「えっと…12になってすぐ。」

「じゃ、まだ2回目か3回目?」

「はい。3回目…です。」

「そっか… ホルモンのバランスとかのこともあるからね。
栄養不足とかじゃなくて。」

「そうなんだ…」


恥ずかしげにはにかみながら少女は応えていた。


「他に頭痛いとか、腰が痛いとかはある?」

「少し…」

「そっか。
いずれにしても今日は早退した方が良さそうね。
ちょっと横になって待ってて。」

「はい。」




クルス保険医が机で保護者宛の手紙を書いている時に
4限目の終わるベルが鳴り響いた。
すぐに誰かが駆け込んでくる音―



「ファリア!?」

「え? あ…リズ!!」

駆け込んできた親友はネクタイもマトモに締めていない状態。
髪もぐしゃぐしゃ。
かなり急いできたのだと解る。


「大丈夫なの? 顔色…あんまり良くないね。
クルス先生、ファリアはどうなの?」

保険医を振り返り、リズは問いかける。

「貧血よ。女の子特有の…」

「え…あ…そうか…
ファリアってそろそろだったよね。」

始まった頃にリズにだけは打ち明けてある。
彼女も既に始まっており、その言葉ですぐに理解していた。

「うん…ごめんね。リズ。
試合、どうなった?」

「メグとリリーが頑張ってくれたからなんとか勝てたよ。」

「そう…みんなに謝っておかなきゃ…」

身を起こそうとする親友を止める。

「寝てなさいよ。」

「え?」

「みんな女の子よ。 訳は話さなくても…解るから。。
謝る必要なんてないよ。」

「でも…」


ふたりの少女がやり取りしているところへ
大人でグラマラスなクルス先生が来る。

「Missパーシヴァル。
今日は早退しなさいね。
それからこの手紙を保護者の方に…出来ればお母様にお渡ししてね。」

「はい。」

手紙を受け取る少女の顔色を見る。

「もうちょっと横になってなさい。
それから…エリザベス=マーシャル。 
あなたはランチを摂ってしっかりと午後に備えなさい。
テニス部の未来のエースでしょ?」

「う…わかりました。
ファリア、無理するんじゃないよ。」

「うん。ありがとう。リズ。

あ!! ちょっと待って!! 
お願いがあるの。」

「何?」

「今日の放課後に図書館でリチャードと会う約束してるの。
彼に伝えておいてくれないかしら?
私は早退したから行けないって…」

申し訳なさそうに少女はリズを見上げて言う。

「…いいよ。 図書館のいつものトコね?」

「えぇ。ごめんなさいね、リズ。」

「いいわよ。それくらい。」




リズは笑顔を残して保健室を出る。


少女は親友の幼馴染・リチャードに少々嫉妬していた。

自分より早く彼女に出会っている。
しかも彼は公爵家の跡取り。
それにこの学院始まって以来の天才とまで言われていた。
本来なら飛び級で
高等部もしくは大学部にいてもおかしくないほどの頭脳をもっていながら
年相応の学年に留まっている。

リズはそのわけを察していた。

 −きっとファリアと一緒にいたいからなんだ…


それほど幼馴染への愛情を抱えているのに
彼は彼女に気持ちを告げていない。
自分がもし男だったら、速攻打ち明けて
相思相愛になりたいとさえ願う。。。。
少々複雑な想いで放課後を迎えることになってしまう…





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(2006/2/23)


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