Precious -4-
「好きだ…好きだよ…」
「あぁ…私も…」
急速に惹かれあい、求める心をお互いに感じていた。
彼は彼女を抱き上げて、2階の自分の寝室へ。。。
今まで誰も… 女を入れさせなかった。
性欲を満たすだけの女に自分の領域を侵されたくなかったから…
けれどファリアは違うと始めて感じた。
ベッドに降ろすと 恥じらい照れる乙女の姿。
「… 好きだ。
僕の女になって…」
恥ずかしくてただ頬を染めて うなずく。
「ファリア…」
耳元で熱い吐息とともに囁かれ、甘い電流が身体を走った。
「あ…あぁ…」
ゆっくりとした動きで彼の手は身につけているものを奪っていく。。
「なんて…綺麗なんだ…」
「やぁ…っ…恥ずかしい…」
生まれて初めて異性の目の前に肌を晒していることに
小さく震える乙女は恥ずかしくて目を開けられない。
「何言ってる? 君だから… もっと見たい。
知りたいよ…」
「あ…やん…」
優しく乳房に触れられ、びくりと震える。
彼も上半身の服を脱ぎ捨てていた。
薄暗い寝室に筋肉質な体躯が浮かぶ。
彼の優しい愛撫で乙女のくちびるから甘い溜息を漏れさせる。
「はぁ…ぁ…ん…っ!!」
白い肌は汗ばみ、薔薇色に染まる頬。
彼の指先が脚の間の三角地帯へと滑り込む。
熱くしっとりと濡れそぼったために下着が張り付いていた。
指を往復させるだけで、背を仰け反らせ 震える華奢な姿態。
「あん…ぁあ…はん…」
感極まって乙女の瞳から涙が溢れる。
硬くなった尖りを吸いたてられ、
秘所をなぞられただけで 軽く絶頂に達してしまう。
「あぁっ!! ああ…ッ!!」
ブルブルと身体を震わせている彼女を見つめている 熱く潤んだエメラルドの瞳。
「嬉しいよ…
僕、もう我慢できない…」
「あぁ…リチャード…」
下着を奪い取り、自分も脱ぎ捨てる。
彼女自身を指でなぞると容易く滑り込んでいく。
「…痛い?」
「いいえ…あぁ…ん」
「そう… 大丈夫そうだね。」
優しく微笑むと 指を抜き取り、自身をあてがい押し進めていく。
「はぁ…あぁああ…ん…」
「く…ぁ…!!」
何人かの女性を相手にしてきた彼が眉を歪めた。
今までに無い圧迫感と閉塞感。
十分潤んでいるはずなのに彼にとっても少々キツイ。
乙女は初めてのことで何がなんだか解らない。
けれど熱い彼自身を感じていた。
「やぁ…ああ、リ、チャー…ドぉ…!!」
くらくらする快感に彼の思考も吹っ飛ぶ。
ただ勝手に身体が動く。
恋しい乙女を気遣う余裕は無かった。
「はぁ… やぁ…あああ…!!」
「う、くぅ…はぁッ!!」
ふたりの甘い悲鳴まで溶け合う―
***
―朝
彼が目覚めるとシーツの上に流れる黒髪が目に入る。
「え…あ…」
自分の身体の下にいる乙女。
(あのまま… ふたりして失神してしまったのか…??)
自身がまだ彼女の中にいる感覚に気づく。
(なんだか…安心するな。 こうしてると…
今までの女性とは違う… この髪の手触りも肌の香りも…)
ぎゅっ…っと彼は抱きしめる。
こんなに相手に愛情を安らぎを感じたことは無かった。
そっとその名を囁く。
「ファリア…」
今まで自分にとって特定の女は必要ないとずっと思っていた。
ひょっとしたら自分の両親は…母親は、子供など要らないと捨てた…と
自分は要らない人間なのだと… 誰にも愛されないのだと感じていた。
仲間の進児、ビル、…そしてマリアンとは幼い頃から一緒で
自分の境遇も何もかもを知った上で付き合ってくれている。
昔の戦に巻き込まれ両親を失ったビル、同じ戦で戦い果てた進児の父。
その後を追うように病気で逝った母。
マリアンの母ははやり病で亡くなった。
自分だけは親の顔も愛情も知らない…
自分は一人で生きていけると言い聞かせて19年間生きてきた。
けど…昨夜出逢ったファリアとキスをして、
何故か胸が熱く高鳴った。
今までに無い、自分。。。
彼女の身の上を聞いて…ひどい親もいるものだと同情もしたが
何より自分の中に生まれた想い…
"この乙女を守りたい …ぬくもりが欲しい"
自分の心の言葉に素直に従ったから
彼女を家に連れ帰った。
ファリアと肌を合わせて初めて解った"恋の感覚"
可愛くて愛しくて…恋しくて…
生まれて初めての好きという感情。
しかも彼女も同じ思いを抱いていると解ると 天にも昇る想い…
よく物語などで描かれている心理状態が本物だと理解した。
今までそんな想いとは無縁だったと。
「ファリア、愛してる…」
胸に生まれた言葉をそっと呟く。
無意識に自分の目頭がから溢れてきているものに気づく。
雫が彼女の頬に落ちる。
「ん…?」
「あ。ごめん。 」
「…リチャード?」
「…おはよう。」
「えぇ、。おはよう。
どうしたの?」
目覚めた彼女は彼の瞳から溢れる涙をそっと拭う。
「ごめん。
ちょっと感動してた。」
「感動?」
