Secret Garden -Prologue-
運命はいつの間にか始まっていた…
その日は雪の日。
パーシヴァル伯爵ことアーサー=パーシヴァルはいつものように王室庁へと向かっていた。
降雪の為、車が流れないロンドン市内…
対向車線の乗用車がスリップしたと思ったら
こっちに向かって突っ込んできた。
「!?」
ハンドルを切って逃げたくても、前後にも車があるので不可避…
グシャッ!!
アーサーの車も相手の車もどうしようもなかった。
救急車のサイレンを聞いたのが最後に耳に残った音…
彼の脳裏には愛する妻と娘、まだ1歳になって間もない息子の姿が浮かんでいた。
*
ロンドン市警から連絡を受け、駆けつけたのは妻・セーラと父・アレクサンダー。
変わり果てた姿でふたりの前に横たわっていた。
「あなたぁ!!」
激しく泣き叫ぶ息子の妻の姿ともう呼吸もしていない我が息子に涙が溢れた…
まさか自分より息子に先立たれるとは思いもしなかった…
*
5日後―
ロンドンから離れたスコットランドのローレン城近くの教会にて葬儀が行われる。
残されたのはまだ29歳の妻・セーラ。娘のファリアは6歳。息子のアリステアはまだ1歳の幼児…
あまりにも突然の訃報に貴族の友人達はただ驚くばかり…
葬式の間、娘のファリアは不安をその幼い顔に浮かべていた。
まだ「死」を理解できない年頃…
ただ、もう父は帰ってこないと言うことだけは解っていた。
弟アリステアは祖父の腕の中で、何も知らず眠っている。
1年で一番寒い冬の葬儀は幼い少女の心に影を落とす…
未亡人となったセーラのそばにいる人物がいた。
ランスロット公爵エドワードだった。
2年前、妻を肺炎で亡くしたのでその悲しさは誰よりも解っている。
亡くなったアーサーもセーラも昔からの友人…
まさか彼・アーサーがなくなるとは想像もしていなかっただけに
セーラの悲しみはどれほどのものかと…
エドワードは幼馴染として彼女を慰めていた。
お互い、連れ合いをなくした幼馴染…
セーラを慰めているうちに、
幼い頃、自分が彼女を好きだったと思い出す。
2児の母となったけれど、彼女は今も美しいと感じていた。
幼い頃の片想い…
悲しみを分かち合ううちにいつしかエドワードとセーラは
お互い好意を抱いていることに気づく。
ふたりは何度か自分達の子を連れて、外出していた。
子供たちも仲がいいこともあって
エドワードは再婚を意識し始める。
ある日、ふたりだけで外食した時にエドワードはセーラにプロポーズ。
いつしか一緒にいる心地よさを感じていたセーラはそれに応えていた。
まだ幼い子供達に父親を与えたかったこともある。
それにエドワードも息子に母親をと考えていた。
セーラが再婚を決意したと、義父・パーシヴァル公爵に告げると
息子のアリステアを置いて行けと言われる。
後継者・アーサーが亡くなった今、アリステアが直系の男子の孫で
パーシヴァル公爵家の跡取り。
セーラは泣く泣く、置いていく事にした。
娘・ファリアだけを連れてエドワードと再婚―
2074年春、家族は2人から4人に増えた…ランスロット公爵家。
セーラの連れ子・ファリアは女子校に通っていたが
姓が変わるということもあり、義兄・リチャードの男子部女子部がある名門校へと移ることに。
リチャード=ランスロットの妹ということで親しくしてくれるものもいれば
やっかんでいるものもいた…
*
再婚から1年後、セーラは男児を出産。
チャールズと名付けられ、家族全員に愛されていた。
リチャードもファリアも弟が生まれたことに喜んでいた。
特にリチャードは腹違いとはいえ、弟が出来たことが何より嬉しかった。
幼い少年と少女は会った時から、仲が良かった。
本物の兄妹以上に…
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(2006/1/7)
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