Silver Ribbon* -1-


リチャードと幼馴染のファリアは同じ学校に通っていても
男子部女子部に別れているので そうしょっちゅうは会えない環境の中にいた。

初等部2年のふたりはこの日、
男子部女子部合同で体験学習という名目でスケートリンクに行く事に―



10人にひとりのコーチが付いて、滑り方やこ転び方を教えてもらう。

子供の彼らは飲み込みが早く、すぐに身体で覚えていく。


少女ファリアは冬のスコットランドの城で池に氷が張ると
いつも滑っていたので誰よりも上手に滑っていた。

そんな少女に目をつけたのは
このリンクでフィギュアスケート選手を育てているスチュワート=レイ(30)


他の子と動きが違う少女に視線が止まる。。。



思わす声を掛けるレイ。

「あの…君。。」

「はい?」


呼び止められた少女は綺麗に止まってみせる。
その身のこなしも只者ではない。

「何処かでスケート習っているの?」

「え? …あの…」


困惑してしまう少女のそばに幼馴染の金髪の少年が駆け込んでくる。
まるで少女を庇うように立つ。

「どうしたの? ファリア?
誰? このおじさん?」

「おじ… ま、君たちから見ればおじさんか…
仕方ない…
僕はスチュワート=レイ。
このスケートリンクでフィギュアスケートの選手をコーチしてる。
ね、お嬢ちゃん、何処でスケート習っているの?」

自己紹介をし、照れ臭そうにするレイを見て
少女は応える。

「えっと… ウチのお城の馬丁から。」

「は?」

思いがけない応えに驚く。

「あぁ…ファリアんちのお城の池って冬になると氷張るもんな。」

「へぇ… そうなんだ。」


レイは今日ここに来ている子供達が名門の家柄の子女だったことを思い出した。




少々人見知りする少女は言葉少ない。
代わりに少年が問いかける。


「おじさん、なんでファリアに声掛けたの?
スカウト?」


「あ? あぁ、そうだよ。
他の子と比べて全然上手だし。
君もだね。」

リチャードにも声を掛けるレイ。

「あ? そうかな?」

自分も褒められ気分のいい少年。

少年の駆けつけてきた時のスピードとエッジ捌きに気づいていた。

「ね、君たちは幼馴染?」

「うん、そうだよ。」

「君もスジがいい。
どう? フィギュアスケートに興味ない?」

「「え…?」」

少女も少年も真剣な顔で戸惑う。


「…僕はともかく、ファリアはどう?」

「私? う…どうしよう。
リチャードはどうなの?」

「僕としては… フェンシングも馬術もしてるから
フィギュアスケートのひとつくらい増えたって全然OKだけどね。」

彼の言葉に少女は考え込む。
自分は少々、運動が苦手と思っていたので困惑していた。
声を掛けたレイに首をかしげ問いかける。

「私…スジがいいの?」

「あぁ、そうだよ。
バレエとかしてるの?」

「うん。3歳の頃から。」

「そうなんだ。
…ねぇ、ご両親と相談してからで構わないから…
スクールに来てみないかい?」

レイは名刺を二人にそれぞれ渡して にこやかに微笑んで去っていく。。。

残された二人。


「ね、リチャードはどうする気?」

「僕? …ファリアがやるならやるよ。」」

「じゃ、私がしないならしないの?」

「うん。」

言い切った彼。

少年はほのかに恋心を抱いている。
少しでも同じ時間が過ごせるならと考えていた。




少女は少し考える。

「リチャードが来てくれるなら…したいな。
でも 一応お父様達に相談してみる。」

「その方がいいね。」

くすっと彼は微笑む。。

「ね、滑ろ。」

「うん。」


リチャードは少女の手を引いて 滑り出す―








   ***


ふたりがスチュワート=レイにスカウトされて5年後…

リチャード13歳、ファリア12歳…

それぞれシングルの選手として活躍し出す。

英国内のジュニア大会に出場し始めた。


めきめきと実力を伸ばしたリチャードとファリア―


それぞれの持ち味を生かして、大会で上位に食い込んでいく。


リチャードはフェンシング、馬術…その外のスポーツもこなしているので
筋力があり、それを生かしてジャンプを得意としていた。
13歳にしてあらゆるジャンプを難なくこなしていく。
出来ないのは4回転のみ。。


ファリアはバレエを幼い頃から習い、
ピアノやフルート、ハープ…それぞれの楽器で培われたリズム感、音感
そして表現力を武器に12歳とは思えぬほどの華麗な舞い―



お互い、男子女子での活躍を目にし、刺激しあって成長していた。



そんなふたりに転機が訪れる―――






to -2-


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(2006/2/11)

*あとがき*
ついに始まったイタリア・トリノの冬季オリンピック。
今年はダーリン強化年ということもあって
フィギュアスケート選手を目指すと言う設定で書き出しました。
またこれ…パラレルね。。。
姫も付き合って、フィギュアスケートしてます。



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