「僕さ、初めて本気で女の人を好きになった。
こんな想い初めてで…
ファリアを愛したい。守りたいって…」
ストレートに心の内を明かした彼を見つめる。
「私もよ…
いつも巫女として 参拝者の恋を祝福してた。
恋するとどんな気持ちなんだろう…て。
みんな嬉しそうで、けど切なそうな人もいて…」
相手も初めての恋なのだと理解した。
「あ。 そうか…
僕達、似たもの同士なんだね。」
「そうみたいね…」
ふふっと彼女は彼の腕の中で微笑む。
その時に、自分と彼がどんな状況なのか気づく。
「あ。…私とあなた、今も…?」
「そ。僕は君の中。」
「やん… もう…」
力を失っていた彼自身が徐々に力を増し、熱く昂ぶってゆく。
自分の体の事も乙女のことも解って微笑む。
「…そういう君も僕を切なく刺激してるよ。」
「あ。言わないで…恥ずかしい…」
消え入りそうな声で頬を染めている。
「可愛いな…ファリア…」
いつも神殿に参拝に来る者達には"美しい"と言われていた。
可愛いといわれたのは幼い少女の頃だけ。
彼の甘く響く声で告げられると電流が走り、
びくりと身体が震える。
「あぁ…ん!!」
「ファリア…好きだよ。
もう僕のものだ…」
「はぁ…ん ああッ!! あん!!」
彼のとろけるような囁きと激しく揺さぶられる視界の中、
甘美な快楽と熱い愛情を感じている乙女―
自分の身体の下で可憐に乱れ、悦びに震える乙女を感じて
自分も歓びを感じる。
男としてこんなに嬉しさを感じたことが無かった彼は身も心も震えた。
早朝の朝陽がふたりの肌を煌めかせていた。
***
彼が気がつくともう窓の外には高く上っている太陽が見える。
(この僕が… こんなに溺れるなんてな…)
腕枕の中で安らぐファリアを見つめながら、黒髪を指で玩ぶ。
しばらくそうしていたが 自分のお腹から聞こえてきた音で空腹だということを感じた。
「そういや… 昨日の夕方から何も食べていなかったっけ…」
彼は身を起こし、ベッドから降りて服を身に着けていく。
まだ瞳を閉じて、横たわる彼女の額にキスを残して
階下のキッチンへと。
いつもより少し多めに料理を作る。
テーブルにセッティングしてkら寝室へ。
まだベッドでまどろんでいる乙女に声を掛ける。
「…ファリア? まだ寝てるかい?」
夕べは初めてだというのに激しく抱きすぎたかと反省してしまう。
そっとキスすると瞼が開いた。
「リチャード…??」
「もう昼なんだ… 食事にしようよ。」
「あ…はい。」
彼女が身を起こすと上掛けがはらりと落ちて、
白い胸が露わになる。
昨夜から今朝にかけて彼に付けられたキスマークまでも。
「やッ!! 見ないで…」
慌てて上掛けで身を覆うが、彼はくすくすと笑う。
「もうしっかり見てるよ。
照れてないで、服着て、下においで。
食事が出来てるから。」
「は…い。」
彼は笑顔を残し、寝室から出て行く。
ファリアは床に散らばった自分の服を手に取り、身に付けていく。
階下のキッチンに行くと小さなテーブルにはふたり分の食事が用意されていた。
野菜スープ、焼いた肉、パンにミルク。
特にスープからはいい香りが立っていた。
「あなたが作ったの?」
「あぁ。 かれこれ…3年ほどひとり暮らしなんでね。
基本的に自炊。 君の口に合うかどうか…心配だけど。」
「そんな… とてもいい香り。
いただきます。」
「そう?よかった。」
ふたりは差し向かいでテーブルにつき、食事を始める。
「ん…美味し♪」
「そうかい?」
少し嬉しげに微笑む彼を見て、彼女はさらに言葉を続ける。
「えぇ。
これだけ作れるなんて立派だわ。」
「ファリアは料理する?」
素朴な疑問を彼はぶつけた。
「えぇ。 神殿では毎日料理してたわ。
お菓子も作っていたし。」
「そうなんだ…」
神殿での神官や巫女の暮らしぶりは 文献などで多少は知識として知っていたが
実際に目にしたわけではない。彼女の言葉で理解した。
「夕食は私が作るわね。」
「あ。うん。
じゃ…早めに買い物に行かないとな。
まだ大祭の中日だから、夕方には店が閉まってしまう。」
「そうね。
昨日から明日まで3日間、ピールの街は大賑わいね。」
「そう。
だから食事を済ませたら 外出しよう。
君の身の回りのものも揃えたいし。」
「え…えぇ…」
突然始まった ふたり暮し。
昨日の彼の言葉が夢ではない、現実なのだと。
この家にいていいのだと、乙女は実感していた。
ほんの2日前までには想像も出来なかった状況に至ったふたりは
戸惑うことは無く、ただ微笑みあう―
to -5-
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(2006/4/2)
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