Secret Garden -2-
―さらに4年後…
リチャード17歳、ファリア16歳の晩秋。
ともに高等部2年生と1年生。
高等部に上ってからファリアに告白してくる男子生徒が一気に増えた。
しかし彼女は誰にも応えず、断り続けている。
親友達には
「あんな素敵なお兄様がいたら確かにどんな男子生徒も霞んで見えちゃうわね。」と
そんな風にからかわれていた。
真実、兄以上に素晴らしい男の子はいないと感じていた少女・ファリア。
また兄・リチャードも女子生徒から告白されることもしばしばあった。
彼もまたほとんど断っていたために「シスコン」と評されていた。
リチャードの心の中には既にある少女が住んでいた。
想いを伝えたいけど伝えられない相手…
義妹・ファリア…
それでも一応、年頃の少年なので
興味もあった彼は何人かの女生徒と付き合ってみた。
妹を忘れさせてくれるかもと…
しかし…無駄なことだった。
彼が本気で好きになってくれたのではないと相手の女の子が気づき、
いつも長くは続かない…
彼自身、顔が違っても髪の色や体つきが違っても…
することは同じだと解ると興味も萎えていく。
また告白を断り続ける兄…
平穏な日々が続くと思っていた、兄…
兄妹としていつもそばにいて、見つめている。。。
いつか、義妹が他の男に恋をして、
連れて行かれるのではないかという不安を抱えたまま……
*
クリスマス休暇も過ぎ、年が明け、学校が始まった直後、
妹・ファリアが家族の揃った夕食の席で話を切り出す。
「お父様、お母様…
リチャード兄様。
私、寮に入ることにしたわ。」
「「「は!?」」」
3人はワケがわからなかった。
「何言ってる… ? ウチの学校で寮に入るって…
両親のいない貴族の子女か、外国からの留学生。
あとは専門分野を極めたい人だけなんだぞ?
無理だよ。」
兄・リチャードは自分の学校のシステムをよく理解していた。
「… もう院長先生に許可は貰ってあるの。」
「…ファリア??どうして??」
母は困惑した顔で娘に問いかける。
「私、ピアニストになりたいの。 みんな知ってくれているでしょ?
学校でレッスンに打ち込みたいの。
防音設備も整っているし。
先生方にも了解していただいているわ。
あとは… お父様とお母様の許可を貰うだけなの…」
「何だと? 何の相談もナシにか??
家にいることが不満か?? 私は… リチャードやチャールズと分け隔てなく接してきたぞ?!」
「お父様… 家にいることに不満はないの。
むしろ…私、自分の環境を厳しくしたい。
家では…みんなに甘えちゃってばかりだし…」
両親は娘が自立したい、大人になりたいのだと理解した。
「ファリア…お前、父上母上、チャールズと離れて暮らしたいのか?
勿論僕も含めて。
そりゃ、僕とは同じ学校だし、会えなくはないけど…」
「…兄様、ごめんなさい。
お父様、お母様、勝手に話を進めてごめんなさい。でも…お願い。
私、寮に行きたい。」
両親は娘の決意は確固たるものだと感じた。
「解った。好きにしなさい。
でもいつでも帰ってきていいんだぞ。」
「えぇ。ありがとう。お父様。」
父と娘の会話を母は少し悲しい笑顔で聞いている。
大人になっていく娘を嬉しく、そして淋しく感じていた。
穏やかな空気の中、兄だけは違っていた。
「父上たちが許しても、僕は許さないぞ!!」
「兄様の許可は必要ないもの。」
「ファリア!!」
「ごちそうさまでした。
じゃあ、お父様、お母様。
書類を後で持っていきますから…よろしくお願いします。」
「あぁ。解った。」
妹は席を立ち、食堂を出て行く。
父がうなずいてみせた横で 兄は一人憤慨していた。
「リチャード…
ファリアもそろそろ、自分の道を考える年頃だ。
お前もいつまでも王立学院にこだわってないで
飛び級に応じたらどうだ?
本当なら大学に…」
「そんなことはどうでもいい!!」
「リチャード!!」
父の言葉に反抗的な態度を見せた彼は
食堂を出て行った妹を追いかけていく。
そんな様子を見て両親は呟く。
「リチャードのほうが妹離れ出来てないようだな。困ったものだ。」
「そのようね。 ファリアの方が一歩先に大人になりそうね…」
のん気に父母は笑っていた…
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(2006/1/7)
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